持ち主にとっては便利で安全なデジタル資産ですが、遺族には厄介な存在に映ることもあります。

情報端末はセキュリティーが厳しく、それを突破してもどこに何があるかもわかりません。

しかも故人の持ち物は、インターネットという外の世界にも散らばっていることが多いのです。

思わずさじを投げたくなりますが対処すべきモノを整理して、できる限りの処理をしていけば、普通の遺品に近い存在にしていくことも不可能ではありません。

デジタル遺品お片付けすっきりテクニック

情報端末の中身を調べる スマートフォン
タブレット
iPhone
iPad

目次

Android端末
携帯電話 折りたたみ式携帯電話
パソコン Window
Mac
周辺ツール 外付けハードディスク、USBメモリー、SDカード、DVD-Rな
お金関連の資産を処理する 金融関係 ネット銀行
ネット証券
仮想通貨
ネットサービス ポイント、電子マネ
クラウドソーシング
アフェリエイト
各種オンラインサービスを処理する マイページ SNS
ブログ、ホームページ、レンタルサーバー
クラウドツール オンラインストレージ、オフィスアプリ
エンターテインメント 電子書籍、音楽、動画、オンラインゲーム
総合アカウント 総合アカウント
通信契約や端末を処理する 通信契約の処理 スマートフォン、携帯電話、SIMカード
固定回線
端末自体の処理 リユース
廃棄

 

デジタル遺品の種類と処理

先ずは、情報端末です。

端末ごとにやり方は変わりますが、やることは同じです。

まずは端末のロックを解除して、中身が見られるようになったら、その中で必ず対応したいモノと、できれば対応したいモノを探します。

情報端末内にあるオフラインデータからは、対象物そのものが見つかるでしょう。

インターネット上のオンラインデータでは、対象物はそこにはありませんが、つながる道筋が見つかります。

インターネットブラウザーのブックマークや履歴、インストールされているSNSアプリや金融機関のアプリなどから対応すべき道筋を見据え、インターネット上にある遺品本体をたどっていくというプロセスです。

インターネット上にあるモノで、最優先に処理したいのは、お金関連の資産です。

その上で、仕事絡みのクラウドツールやSNSページも対応していきます。

電子書籍書や動画サービスサイトなども、必要に応じて適宜チェックしていきます。

もちろん、必ず対応したいモノ以外は、できる範囲で構いません。

一連の作業とともに、対応を見逃せないのが通信契約の処理です。

固定回線にしろ、移動回線にしろ、契約者が亡くなった際の対応方法は、確立されていますので、専用窓口でやり取りすることになります。

情報端末の中身を調べる

iPhoneとiPadを開く

最大の壁は、端末のロックです。

中身にアクセスできれば、どうにか進められます。

ロック解除を中心に、まずはiPhoneとiPadから見ていきましょう。

iPhoneとiPadはともにアップルの製品で、iOSという基本ソフトで動いています。

端末ロックを解除する仕組みも同じです。

最も簡単な解錠方法は、パスコードの入力です。

現行のiOS端末のロックは、6桁または4桁の英数字を使ったパスコードと、「Touch ID」という指紋認証を併行して、利用できる仕組みになっています。

持ち主なら自分の指紋で解錠できますし、持ち主以外でもパスコードを入力すれば、同じように中に入れます。

「Touch ID」は単独設定ができない仕組みで、「Touch ID」が有効になっている端末には、必ずパスコードが存在します。

このパスコードが分からない時は、手帳や端末の書類に残されたメモ、生前のやり取り、誕生日や好きだった数字などから見当をつけるのも有効です。

ただし、10回以上のチャレンジは控えましょう。

10回以上連続でミスすると、端末内のデータが消滅したり、端末単独では再チャレンジが不可能になったりします。

ロック解除の流れ

iOS端末のロックを解除する流れ

端末を復元

故人のiPhoneやiPadには、持ち主をひも付けるApple IDが登録されています。

身分証明書みたいなモノで、同じIDで他のアップル製品やサービスを使うと連係がとれる仕組みになっています。

このApple IDから扉を開きます。

Apple IDは、持ち主が普段使っているメールアドレスを、自ら登録するのが普通です。

明確にApple IDだとわかる情報が、見当たらなかったとしても、故人から最近届いたメールアドレスがいくつかあれば、そのどれかが該当している可能性があります。

アップルの公式ページで、Apple IDを調べることができます。

そこでApple IDパスワードも、新たに設定し直すこともできます。

作業完了までには、数日かかることもあります。

暗号化バックアップ

Apple IDとパスワードを入手したら、パソコンにiOS端末を接続します。

連係ソフト「iTunes」をパソコンにインストールして、そのIDでログインし、iOS端末の暗号化バックアップを実施します。

暗号化しないバックアップでは、一部のデータが引き継げません。

必ず暗号化にチェックを入れてください。

データを復元

バックアップが済んだら、それを真っ新な状態の端末に復元することで作業は完了です。

パスコードのロックが解除された状態で、故人が残したそのままの環境を得ることができます。

真っ新な端末は、故人の端末を初期化してつくることもできます。

ただし、バックアップに不備があった時のことを考えて、同型番の別の端末を用意するのが理想です。

故人のデータには、替えが無いのです。

初期化されている場合

すでに端末側が初期化されている場合は、残されているバックアップデータが、どこかにないか調べます。

故人のパソコンがあれば、その中にiTunesバックアップが残されている可能性があります。

複数のパソコンに、バックアップが見つかる場合もありますが、その場合は日付が最新のモノを最優先します。

暗号化バックアップが見つかるのが理想ですが、そのパスワードがわからない場合もあります。

また、セットで使っているパソコンが見つからない場合も、iCloudというオンライン上のユーザースペースにバックアップが残っていることもあります。

iTunesバックアップと比べると最小限のデータとなりますが、全く見つからないよりはよいでしょう。

Apple IDとパスワード、同型番の端末があれば復元できます。

iOSのバックアップ

バックアップ 保存場所 保存されるモノ
iCloudバックアップ インターネット上 機器の設定情報
連絡先やカレンダー※1
一部写真や動画※1
メッセージ(SNS、MMS、iMessage)
一部アプリのデータ
iTunesバックアップ パソコン上 機器の設定情報
連絡先やカレンダー
写真や動画
メッセージ(SNS、MMS、iMessage)
ほとんどのアプリのデータ
通話履歴、ボイスメモ
iTunes暗号化バックアップ パソコン上 全て
(LINEのトーク履歴、各アプリのパスワード、ヘルスケアデータを含む…※2)

※1 iCloudで普段から同期しているデータです。あえてバックアップしなくても、二重化できています。

※2 上記のバックアップ方法では、これらのデータは保存できません。

デジタル遺品を調べる

iOS端末の中身は、全ての窓口がアプリのアイコンです。

通話履歴は受話器のアイコン、メールならメールアプリやメッセージアプリのアイコンを、それぞれタップして中身を調べていくことになります。

使用頻度の高いモノ

一般的に使用頻度が最も高いアイコンは、最下段一列のドックに、次に、ログイン時に出てくる1枚目の画面、ホーム画面にあることが多いです。

ホーム画面を左にスライドすると、2枚目の画面や3枚目の画面に切り替わりますが、銀行のアイコンなどは、あえて目立たないように、そちらに配置するということがよくあります。

ドックとホーム画面、2枚目以降の銀行などの金融系アイコンを調べることで、故人がよく使っていたアプリと喫緊の処理が必要な、お金絡みのデジタル資産が効率的につかめるかもしれません。

データ使用料から推測

設定アイコンからストレージの管理画面に進み、アプリごとのデータ使用量をチェックします。

アプリの種類によって、データの増えやすさは変わるので、一概には比較できませんが、複数のインターネットブラウザーアプリがインストールされている場合、そのうちのどれをメインで使っていたのかを、見比べることで分かります。

Android端末を開く

Androidを採用したスマートフォンやタブレットは、複数のメーカーで幅広いバリエーションがつくられています。

ベースのソフトは共通していますが、ブランドによってデザインや標準搭載のアプリなどが変わってきます。

このため、細かな部分は機種ごとに違いがあるので、共通する大筋を見ていきましょう。

iOS系と比べると、端末のパスワード等が強固なのは共通していますが、持ち主の身分証であるGoogleアカウントが判明しても、完全バックアップの仕組みを持たないため、代替えにはならないという違いがあります。

