患者さんがお亡くなりになったときの対応です。
臨終の瞬間から、その後の流れについての説明を、case-by-case
そして、step by step で解説をします。
目次
臨終
臨終の告知直後
主治医が臨終を告げて頭を下げたとき、看護師も亡くなった患者さん、そしてご家族に向かって心をこめて丁寧にお辞儀をします。
ご家族との関係によっては、肩に手を置いたり、背中に手を当てたりするのもいいかもしれません。
また、どんな言葉をかけたとしても、ご家族はその言葉に温度差を感じてしまう可能性がありますので、不用意な勇気づけやねぎらいの言葉は避けるのが望ましいでしょう。
このデリケートな場面で私たちは、ご家族の眼にどう映っているかを意識するのではなく、丁寧に心をこめていることを意識する方が、自然で、温かな印象になるのです。
そして臨終告知のときに私たちは、ご家族の傍らに立つようにします。
ご家族を支える立場であることを表し、疲労やショックで倒れそうなご家族に、すぐに対応ができ、肩や背中に自然に触れることもできるからです。
お別れの時間
目蓋が開いている場合は、お別れの時間に入る前に手で閉じてさしあげます。
ご家族が患者さんに近寄りやすくなるように、ものものしい器械類をベッドから遠ざけスペースをつくります。
次に、お顔を見ながら過ごしていただくために、人工呼吸器や輸血ポンプなど大きなものを外します。
挿管チューブなど口に入っているものも、ご家族に了承を得てから外します。
バルーンカテーテルやドレーンチューブ、IVHなど顔以外についていた器材は清拭時などに外すとよいでしょう。
なお、ご家族はお疲れのことも多いので、椅子やソファなどの配慮もします。
…と聞かれたら?
時間配分を知って過ごしたい、ご家族もいらっしゃいます。
悲しいながらも、誰かへの連絡や今後の段取りのことが頭に浮かんで、気が急くご家族もいます。
時間のことを聞かれなくても、必要だと感じたら伝えるとよいでしょう。
臨終直後のかけがえのない時間
…という場合には?
押しつけにならないよう注意しながら、ご遺体に接する貴重な時間、それも臨終直後のかけがえのない時間であることを伝えます。
しかし清拭など、エンゼルメイクの時間を取れない場合もあります。
それも含め、ご家族のご都合に合わせて相談し、調整しましょう。
医師から臨終の言葉があった途端、点滴や心電図などをさっさと外している様子を仕方ないと思いつつも、ご家族は事務的に処理をされていると感じます。
このお別れの時間を取ることができず、すぐに身体の整えをして霊安室に向かう場合でも、ご家族が慌ただしくて、残念に感じているかもしれないと、心に留めて対応することが大切です。
しかし患者さんによっては、死後1時間程度で顎関節の硬直が始まる方や、腐敗が早い段階で急激に進む方も
いらっしゃいます。
1時間ほどの時間をとる場合は、口腔ケアと腹部冷却を早めに対応した方がよいでしょう。
ご退院の流れの説明
説明はキーパーソンとなる方が望ましいですが、状況によって、その場で話しかけてもよさそうな方に声をかけます。
着替える衣服の準備やお帰りの時間などについては、早めに打合せておいた方がよいと思いますので、全体の流れの説明時に声をかけます。
取りに戻れる状況なのか?
誰かに連絡して持ってきてもらうのか?
施設とご自宅の距離などの状況にもよりますが、ここでは取りに戻るとして言葉にしています。
ご希望の衣類を準備するのに時間がかかる場合は、帰宅してからあらためて着替えていただくとして、差し当たり退院のための衣服をご準備いただきます。
搬送方法について
死亡診断書を持っていれば、自家用車でお帰りになっても問題ありません。
診断書がないまま検問に遭遇した場合、死体遺棄の疑いをかけられかねないようです。
ちなみに緑ナンバーの霊柩車など、遺体搬送の専用車は死亡診断書がなくても問題ありません、
死亡診断書については、言葉がもたらす印象を考えて、この時点ではあえて言葉にせずともよいと考え省いています。
問われた場合に、答える形でよいと思います。
ナース側がおよその時間を見積もり、それを伝えます。
お迎えの葬儀社に待ってもらうと、料金が発生する場合があります。
また最期の看取りの場面が、お迎えの時間や車を待たせているために、慌ただしくなるのは残念です。
感染対策について
標準予防策で対応することについて、
基本的に、生体に比べてご遺体の感染リスクは低くなると考えてください。
特にウイルスの場合、生体環境でなくなったことで、死後の時間経過とともにリスクが下がります。
年間100万人のご遺体を担当する葬儀業者で、感染したという報告はほとんど無いそうですから、生前と同様の感染対策で十分です。
結核などの場合、咳やくしゃみなどの排菌は無くなり、舌根沈下などで気道が塞がれ、感染リスクは低くなると考えられます。
しかし、舌根沈下によって塞がれた気道が開く可能性のある口腔ケアや、胸部の圧迫、体動の時は注意したほうがよいでしょう。
また、患者さんの顔や身体、寝具、着衣などに落下・付着した菌の再遊離の問題もありますので、マスクはサージカルマスクではなく、アスピレートマスクを着用します。