一方で、多くの端末が外部ストレージとして、マイクロSDカードスロットを備えていて、写真や電子書籍データ、機種ごとのバックアップデータなどを、そちらに保存しているということもよくあります。

復旧の道筋が、分散しているといえるかもしれません。

ロック解除の流れ

Android端末のロックを解除する流れ

パスワード

生前の環境で中身を調べるなら、パスワード等を入力してロックを解除するのが、全ての機種や設定状況を含めて唯一の確実な道筋といえます。

英数字入力のパスワード設定が基本ですが、指を走らせるパターンで解錠するタイプが選べることが多く、指紋認証や虹彩認証などの生体認証を導入している機種もあります。

生体認証は導入されている場合でも、パスワードやパターンロックを併用する構造になっています。

従って、パスワードやパターンを探ることが肝心です。

救済措置

紙の手帳や端末の箱と一緒に保管されている、書類などからヒントが得られるかもしれません。

またパターンは、画面に指紋や薄い傷が残っていたりすることもありますので、表面を斜めから覗いたりしてみましょう。

連続で入力ミスした際の措置には、iOS系のような共通ルールはありませんが、一定回数後に特殊なロックがかかるモノも珍しくはありません。

ただし、数回の連続ミスで突然操作不能になることはなく、途中で「◯分経ってからお試しください」と間を置くように注意表示が出たり、代替えとしてあらかじめ設定していた「ひみつの質問」やGoogleアカウントの入力を求められたりする機種もあります。

後者のタイプなら、パスワード等が分からなくても、周辺情報から突破できる可能性があります。

そうした救済措置が表示されることで、パスワード等の見当がつかなくても、最初の注意表示が出るまでは、あえてチャレンジしてみるというのも有効です。

マイクロSDカード

パスワード入力等で正面突破が難しい場合は、周辺からできる限り多くの断片を集める作戦に切り替えます。

断片の中でも有力なのが、マイクロSDカードです。

写真や動画、電子書籍など、データが積み重なって大容量になりやすいコンテンツは、最初からマイクロSDカードに保存する設定になっている端末も多いのです。

マイクロSDカードは内部ストレージと比べて、暗号化されないことが多いので、パソコンなどに差し替えれば、簡単にバックアップが取れるでしょう。

家族の思い出の写真や動画などは、この方法で確保できる見込みがあります。

またマイクロSDカードに、アプリ単位のバックアップデータが、保存されていることもあります。

単独でみると正体不明のファイルですが、該当アプリをインストールした環境の元でなら本領を発揮します。

バックアップ後、全てのファイルを調べていくことで、そうした脈を手繰り寄せることもできます。

Googleアカウント

Android端末の基本的な設定は、Googleアカウントにひも付けられた、インターネット上のスペースに自動でバックアップされます。

また、メールアプリGmailや地図アプリGoogleマップ、スケジュール機能GoogleカレンダーといったGoogleが提供する各種アプリ、さらにはアカウントと連動設定を施した他社のアプリも繋がってて、どの端末でも同じGoogleアカウントでログインすることで、それらのデータにアクセスできます。

逆に言えば、Googleアカウントとひも付けされていないアプリや設定以外は、パスワード等がわからなくても、復旧できる見込みがあるわけです。

Gmailアドレス

このGoogleアカウントは、Gmailのメールアドレスが使われます。

故人が使っていた「xxxxx@gmail.com」というメールアドレスが、イコールGoogleアカウントなのです。

そのためGoogleアカウントは、生前に故人とやり取りしたメールを、見返したときに見つかることが多いです。

家族でなくても、職場の同僚や友人のうちに故人のGmailアドレス=Googleアカウントを知っている人がいるかもしれません。

葬儀の前後に、縁のある人に情報をもらう意味は、こうしたところにも関係しています。

救済措置

Googleアカウントがあっても、パスワードがなければログインできません。

Googleアカウントのパスワードが分からない場合は、Googleアカウントのログイン画面にアクセスして、パスワードの再設定を試みてください。

「パスワードをお忘れの場合」メニューを進んでいくと、さまざまな救済措置が選べるようになっています。

多くは、持ち主にしか対応できないモノになりますが、別のメールアドレスに再設定用のメールを送る手段も用意してくれています。

作業している人のメールアドレスに届くよう設定すれば、届いたメールを経てGoogleアカウントのパスワードを再設定できます。

なお、故人がパソコン等を残している場合、Googleアカウントでログイン状態のままになっていることもあります。

デジタル遺品を調べる

Android端末の中身を調べる際は、アプリのアイコンをつぶさにチェックしていくことになります。

下段に全ページで表示されるアイコンが並び、上に各ページのアイコンが置かれる構造はiOS系とおよそ同じです。

よく使っていたアプリは下段であったり、ホーム画面の1ページ目に並べられていることが多いです。

また、機種によってはウィジェットといって、連絡先やカレンダー、天気予報などの情報を表示する小窓をレイアウトしているモノもあります。

そこで表示されている情報にも、持ち主の意図が入っていることが多いので、優先度を測るのに貴重なヒントとなります。

アプリ一覧ページ

網羅的に調べていくのなら、ホーム画面よりもアプリ一覧ページを参考にした方がいいです。

Androidは全てのアプリを収録した画面が別に用意されていて、ホーム画面に並ぶアイコンは、それから選抜されたショートカットでしかない構造になっています。

ショートカットをつくっていないアプリもありますので、ホーム画面のアプリを潰していくだけでは、漏れが出てしまうのです。

メインで使っているインターネットブラウザーとメール、メッセージ、SNSアプリは目立つところに置かれていることが多いですし、金融系アプリは比較的整然とまとめられている傾向があります。

持ち主の整理方法や、機種との向き合い方を読み解きながら、重要なデジタル遺品を探してみてください。

折りたたみ式携帯電話を開く

折りたたみ式携帯電話の端末ロックは、たいてい4桁のパスワードでかけられます。

指紋認証機能がついた端末であっても、予備で必ずパスワードも設定する仕組みになっています。

パスワードは工場出荷時に、通信キャリアごとの標準的な番号が設定されていることが多く、そのまま手が加えられていなければ、下の表を参考にして解錠できる見込みがあります。

持ち主が変更している場合は、携帯電話の箱と一緒に保管してある書類や、持ち主ゆかりの番号などから手探りで調べていくしかありません。

ただし、入力ミスを一定回数繰り返すと、しばらく入力制限がかけられる端末もあります。

また、Android系と同じく、マイクロSDカードスロットを備えている端末が多いので、パスワード解析と併行して、外部ストレージのバックアップ作業も進めておいた方がいいでしょう。

写真や動画、着メロなどのデータは、ここでアクセスできるかもしれません。

いろいろ手を尽くした結果、パスワードが分からないのなら、ひとまず保存が原則ですが、専門家に相談してみます。

データ復旧業界でも、折りたたみ式携帯電話の復旧ノウハウは蓄積が多く、スマートフォンと比べて解決できる公算は高いのです

その他、携帯電話のパスワードを解析できる、パソコン用の携帯電話バックアップソフトも流通しています。

デジタル機器に詳しい人なら、自ら環境を整えて機械的に解決を試みるという方法もあります。

流通してから日が経っているツールは、このように対応策のバリエーションが、広がっていくものです。

キャリア 初期パスワード
NTT ドコモ 0000
au 1234
ソフトバンク 9999

ロック解除の流れ

折りたたみ式携帯電話のロックを解除する流れ

Windowsパソコンを開く

Windowsパソコンにもロック機能があり、有効になっている端末は、基本的にはパスワードを入力しないと中には入れません。

パスワードが分からない場合の救済手段は、最近のバージョンの方が多彩です。

Windows8以降のパソコンは、端末ごとに設定する従来のWindowsパスワードの他に、複数のWindowsパソコンや関連サービスの共通鍵となるMicrosoftアカウントパスワードと、4桁の数字でつくる端末専用のPINが、設定できるようになっています。

Microsoftアカウントパスワードは、オンライン上で管理しているため、条件が揃えば別の端末から設定を変更できますし、Windowsパスワードが分からなくても、故人がよく使う4桁の数字から解錠を試みるといったこともできます。

それでもログインできない時は、メンテナンス用のセーフモードで起動して、パスワードをリセットしたり、物理的にドライブを取り出して、別のパソコンに繋いだりといった手も使えます。

ある程度のスキルが求められますが、やれることは多いです。

パスワードの種類

ログインパスワード 内容 適用バージョン
パスワード Windowsパスワード ローカルアカウントのパスワード
その端末のみで通用する
全てのWindows
Microsoftアカウントパスワード インターネットで繋がった、持ち主にひも付けされたパスワード Windows10/8.1/8
PIN 4桁で数字を使ったパスワード
その端末のみで通用する
Windows10/8.1/8

ロック解除の流れ

Windowsのロックを解除する流れ

パスワードを入力

Windows7以前のパソコンは、ローカルアカウントのパスワードのみしかありませんが、Windows8以降は、ローカルアカウントかMicrosoftアカウントのパスワードの他、設定されていればPINを入力する方法もあります。

どのバージョンであれ、連続ミスのペナルティーはありませんので、思い当たるパスワードや数字は全て試してみましょう。

他の手段もありますが、最も楽で元の状態を動かさないのは、この正攻法です。

パスワードをリセット

Microsoftアカウントとは、Windows端末やMicrosoftのオンラインサービスなどに、共通する身分証明みたいなモノで、利用者が普段使っている任意のメールアドレスを利用できます。

Apple IDを探す場合と同じく、故人が仕事やプライベートで使っていたメールアドレスのうちどれかが、使われている見込みが高いわけです。

そして、オンライン上でパスワードを再設定できるという特徴も持っています。

他の端末を使って故人のMicrosoftアカウント、もしくは連係しているSkypeや電話番号で設定変更の確認メールが受信できる状況が整っていれば、パスワードやPINを調べなくてもいいのです。

ただし、これはあくまでも本人のための機能で、遺族用ではないことは念頭においてください。

また、ログイン画面の左下に、別のアカウントが並んでいる場合は、そちらのアカウントでログインを試すのも有効な手段です。

パソコンは公私兼用で使っている人も多く、1人で複数のアカウントを用意していることは、案外珍しくありません。

別アカウントでは、インストールしているアプリや各種設定、デスクトップ画面の配置などが故人のモノと異なりますが、写真や書類などをまとめた端末共通のフォルダーにはアクセスできます。

さらに、別アカウントがAdministratorの権限を持っていたら、故人のパスワードをリセットすることもできます。

ユーザーアカウントの設定ページで、他のアカウントの情報も変更できますので、その後の作業が、かなり楽になるでしょう。

セーフティーモード

Windows端末では、パソコンがトラブルに見舞われた際のメンテナンス用モードとして、セーフモードで起動するという方法があります。

通常のログイン画面を通らずに起動できますので、パスワードが分からない場合のログイン方法として有効です。

セーフモードでAdministratorアカウントを作成し、そのアカウントで正常起動した後に、故人のアカウントのパスワードをリセットするといったことも可能です。

しかし、最近のWindows10では、セーフモードの起動条件が厳しくなっています。

Windows7以前なら電源投入時に、F8キーを連打することで簡単に進めますが、Windows8以降の端末の場合は、同梱されているリカバリーDVDを介したり、機種別のプロセスを経たりすることになります。

外部接続

多くのパソコンは内蔵するハードディスクやSSDなどを物理的に取り出して、他のパソコンに外部ストレージとして接続することができます。

自作パソコンを組み立てるような知識が必要になりますが、正しく作業すればバックアップ後に、元通りに戻すことも可能です。

しかしメーカーの保証は、受けられなくなることがほとんどです。

ただし、暗号化が施されているドライブは、外部接続しても中身が取り出せません。

ビジネス向けのパソコンなどは、そうした設定が施されていることが、しばしばありますので、仕事用の端末は、作業が難航するかもしれません。

デジタル遺品を調べる

Windowsパソコンは、大型のノートパソコンから持ち歩けるモバイルノート、さらにはタブレット型や、大きなボックスと液晶ディスプレイがセットになったデスクトップ型まで、さまざまな形状があります。

また、製造しているメーカーも多岐にわたりますが、操作体系は形状やメーカーに依存しません。

Windows7、Windows10などといった、基本ソフトのバージョンの違いのみが、唯一の差を生みます。

Windows10搭載パソコンなら、どんな形で、どのメーカーがつくろうが、使い方は同じです。

しかし、Windows7搭載モデルと比べると、若干異なる部分があります。

ログインすると、普通はファイルやフォルダーが自由に置かれたデスクトップ画面が表示されます。

画面の四隅のうち一辺にタスクバーがあり、起動中や登録されたアプリがそこに並ぶ、というのが全バージョンで共通の構造です。

Windows8以降は、デスクトップ画面の他に四角いタイルが並べられるスタート画面もあり、デスクトップ画面と併用している人も多いのです。

フォルダーには階層構造がつくれるので、デスクトップにあるフォルダーを開くと、その中にいくつかのフォルダーがあり、それらを開くとさらに下の階層のフォルダーが現れ、また下に…ということもありますし、あまり階層は設けず、写真なら写真フォルダー、仕事なら仕事フォルダーというくらいで、細かな分別をしない人もいます。

とても自由度が高いつくりになっていて、持ち主の性格やパソコンとの向き合い方が、ダイレクトに反映されるのです。

ポイントを絞る

スマートフォンやタブレットのストレージは、大容量タイプでも数百GBが多いのですが、パソコンは数TB規模になるモノがザラにありますので、故人のパソコンを網羅的に調べるのは、大変な労力と時間を要するのです。

それ故に、ざっと整理方法や使用状況を見ながら、そのパソコン固有のルールの下で、フォルダーやアプリの重要度を測っていくのが効率的でしょう。

タスクバーに登録された、インターネットブラウザーのブックマークやアクセス履歴、メールソフトやコミュニケーションツールの痕跡、家族写真や仕事の重要データが保存されていそうな、フォルダーなどにスポットを当てて、その中を重点的に調べていきます。

その作業の中で、新たな重要ポイントが見つかれば、そちらも深耕し、脈がなさそうなら適当なところで切り上げるくらいのバランスが、丁度いいでしょう。

Macを開く

Macは、パスワードを忘れた時の救済措置が確立されていて、Apple IDが分かればどうにかなる見込みが高いです。

少し高いスキルが必要な方法も含めて、解説していきます。

Mac OS X10.7以降は、端末固有のログインパスワード、もしくはユーザー登録しているiCloudアカウントでロックが解除できます。

持ち主が、ログインパスワードを設定している場合でも、Apple IDでのログインも選択できますので、どちらかが分かれば何とかなりそうです。

Apple IDは、持ち主が普段使っていた、メールアドレスから見当がつけられるところもポイントです。

また、環境に合わせていくつかの救済機能も用意しています。

ログイン画面で1分ほど待機してみましょう。

パスワードが分からない場合は、復元用OSを…というメッセージが浮かんでくる場合は、ストレージ暗号化機能「FileVault」が有効になっています。

画面に従って再起動すると、専用のメンテナンスモードになりますので、ここでApple IDや復旧キーを使ったパスワードリセットが可能です。

しばらく待って、何も表示されない場合は、「FileVault」は無効になっていますので⌘(コマンド)キーとRキーを同時に押しながら、あるいはOptionキーを押しながら再起動して、通常のメンテナンス用画面を表示させます。

この機能を使って、パスワードをリセットします。

最新のOSではApple IDが必須となりますが、少し前のモノなら、特にパスワード認証もなく、再設定できたりもします。

いずれの方法を取る場合も、メンテナンス画面という普通は開かない領域での作業となるため、パソコンに不慣れな場合は、信頼できる詳しい親戚や知人に、この部分だけサポートをお願いすることも検討してみてください。

これらの手段を講じても、ログインできない場合は、Appleサポートやデータ復旧の専門会社に相談するのがよいでしょう。

大切なデータが残っている場合、処分せずに保管することも大切です。

ロック解除の流れ

Macのロックを解除する流れ

救済機能

ログイン画面に、ログインパスワードもしくはApple IDと、そのパスワードの入力欄が中央にあります。

指定のパスワードが分からない場合は、入力欄の左端にある「?」マークをクリックしてください。

すると、あらかじめ持ち主が登録したログインパスワードのヒントが、表示されることがあります。

そのヒントで思い当たる節があれば、改めて他の遺品や過去のやり方を、探ってみるのがよいでしょう。

またヒントの下には、パスワードをリセットする選択肢がリストアップされます。

各種メンテナンスモードへの入口にもなっていますので、メニューに従って次善策に進みましょう。

なお、「FileVault」が有効になっている場合は、この画面上で「FileVault」設定時に付与される「復旧キー」を入力することもできます。

FileVaultが有効

FileVaultが有効な場合は、ログイン画面で何もせずに待機していると、復元用OSで再起動できるようになります。

入力欄の?マークをクリックし、リセットメニューをクリックしても同じように復元用OSが起動します。

復元用OS画面で「パスワードを忘れた」を選ぶと、Apple IDとパスワードを求める画面か、復旧キーの入力画面が表示されます。

どちらになるかは、持ち主の設定次第です。

Apple IDとパスワードなら、周辺の遺品からたどれる可能性があります。

しかし、復旧キーを求められ、見当がつかない場合は、復旧は困難を極めます。

ストレージも暗号化されているので、物理的に取り出して他のパソコンで解析するという方法も使えません。

FileVaultが無効

FileVaultが無効な場合は、「OS Xユーティリティ」という窓口を経て、パスワードをリセットします。

前述の通り⌘キーとRキーの同時押しで起動しますので、ユーティリティメニューのターミナルを選択します。

立ち上がったウインドウに「resetpassword」と打ち込みます。

ここから分岐します。

OSが2016年9月リリースの「macOS Sierra(10.12)」以降でしたら、インターネットに繋いでApple IDのパスワードを入力することで端末のパスワードを再設定できます。

それ以前のOS X(10.11以前)が使われている場合は、また分岐します。

持ち主が、端末固有のログインパスワードを設定している場合、Apple IDの認証を経ずに、そのまま再設定が可能です。

Apple IDでログインする設定になっている場合、直接リセットできませんので、まずは「System Administrator」という管理者用アカウントのパスワードをリセットし、再起動後に、そのアカウントでログインします。

そして、設定画面で「その他のユーザー」たる故人のアカウントを指定して、パスワードをリセットします。

新しいOSならApple IDのパスワードがあれば、すんなりリセットできて、古めのOSならApple IDは、不要ながら少し面倒な作業が、必要になります。

デジタル遺品を調べる

Macもデスクトップ型からノート型まで、構造は変わりません。

OSのバージョンの違いもありますが、OS X〜macOSの場合、機能の増減や高度な設定に差があっても、かなり近い操作感です。

画面の隅によく使うアプリなどが、まとまったドックがあり、デスクトップにはファイルやフォルダ、その他のアプリなどが配置できます。

インターネットブラウザーの履歴やメールなどは、ドックに登録されているアプリをたどるのが効率的でしょう。

ただし、全ファイルを俯瞰的にチェックしたい場合は、デスクトップ上のフォルダを掘り下げていくのではなく、ドックにあるFinderからマイファイルを開いて、俯瞰する方が、素早く見渡せていいかもしれません。

ここに表示されない、プライバシー設定のファイルもあります。

Windowsに比べると、網羅的にファイルが調べられる傾向が少し強いのですが、ストレージ容量の大きさは同様に膨大で、スマートフォンやタブレットと比べると、やはり大変な作業になりそうです。

何をどこまで調べるのか?

目的を明確にして、作業に当たる心構えが、重要と言えるでしょう。

周辺ストレージを開く

情報端末を調べていると、周辺からストレージが見つかることがよくあります。

中身に触れるには、何らかの形で情報端末を介する必要がありますが、モノとしては別個の存在です。

外付ハードディスク

数百GB〜数TBタイプが、主流の外部機器です。

パソコンとの組み合わせが多いですが、テレビやブルーレイレコーダー、スマートフォンと連係する使い方も珍しくありません。

大容量ゆえに、端末を丸ごとバックアップしていることもあります。

端末が開けなくても、外付けハードディスクによって、救われたという事例もあります。

独自にセキュリティー機能を有していて、ロックがかかっているタイプも売られています。

NAS

家庭内ネットワークなどを介して、接続する外付けハードディスクで、Wi-Fiによって複数台のスマートフォンやパソコンと繋がっているタイプもあります。

各端末には、固有のデータをあまり置かず、NASをメインの貯蔵庫にしている場合は、こちらが調査の中心になることもあります。

一般的なハードディスクよりも柔軟な使い方ができますが、それゆえにしっかりと中身を把握するには、やや上のスキルが必要になります。

USBメモリ

数GB〜数百GBの比較的低容量なストレージで、ひと昔前のフロッピーディスクと似たような存在です。

主にパソコンと接続しますが、スマートフォンやタブレットと繋がるタイプも存在します。

永久保存を意識して使われることは少なく、一時的なデータが散発的に得られることがあります。

だからこそ、思いがけないヒントに巡りあうこともあります。

こちらも独自にロック機能を備えたタイプもあり、ビジネスシーンではよく見かけます。

SDカード、マイクロSDカードなど

Dカードは、デジカメやビデオカメラの外部ストレージ、かつメインストレージとして使われます。

また、パソコンの外部ストレージとしても普及しています。

その小型版であるマイクロSDカードは、Android系のスマートフォンやタブレット、折りたたみ式携帯電話に挿してあることが多いのです。

単独で発見した場合も、写真のみならデジカメ用、写真やバックアップデータが混在ならは、Android系端末などと、中身から使われ方に見当をつけることできます。

主流の容量が近いUSBメモリと比べると、一時性は少なめで、そこにしか入っていないデータが見つかることも珍しくありません。

同じようなメモリーカードのカテゴリーには、以下のように多くのバリエーションが存在するので、それぞれの規格を確認しましょう。

CD-R、DVD-R、BD-Rなど

これらのディスクは、光学メディアと総称されます。

光学メディアには、独立して保存しておきたいデータが、残されていることがあります。

CD-Rの容量は1GB未満で、カセットテープやMDのように、音楽データを書き込むのに使われていることが多いです。

データを書き込む使い方は、数GBの容量を持つDVD系や数十から、百GB程度あるブルーレイDisc系の方がよく見られます。

DVDとBD系は、VHSテープのように動画を保存する使い方と、パソコンデータを残しておく使い方がよく見られます。

光学メディアは、ハードディスクより長持ちしやすいので、永久保存を意識した残し方をしている場合もあります。

従って、貴重なデータが見つかる可能性がありますが、読み込むためには、対応する光学ドライブが必要になります。

加えて、動画再生の場合は、対応するプレイヤーアプリも必要です。

お金関連の資産を処理する

端末の外側にあるオンラインの遺品のうち、直接的な金融資産は遺産の全容を把握する上でも重要なモノになります。

預金や金融商品、報酬やポイントなどの資産と収入系の対応を見ていきましょう。

ネット銀行

ネット銀行の預金口座は、オンライン金融資産の代表格といえるモノですが、契約者が亡くなったときの対応は、リアル店舗の銀行と何も変わりません。

口座開設時に、身元をしっかり確認しているので、遺族対応もスムーズです。

少なくとも国内のネット銀行なら、遺族からの相談で契約者が亡くなったことを知り、遺産分割協議前に、遺産の分散を防ぐべく、口座を一時凍結したり、遺産分割協議後に必要な書類を確認した上で凍結を解くなど、一般的な銀行業務の遂行が期待できます。

問題は、遺族が口座に気付けるかどうかです。

口座番号まで分からなくても、故人がどの銀行に口座を開いているか?

見当がつけさえすれば、後は、銀行側がサポートしてくれます。

閲覧履歴

情報端末に残りやすいのは、アクセス履歴と取引の報告です。

インターネットブラウザーの閲覧履歴、それにブックマークの中にネット口座に関するモノがあればメモしてください。

スマートフォンやタブレットの場合は、ネット口座のアプリをインストールしていることもあります。

後は、メールアプリを起動して、過去に受信したメールから「銀行」「bank」などで検索をかけるのも有効です。

書類や郵送物

デジタル以外で、痕跡が残っていることも多々あります。

口座開設時には、紙の契約書類やカードなどが送られてくることが多いですし、1年ごとに取引履歴を郵送するネット銀行もあります。

重要書類をまとめた引き出しや、たまった郵送物などがあれば、慎重に目を通しましょう。

また、最近の銀行は「ワンタイムパスワード」といって、取引の都度パスワードを生成するセキュリティーシステムを導入しているところも多いです。

このワンタイムパスワードを、あえてトークンで提供している銀行もあり、それがきっかけで周囲に存在が知れるということもあるようです。

ネット証券

株式や国債

ネットの証券会社を通して、株式や国債などの金融資産を持っている人も多いので、ネット銀行の口座とともに、しっかりと探す必要があります。

とくに公開株式は、2009年1月から電子化が義務付けられていて、名義は全て証券保管振替機構で管理されるなど、デジタルとの親和性が高いです。

必要性や利便性から金融商品だけはネットで扱うということも、ごく当たり前の選択肢と言えます。

デリバティブ

FXや先物取引、オプション取引、スワップ取引などがあり、同じく証券会社が扱っています。

金融派生商品は、少額の証拠金だけで高額を運用できるので、相場が都合よく動いた場合には、大きな利益が得られますが、予想を大きく外すと証拠金だけでは、まかないきれない負債を被ることもあります。

その場合は追加の証拠金が求められますが、このタイミングで持ち主に連絡が取れない場合は、どうなるのでしょうか?

証券会社は、規約によって所持している他の金融商品で相殺したり、登録してある住所や電話番号に連絡をしたりします。

故人が残していったデリバティブに、気づかないで放置した場合、遺族が知るのは、このタイミングということになります。

預かり知らないところから、支払い義務を求められるわけですから、デジタル遺品がらみで、一二を争う悲劇と言えるかもしれません。

そうは言っても、このような事例はごくレアケースです。

国内全体で見れば、1年に1度発生しているかどうかといったところです。

そうした実状を知らず、このレアケースを過度に取り上げて、デジタル遺品の不安を煽る業者もいますので、冷静な判断が必要です。

それでも不安が残るのは確かです。

最善を尽くしてデジタル遺品を調べ、不安の種を少しでも小さくしておくことが、肝要になるでしょう。

調査方法は、ネット銀行の預金口座と同じです。

オンラインとオフライン、デジタル以外の遺品も含めて、よく調べることが一番確実です。

タンス株

遺品の中から、公開株の電子化の前から紙の状態で保管していたタンス株が見つかった場合、紙のままでは相続はできません。

この場合は、株主名簿管理人になっている信託銀行などに、相談するのが一般的です。

管理人が分からない場合は、証券保管振替機構で、登録済み加入者の開示請求をして情報を得ることもできます。

まずは、相続の専門家に相談してください。

仮想通貨

近年注目を集めているデジタル資産として、仮想通貨の存在も無視できません。

仮想通貨とは中央銀行を持たずに、インターネットを介して世界中で広まっている電子マネーのことを言います。

2010年代前半から急伸していて、トップシェアのビットコインの資産総額は、一時期5兆円にも達しました。

イーサリアムやリップルなど、他の仮想通貨も市場規模が拡大しており、ひとつひとつは不安定ながらも、今後ますます重要な資産になっていくと思われます。

2017年7月時点の日本国内では、準通貨といった位置付けで、円のような手厚い保護はまだありませんが、仮想通貨で決済できる店舗はリアルでも拡大中です。

これらの仮想通貨は多くの場合、仮想通貨取引所を介してやり取りされます。

仮想通貨取引所の口座を拠点にして、仮想通貨を運用するのが一般的です。

つまり、仮想通貨取引所のアプリがインストールされていたり、公式サイトに頻繁にアクセスした記録が残っている場合は、情報端末の持ち主が仮想通貨を所持している可能性が、少なからずあると言えます。

相続環境の整備

ネット銀行やネット証券会社と違って、仮想通貨の相続環境は、まだほとんど整備されていません。

国内で展開している、主要な仮想通貨取引所の会員規約を隅々まで読んでも、契約者死亡時の措置についての言及は皆無です。

仮想通貨取引所についても、2016年末に死後対応について横断的な取材を実施しましたが、まだ遺族からの問い合わせ自体が、届いていないと言うのが実情のようです。

ニーズがないから、整備が行き届いていないわけです。

相談があった場合、ある取引所は銀行法を参考に、公正な手続きをしたいと考えているそうです。

良識のある企業なら、できる限り対応していきそうですが、法的な保証はまだありません。

なお、普通に仮想通貨を所持しているだけなら、遺族が気づかなくても特に被害が発生する危険はありません。

しかし仮想通貨にも先物のような、金融派生商品が存在します。

こちらは負債化の危機が、ゼロではありません。

仮想通貨取引所は、紙の取引履歴やトークンを用意しないところが多く、所持の足取りはデジタル環境から探さなくてはいけないのが普通です。

ネット銀行やネット証券会社よりも、ヒントが少ないことも要注意事項として、覚えておきましょう。

ポイントと電子マネー

特定のサイトやサービス内で使えるポイントや電子マネーも、多く場合は会員死亡時のガイドラインが定まっていません。

たいていは、何十万円と貯める使い方はしないため、少額ゆえに相続対象とみなされにくいということが、定まっていない理由のひとつと言えるでしょう。

加えて、ポイントを管理する会員ページをつくったり、プリペイドの電子マネーを購入したりする際に、厳密な身分証明が求められない点も理由としてあります。

会員の身元を確かめる情報が不足していると、その会員の生死や会員と問い合わせた人との関係性など、あらゆる裏付けが困難になります。

どうにか紹介できたとしても、そのコストに見合った対価が、お互いに得られるかという問題もあります。

これは、多くのオンライン資産にも通じるところです。

そうした現実的なバランスから、ほとんどの運営元は対応の道筋を用意していません。

しかし一方で、遺族からの相談があれば、真摯に対応すると答える運営元も少なからずあります。

遺品捜索の中で発見して、そのまま捨て置くのはもったいないと感じる場合や、他の遺品を対応する過程でついでに尋ねられる場合などは、窓口に相談してみるのも手でしょう。

クラウドソーシングやアフェリエイト

インターネットを介して、収益を得る仕組みも普及しています。

在宅で隙間時間を使い、数多の企業や個人から依頼される文章執筆や翻訳、プログラミング、デザイン制作などの仕事をこなすクラウドソーシングの仕組みは、日本国内でも2000年代後半から浸透していて、現在は100万人を超えるワーカーが登録しているサービスもあります。

会社員として働きながら、空いた時間にこなせる副業として、取り組んでいる人も少なくありません。

自作の写真やイラストなどを販売して、報酬を得るタイプのサービスは、趣味として参加している人も多いです。

未払い報酬

故人が家族に告げずに何らかのクラウドソーシングに参加していた場合、未払い報酬はどうなるのでしょうか?

遺族からの問い合わせは業界大手のランサーズで、年に1度あるかないかというくらいで、他の主要仲介サービスには、まだほとんど相談が届いていないそうです。

ニーズがほとんどない状態ゆえ、業界全体の遺族対応はまだ整備途上となっています。

いざという時は、遺族が能動的に調査していくしかありません。

報酬が直接指定口座に振り込まれるタイプのサービスであれば、その口座が凍結されていない限り、自動で支払われますし、口座の取引履歴を調べることで、遺族が契約を発見することもできるでしょう。

しかし、報酬を独自ポイントとして支払い、一定額貯まったら個々人が換金して、指定口座に振り込み手続きをする仕組みのサービスも少なからずあります。

この場合は、誰にも気づかれずに、塩漬けになってしまうことも少なくありません。

防ぐにはメールやインターネットの履歴などで取引を直接つかむのが、ほぼ唯一の策と言えそうです。

承継

オンラインの報酬系としては、アフェリエイトがあります。

自身のホームページやブログなどに広告を貼り付けて、宣伝料や商品紹介料を受け取る仕組みです。

2000年代初期からある業界ですが、こちらの報酬契約には、遺族に引き継げない規約になっている場合が大半です。

生前に口座に振り込まれた報酬は、普通に遺産の一部とみなせますが、会員の死とともに契約終了の場合、死後の報酬は相談しても受け取れません。

しかし死後に振り込まれた報酬が、面倒の種になることもありますので、存在に気付いて契約解除を申し出るなど、早めの対応が必要です。

中には、家族でアカウントを共有したままにできるタイプもありますし、相談することが一番です。

こちらは口座の取引履歴などから察知できるケースが多いのです。

まとめ

資産規模の目安 放置のデメリット 発見の手がかり
ネット銀行 数万円〜数千万円超 資産不認識 アクセス履歴
取引メール履歴
関連アプリ
カードや通帳
ネット証券 数十万円〜数千万円超 資産不認識
負債発生リスク(金融派生商品)
アクセス履歴
取引メール履歴
関連アプリ
カードや通帳
仮想通貨 数万円〜数百万円超 資産不認識
負債発生リスク(金融派生商品)
アクセス履歴
取引メール履歴
関連アプリ
メモ書き、過去の会話
ポイント・電子マネー 数百円〜数万円 資産不認識 アクセス履歴
取引メール履歴
関連アプリ
カード
クラウドソーシング 数百円〜数十万円超/月 資産不認識 アクセス履歴
取引メール履歴
関連アプリ
通帳の履歴
アフェリエイト 数百円〜数十万円超/月 資産不認識
契約違反リスク(死後の報酬受取など)
アクセス履歴
取引メール履歴
関連アプリ
通帳の履歴

いずれの資産についても、情報端末内の痕跡に触れられなくても、紙の手帳に残したメモ書き、家族や同僚、友人と交わした会話などから、手がかりが得られることもあります。

各種オンラインサービスを処理する

遺族対応の3タイプ

オンラインサービス側の遺族対応のスタンスは、大きく分けると、遺族向きのオフィシャルな機能がしっかり用意されている機能充実型と、遺族向け機能はないものの問い合わせ窓口では、相談に応じてくれる個別対応型、日本語対応の場がなく、現実的に遺族側が独自に動くしかない自力解決型の3つがあります。

機能充実型が最も手軽ですが、採用しているサービスはまだ少ないので、個別対応型と自力解決型の二択を見極める場面が多くなると思います。

利用規約や「よくあるお問い合わせ」「Q&A」などのページで、「相続」「承継」「死」「亡」などの文字から、遺族対応ルールを探し、そのサービスがどういうタイプなのかを見極めていくことになるでしょう。

ページ検索はCtrl+Fや⌘+F

パソコンが使えるなら、利用規約や会員規約、Q&Aの調査はパソコンのインターネットブラウザを利用するのが効率的です。

該当ページを開いて、WindowsならCtrl+F、Macなら⌘+Fと打てば、ページ内の文字を検索する機能が表示されます。

ここに「相続」「承継」「死」「亡」などと入力すると、会員の没後の措置に言及している箇所が効率的に調べられます。

機能充実型

FacebookとInstagramは、追悼アカウントという故人のページを保護する機能を備えています。

第三者に乗っ取られたり、荒らし的な書き込みを残されたりするのを防ぐ仕組みです。

追悼アカウント化したページは、生前に設定した特別なユーザーしかログインできなくなり、記事や投稿も制限がかかります。

サポートページ内に、亡くなった人のアカウントを報告する窓口があり、アカウントを持っている人なら誰でも申請可能です。

適用されると、アカウント名の上に「追悼」の文字が表示されます。

生きている人のページを誤って、追悼アカウント化したとしても、本人が申請すれば元通りにしてくれます。

審査は、運営の判断を待ちますが、日本語ページを含め適用事例は多いです。

故人のページを残す

通常アカウントのまま故人のページを残して、管理している遺族の事例も少なくありません。

この使い方は利用規約、上微妙ではありますが追悼アカウントでは、画像削除ができないからという理由を示唆しているページもあり、あえてそうしている場合もあるようです。

遺族向け機能が用意されていたとしても、使うか使わないかを決めるのは遺族ということでしょう。

追悼アカウントとは別に、遺族からの申請でページを抹消する窓口もありますが、こちらは不可逆処理のため、やり取りの厳密さと書類量が増し難易度には雲泥の差ができます。

個別対応型

国内に拠点がある一定規模のSNS( LINE、Twitter、mixiなど)なら、電話やメール、チャットなど、何らかの方法で、遺族からの相続に対応してくれるところが多くあります。

海外に本拠地があるサービスも、国内に拠点があるような大規模なサービスなら実状は変わりません。

審査の手間や時間

オンラインサービスの多くは、氏名やメールアドレスなどの登録だけで、気軽にアカウントが取得できます。

厳密な身分証明が必要ありません。

そのため、会員が亡くなった時の相談があった時、運営側は情報の審査にとても苦労します。

亡くなった人と会員の同一性、問い合わせしてきた人と会員の関係性、亡くなったという情報の信憑性。

これら全てを検証しなければいけません。

それゆえに、さまざまな書類が求められたり、次のステップに進むのに1週間以上かかったりします。

LINEのように、本人と取り交わした契約が誰にも引き継げない一身専属性の規約を採用しているところは、遺族の希望であっても、原則としてデータの引き渡しやアカウントの引き継ぎに応じないのが普通です。

以上のような難しさから、故人のアカウントで手早くログインし、バックアップを取ったり公開を停止したりする人が多いのも実情です。

グレーゾーンな対応とは言えますが、こうした遺族の行為を本気で咎めた事例はまだ知りません。

またグループで、ひとつのアカウントを運用することを認めているTwitterのようなSNSもありますので、規約やQ&Aを調べてみるのがよいでしょう。

自力解決型

国内に拠点が無いようなSNSは、日本語表記のページがあっても個別対応は外国語のみのサポートになることも多く、日本語しか操れない場合は、選択肢を探すところから自力で始めなければならないことが普通です。

さらに、Q&Aや利用規約ページも設けていない場合が少なからずあります。

故人のIDやパスワードを持っているか否かに関わらず、取れるコストと放置するリスクを天秤にかけて、冷静に対応を決定するしかありません。

ブログやホームページ

無料ブログや無料ホームページサービスは、メールやゲーム、動画視聴など、さまざまなサービスを総合的に提供しているプロバイダーが運営している場合が多く、国内サービスであれば比較的遺族サポートが充実しています。

無料のブログやホームページ

基本は個別対応型と言えますが、遺族対応が体系化していて、機能充実型に近い環境を用意している場合もあります。

全体的に環境がよくなってはいるものの、身分証明の手続きが煩雑だったりと、まだまだ洗練されていないところも多く、金融系ほどには委ねられないと考えておいた方がよいでしょう。

遺族対応の充実化の流れで、遺族がアカウントやサイトの中身を引き継げる承継に、対応するサービスが増えているのも確かです。

しかし、かつて主流だった一身専属性のスタンスを取り続けるところもありますので、個別の確認が必要です。

しかし、正規の方法を取らず、故人のアカウントでログインして、サイトを抹消したりバックアップを取ったりする遺族も見受けられます。

喫緊ということもあり、咎める事例は聞いたことがありませんが、二代目管理人として長期にわたって継続管理する場合は、きちんと運営元を通した方がよいと思います。

有料サービス

レンタルサーバーなどの有料サービスを利用してサイトを運営している場合はお金が絡み、遺族による契約解除の申請手続きなどは、きちんと対応してくれるのが普通です。

個別対応型の典型と言えるでしょう。

それでも海外サービスは日本語対応が不十分なケースが多く、正規の窓口を探すのも困難な場合がありますので、サイトごとの状況確認は欠かせません。

なお、引き落とし先の口座やクレジットカードが、凍結されれば支払いが続くことはありませんが、他の定額サービスと同じく、正式に契約解除するまでの未払い金の請求が届く可能性はあります。

継続

サイトを継続したい場合、承継可能ならば名義変更することになります。

承継できない場合は、データをバックアップして新規に契約したり、別のサービスに引っ越すことになります。

いずれにしろ、何もせずにそのまま継続することは困難です。

インターネットには、10年以上も管理者不在で漂っている故人のサイトが多数存在しますが、それは全て無料タイプのサービスです。

有料サービスが、長年放置され続けるということは、構造的にありえません。

訃報

故人のSNSやブログ、ホームページには、社会に残されたその人の窓口という側面があります。

インターネットだけで、やり取りしている知人や友人にとっては、唯一の繋がりの場でもあります。

そこにアクセスできたのなら、簡単で構いません。

故人の訃報をアップすることをお勧めします。

故人のアカウントにログインできるのであれば、普通の投稿記事としてアップし、ログインできない場合でもコメント欄に書き込むことができます。

いずれ抹消する予定であっても、葬儀の期間だけアップしておくといったプロセスを経れば、インターネットの向こう側に感謝する人がいると思います。

親しかった人の安否が分からないままだと、心配が募ります。

遺族からの訃報は、たとえショックであっても、その人たちの気持ちを整理する救いにもなるのです。

故人のアカウントでログインすることは、厳密にはルール違反であることが多いのですが、このシチュエーションでは、大目に見られているようです。

クラウドツール

インターネット上にある自分専用のデータ保存領域を、提供するサービスがオンラインストレージです。

インターネットに繋がれば、どの端末からもアクセスでき、スマートフォンでもパソコンでも常に同じファイルに触れられます。

また、最近はオンラインで使える文書作成や表計算、ノートなどのオフィスアプリもあり、それらの作成ファイルもインターネット上に置かれる仕組みになっていることが多いです。

持ち主が亡くなった時、これらのファイルはそのままクラウド上に残っていますが、公開状態になっていない場合が大半なので、遺族にとっては気付きにくい遺品であると言えます。

加えて、このジャンルは特に自力解決型のスタンスを取るサービスが多く、遺族が打てる手もかなり少ないのが現状です。

クラウドノートサービス大手のエバーノートの方針が象徴的です。

持ち主がアカウントやパスワードを誰かと共有することを認めながらも、遺族からのアカウントやパスワードの開示は、故人の遺書などで明確な意思表示が残っていない限りは、応じないと明記しています。

本人によるアカウントの共有は自由ながら、本人の意思が反映されていない遺族からのアクションは一切受け付けないというわけです。

唯一、有料プランの解約解除に応じるくらいです。

他のサービスでも、遺族向けの窓口は米国本社にしか置かず、引継ぐ際は、英文の公的書類を郵送しない限りは動かないといったスタンスがよく見られます。

クラウドツールには、進行中の仕事のデータなどが残されていることもよくあり、デジタル遺品の中で、最重要な項目に挙げられる場合もあります。

仕事の同僚の方の話も参考に、存在の有無の確認は早めに行うのがよいでしょう。

電子書籍、音楽、動画、オンラインゲーム

定額制

電子書籍の読み放題やメルマガの有料契約、音楽や動画の配信サービス、オンラインゲームの使用権など、デジタルコンテンツの定額有料サービスについては、これまで紹介した有料サービスの契約と同じです。

振り込み口座が停止すれば、自然に契約解除となるのが普通ですが、それまでの未払い請求が届く可能性があります。

このため、取引履歴などで存在を知った時点で契約解除手続きをとった方が安心です。

購入済み

紙の書籍や音楽レコード、DVDソフトなどは、遺品として扱われて、家族や友人に託されることはよくあります。

しかしデジタルコンテンツは、閲覧する権利を購入した体裁のモノが一般的で、引き継げないことが多いです。

しかし、ゼロというわけではありません。

例えば、電子書籍ブックストア大手のeBookJapanは、故人のアカウントを遺族が引継ぐことで過去に購入した書籍ごと相続できるようにしています。

Amazonの電子書籍サービス・Kindleは承継を認めていませんが、Amazonのアカウント自体が家族と共有できるルールなので、共有して使い続けるという体裁なら会員が亡くなった後も家族が使用することに問題は生じません。

今後はそうしたスタンスのサービスも増えてくるかも知れません。

いずれにしろ、サービスごとの規約チェックは欠かせないでしょう。

総合アカウント

Apple IDやGoogleアカウント、Microsoftアカウントなどの総合アカウントでは、あまり積極的な遺族対応は見られません。

一身専属性か、それに近いスタンスが主流なので、承継は期待できないと考えた方がよいでしょう。

しかし、アカウントにひも付けられたクラウドツールや、デジタルコンテンツなどが残っていることもよくあります。

存在に気付いた場合、どんなサービスとひも付けられていて、バックアップすべきモノと定額契約を把握して取れる措置を講じる意識を持ちましょう。

幸い、各アカウントのパスワードを知る術は、本人向けに用意されています。

通信契約や端末の処理

デジタル遺品の調査が一通り終わった後は、スマートフォンの解約や固定回線の名義変更、リユースを含む情報端末の処理などの作業を検討します。

契約の処理

故人のスマートフォンや折りたたみ式携帯電話は、そのままの状態では、通信料や通話料などの月額料金がかかる状態になっています。

デジタル遺品を調査するために、あえて契約を維持する手もありますが、その後も故人名義のままというわけにはいきません。

回線契約の解約・名義変更手続

大手キャリアは、キャリアショップ、格安スマホは、端末を購入した専門店や量販店などで手続きをします。

必要書類を持って、法定相続人が出向けば、規約に則って対応してくれます。

必要書類は、事前に該当キャリアに確認するのが確実ですが、契約者本人の契約書類と死亡診断書などの書類、申請者の身分や関係性を示す書類が求められることが多いです。

解約は、どのキャリアでも受け付けてくれますし、いわゆる2年縛りの期間内であっても、解約時に違約金などの費用は発生しません。

多くのキャリアでは、契約を遺族が引継ぐ承継を選ぶこともできますが、一部の格安スマホでは、解約のみしか対応しないスタンスも見られます。

パスワード解除

契約を遺族が承継しても、端末のパスワード解除には応じてくれません。

契約と電話番号、それに端末が引き続き使えるというだけで、端末の中身が見られるようになるわけではないのです。

回線契約と端末内部の問題は、別モノです。

技術的に不可能な端末が多いという側面もあります。

SIMカード

こうした契約の手続きは、電話番号の識別情報を保存したSIMカードにも必要です。

SIMカードは、回線契約情報の本体が記録されたモノで、最近はスマートフォンや携帯電話とは、個別に所持している人も多くいます。

家電量販店などでは、格安SIMという、大手キャリアの通信プランよりも安く契約できるタイプのSIMカードが単体で売られていて、SIMカードが挿さっていない端末を組み合わせて、利用するという使い方も珍しくなくなっています。

SIMカードそのモノが発見されることもあれば、クレジットカードの取引履歴に、メインの通信契約とは別のモノが見つかったのをきっかけに発覚することもあります。

固定回線契約

亡くなった方の自宅には、インターネット回線の契約が残されていることがよくあります。

これも不要なら解約し、使い続ける場合は、名義変更をしなければいけません。

固定電話の回線契約のようなモノです。

契約の有無や提供元

宅内で使うインターネット回線には、古くはADSL、最近のモノなら光回線、その他ケーブルテレビ等の回線などがあり、集合住宅では、一棟まとめて契約しているという場合も珍しくありません。

宅内の環境や契約書類、引き落とし履歴などから、契約の有無や提供元を割り出し、契約内容を確認します。

インターネット環境の提供元には、通信環境のハード面を担うキャリアと、ソフト面を担うプロバイダーがいます。

表向きはどちらの窓口も、プロバイダーが一任していることが多いですが、NTT東西が提供しているフレッツ光のように、回線事業者たるNTT東西とプロバイダーが別個に並ぶタイプの契約もあります。

再契約

インターネット回線契約も携帯電話と同じように、遺族向けの対応がある程度確立しています。

主に電話とメールになりますが、サポート窓口に問い合わせれば、処理に必要な書類を含めて、丁寧に教えてくれます。

ただし、遺族が選べるオプションは、提供元のスタンスによって変わります。

多くの場合、契約解除と承継が選べますが、一身専属性のスタンスを取るプロバイダーの場合は、契約解除と再契約になります。

例えば、故人が契約したインターネット回線を家族皆で使っている場合、付随サービスであるメールアドレスを、家族それぞれが利用していることがよくあります。

契約が承継できれば、契約者の名義が変更になるだけで、メールアドレスは今まで通り使えますが、再契約になると、これまでのメールアドレスは使えなくなり、新しいモノをつくり直さなくてはいけません。

同じ理由で、ブログのアドレスやユーザーIDが、リセットになる可能性があります。

端末の処理

全ての手続きやバックアップ作業が終わった後、情報端末の廃棄や売却、譲渡を考える方も少なくないと思います。

そうして手から離す際に、気にかけておきたいのが残存データの存在です。

リユース

例えば、故人のパソコンを中古ショップに買取りに出す時は、ハードディスクやSSDの中を初期化して工場出荷時に戻しておくことが推奨されます。

しかし、これだけではストレージの中身は完全には消えません。

初期化は、ドライブという倉庫の中身を空っぽにするのではなく、庫内にある荷物の宛名を全て取り外す行為です。

新たな荷物が、その場所に搬入されたら上書きされて消滅しますが、それまでは名無しの荷物として残り続けます。

暗号化が施されていない場合は、宛名を貼り直すことで簡単に復活できます。

このため中古機器買取り企業の多くは、独自にドライブ内の完全消去処理を施したり、ドライブだけは新品と交換した上で、リユースしたりしています。

しかし中には工程を省いて、元の持ち主の荷物を残したまま、中古市場に流す悪徳業者もいます。

つまり売りに出す際も、自衛の意識が大切なのです。

残された情報端末に、重要な個人情報などが保存されていたのなら、信頼できる中古買取り企業や廃棄サービスを慎重に選定するのはもちろんですが、単に工場出荷時に戻すだけでなく、完全消去アプリなどを使って倉庫内を全て、上書きするなどの措置を検討してみるのもよいかもしれません。

廃棄する際も、シュレッダーで書類を裁断するように、ドライブを完全消去したり、物理的に破壊する人もいます。

Windows上書処理

Windowsはドライブ内のデータを完全消去する、コマンドオプション「cipher/w」を用意しています。

ドライブ内で空とされている領域に、ランダムにデータを上書きした上で消去する機能で、NTFSフォーマットのドライブに対応します。

Windowsで実行する構造上、起動ドライブを完全消去することはできませんが、故人のパソコンからドライブを取り出して、別のパソコンで「cipher/w」をかけるといったこともできます。

コマンドプロンプトを起動して、「cipher/w:<消去するドライブ名>:」と入力してからEnterキーを押せば後はお任せです。

数TBのドライブなら1日近くかかることもありますので、実行中は他の操作を控えてください。

アクティベーションロック

スマートフォンやタブレット、一部のモバイルパソコンは、工場出荷時に戻す段階で苦労することもあります。

アクティベーションロック(初期化禁止措置)という設定が有効なままの端末は、初期化できないのです。

アクティベーションロックは、紛失や盗難で第三者の手に端末が渡った時のことを想定した防御措置です。

iPhoneなら「iPhoneを探す」、iPadなら「iPadを探す」、Android端末なら「Androidデバイスマネージャー」「Google端末を探す」といった機能の中に含まれます。

スマートフォンが盗まれた時、これらの機能が有効になっていれば、持ち主はインターネットを通して端末をロックし、初期化もできないように遠隔で制御できます。

犯人は情報を盗み見たり、勝手に初期化して売り出すことはできません。

しかし、このロックが有効なままだと、持ち主や遺族であっても初期化できませんので、廃棄や譲渡、買取りに支障をきたします。

フォーマットを施そうとする前に、落ち着いて現時点でのアクティベーションロック設定の状況を確認しましょう。

iPhoneの場合は「設定」→「ユーザー名」→「iCloud」→「iPhoneを探す」と進み、該当機能をオフにします。

iPadもほぼ同様です。

Macの場合は、「システム環境設定」→「iCloud」に進んで設定を切り替えます。

Android端末は「設定」→「セキュリティ」→「デバイス管理機能」と進み「Androidデバイスマネージャー」をオフにすることで、クラウド上の「Google端末を探す」機能の適用外になります。

おサイフケータイ

スマートフォンや携帯電話、タブレットなどで、おサイフケータイ機能を備えた端末の場合は、もうひと手順必要になります。

おサイフケータイの登録情報は、本体ストレージとは別のチップに保存されていますので、本体のフォーマット作業とは個別に、おサイフケータイ機能単独の削除処理が必要になります。

こちらの処理まで済ませた端末でないと、買取り対応してくれない中古ショップは多いはずです。

100%完全データ消去

これらの作業を全て実施しても、ドライブ内のエラー領域には、わずかながらもフォーマットできないデータの断片がどうしても残ります。

データ復旧の現場レベルでは、そこから何かしら意味のある情報を取り出せる可能性が残ってしまいます。

過度に神経を尖らせる必要はないものの、頭の片隅には残しておくとよいかもしれません。

まとめ

ランニングコスト 放置のデメリット 発見の手がかり
SNS 無料 荒らされるリスク
晒されるリスク
遺品不認識
アクセス履歴
契約メール履歴
関連アプリ
氏名、繋がり検索
メモ書き、過去の会話
ブログ
ホームページ
無料〜月額数千円 荒らされるリスク
晒されるリスク
遺品不認識
未払い請求リスク
アクセス履歴
契約メール履歴
関連アプリ
氏名、繋がり検索
メモ書き、過去の会話
クラウドツール 無料〜月額数千円 業務支障リスク
遺品不認識
データ喪失リスク
未払い請求リスク
アクセス履歴
契約メール履歴
関連アプリ
カードや通帳
仕事関連の連絡
メモ書き、過去の会話
定額制デジタルコンテンツ 月額数百円〜月額数千円 未払い請求リスク アクセス履歴
契約メール履歴
関連アプリ
カードや通帳
メモ書き、過去の会話
購入済みデジタルコンテンツ 無料 資産不認識 アクセス履歴
契約メール履歴
関連アプリ
カードや通帳
メモ書き、過去の会話
総合アカウント 無料 資産不認識
未払い請求リスク(関連する定額制サービスなど)
端末のログイン情報
アクセス履歴
契約メール履歴
関連アプリ
メモ書き、過去の会話

デジタル遺品サポーター

デジタル遺品のドライブや悩みの解決を、サポートする団体やサービスも増えています。

作業の壁に当たってしまった時は、そうした外部の専門家を頼るのもひとつの手段です。

デジタル遺品の問題をサポートするサービスは、まだ黎明期の段階にいます。

しかし、日進月歩で進化するデジタルの世界で、復旧や現場対応の実績を、着実に積み上げている団体を紹介します。

Dr.Home Net「デジタル遺品サポートサービス」

大手パソコンサポート企業のデジタル遺品対応

https://www.4900.co.jp/service/memento.php

パソコンドライブのサポートを全国で展開している、ドクター・ホームネットが提供しているサービスで規模は随一です。

デジタル遺品サポートも、エリア限定なしに依頼できます。

診断料と基本料金8,000円に、パソコンの復旧13,000円やデータバックアップ10GBまで16,000円、データ完全消去20,000円などの作業オプションを追加する料金体系で、見積もりも分かりやすいので、安心して相談できます。

macdoc.jp「Macの終い方」

Mac専門の修理企業による個別のデジタル遺品サポート

https://www.macdoc.jp/de/de.shtml

Apple製品ならびMacパソコンに限定されますが、

残されたパソコンの中身を確認したい。

見せたくないデータを消去したい。

…といった要望に、柔軟に対応してくれるのが魅力です。

問い合わせから見積もり、正式な申し込みまでメールで済ませた後、Macを着払いで発送する仕組みなので、全国対応してくれます。

一般社団法人デジタル遺品研究会ルクシー

デジタル遺品を総合的に研究し、サイトで成果を公開

https://www.lxxe.jp/

端末のセキュリティ設定から、最新のオンラインサービスの利用規約の動向まで、デジタル遺品に関する研究を総合的に進めています。

公式サイト上で、「デジタル遺品トラブルシューティング」や情報無料ダウンロードできる「デジタル資産リスト」などを公開しています。

メール相談は無料。

立ち合いでの相談は首都圏でのみ有償対応しています。

日本デジタル終活協会

弁護士の視点でデジタル終活の普及をサポート

https://www.digital-shukatsu.net/

デジタル資産の処理について生前から向き合うデジタル終活の普及活動を目的に、デジタル終活用のエンディングノートの開発・販売やセミナーの実施を積極的に行っています。

デジタル遺品を含めた、死後事務委任契約の相談も受け付けているので、死後の遺産処理を望むような形で確実に進めるのに、力強い味方です。

デジタル遺品整理パーフェクトガイド