あなたにとって便利なほど、デジタル資産は家族にとって扱いづらい存在になっていきます。

あなたの身に万一のことが起きた時、家族が困らないように、また、あなたが恥ずかしい思いをしないようにすることができるのは、持ち主であるあなた自身です。

あなたが、きちんとしたナビゲートをすることで、家族に余計な苦労をかけず、あなたの名誉も守ることができます。

まずは、デジタル資産をしっかり把握するところから始めましょう。

デジタル遺品を整理する簡単な方法

目次

あなたに万一のことがあった時…

あなたほど家族は使いこなせない

あなたが便利に使いこなすほどに、デジタル資産は家族にとって扱いづらい存在になっていくモノです。

あなたの身に万一のことが起きた時、家族が困らないように、また、あなたが恥ずかしい思いをしないようにナビゲートできるのは、持ち主であるあなた自身です。

きちんとしたナビゲートをすれば、家族に余計な苦労をかけず、あなたの名誉も守ることができます。

そのためには、あなた自身が所持しているデジタル資産をしっかり把握するところから始めなければいけません。

質問…

どんなデジタル資産があるか把握していますか?

□情報端末やサービスを含め、デジタル資産を把握している。

□オンライン上の収支や預貯金などの財産を正確に把握している。

両方チェックがついていれば、デジタル資産に実質的な管理者が存在することになります。

あなたが所持しているか?どうか?

あやふやで…

それでいて、お金が絡むモノは厄介です。

そういう持ち物がないか?

改めて確認してみることが大切です。

デジタル資産を、引き継ぐ準備を考えていますか?

□情報端末のパスワードは、何らかの形でメモしている。

□契約中のオンラインサービスのパスワードは、メモしている。

□家族のITスキルは、ある程度把握できている。

□プライベートな情報は、普段からきちんと分けて整理している。

デジタル資産を把握することも重要ですが、遺品になった際の作業の担い手のことも考えておかなければ、実行性を伴う準備もプライベートの保護もできません。

全てにチェックが入っているなら、作業はかなりスムーズに進むでしょう。

デジタル資産の生前準備は、できていますか?

□万が一の際、対応すべきデジタル資産の一覧をつくっている。

□その情報が、家族に伝わるような仕組みも整えている。

このチェックが埋まれば、安心です。

ただし、デジタル資産は日進月歩で姿を変えます。

定期的に更新する習慣づくりも、併せてしたいところです。

デジタル資産の現状を把握する

今所有しているデジタル資産は、あなたの死後にデジタル遺品となります。

困った遺品にならないようにするには、全体像をつかみ、そこから現実的な対応を探っていくことが大切です。

情報の非対称性

遺品というモノは、本人が生前準備する方が、遺族が一から処理するよりも、遥かに楽で、実作業が少ないのです。

あなたは、あなたの持ち物を好きなように管理できますし、整理の仕方もあなた次第で自由に変えられます。

何を持っていて、何を持っていないかも、あなたが忘れていようが、ちょっと履歴を辿れば把握できます。

しかし、遺族はそうはいきません。

触れてきた経験がないので、全てを手探りで探さすことになります。

やり取りする双方で、有している情報に差がある性質を情報の非対称性と言いますが、デジタル遺品はこの差が普通の遺品よりも大きくなりがちなのです。

デジタル資産の生前準備は、この情報の非対称性を自覚するところが第一歩です。

気まぐれでちょっと変更したスマートフォンのパスコードが、遺族の前では、週末の時間を全て割いても間に合わないほどの、作業量の壁として現れることもあります。

逆に、少し手間でもあなたの没後に、パスコードが伝わる仕組みをつくっておけば、遺族の膨大な手間を省いてあげられます。

そうやって誘導することは、隠しておきたいデータがある場合もプラスに働くはずです。

できる限り少ない手間で、デジタル資産を整理していきましょう。

デジタル資産をリストアップ

あなたがどんなデジタル資産を持っているのかを把握するところから始めます。

所持している情報端末と、契約中の会員サイトなどを、片っ端からリストアップしてみてください。

  • プライベートと仕事で、使っている情報端末
  • メールアドレスやApple ID、Googleアカウントなど
  • オンラインで管理している金融資産
  • 定額で支払っている有料サービス
  • 利用している、あなたのSNSやブログ、ホームページ
  • 仕事などで使っている、クラウドツール

大雑把に言えば、内(情報端末)と外(契約とオンラインデータ)の持ち物をまとめるという感覚です。

オフラインのデータに関しては、情報端末が把握できれば、そこから整理できますので、ひとまず後回しにしていいでしょう。

重要なデジタル資産を漏らさないように、外側から輪郭線を引いていきます。

IDやパスワード、引き落としの繋がりなど、個別の細かな情報はまだ気にしなくてもいいです。

ラフスケッチのようなイメージで進めましょう。

一方で、一時的なデータしか保存していないUSBメモリや、もう使っていない情報端末、同じくもう使っていない会員サイトのアカウントなどは、無視しても構いません。

放置して、誰も困らないモノは無理に深追いする必要はありません。

デジタル資産リストの下書きの例

大まかなデジタル資産
情報端末 スマートフォン 090-0000-0000
会社の携帯電話 080-0000-0000
メインパソコン
モバイルノート
契約 プライベートのメールアドレス
仕事のメールアドレス
Googleアカウント
Microsoftアカウント
オンラインデータ ◯◯銀行の口座
△△証券にある◇◇社の株
株などの金融資産
クラウドツールx xのプレミアムサービス
動画サイトy yの月額見放題プラン
Facebook
LINE

デジタル資産の導線を引く

デジタル資産の全容が見えたところで、具体的な導線づくりに入ります。

残された家族の手間やストレスを減らすことは、あなたの隠したいデータを保護することにも繋がります。

託すモノと隠すモノを線引きする

デジタル資産は、長年使い込むほどに膨大な量になっていきますが、そのうち対処すべきモノは、伝わらないと家族や友人が困るモノと伝わるとあなたが嫌なモノの2種類です。

それ以外のデータは、あまり気にしなくてもいいでしょう。

預金通帳を入れた引き出しがあったとして、預金通帳さえきちんと家族に渡れば、その他の書類や引き出しそのモノの処遇は、特段心配しなくていいのと似ています。

この2種類にも、それぞれ必ず対応したいモノとできれば対応したいモノがあります。

万一の際これらの資産が、最小限の手間で望み通りの進路を取るようにプロデュースする。

それが、準備の本質です。

生前準備の効果は、あなたが死ななくても発揮されることがあります。

何かしらのトラブルに見舞われても、きちんと生前準備をしておけば、家族に対処してもらいやすく、その際に見られたくないモノを見られるリスクが抑えられます。

死んだ後は、知ったことではないと言う考え方でも、生前準備は決して無駄なモノではありません。

情報端末のパスワードを伝えるのが大前提

種類別の導線を引く前に大前提として考えておきたいのが、情報端末のパスワードは、伝わるようにしておくと言うことです。

端末ロックが解除できるか否かで、残された人の作業効率や達成率は大きく変わります。

しかし、情報端末内に家族や友人が欲しがるデータが入っている場合、家族や友人は簡単には解除を諦めないでしょう。

パスワードが分からなくても、Apple IDやGoogleアカウント、Microsoftアカウント等に当たりをつけて、どうにか中身にアクセスする可能性はありますし、今は鉄壁だと思えた仕掛けでも数年後には、いとも簡単に解錠できる方法が広まるということも珍しくありません。

従って、ここで膨大な苦労を強いるよりも、入口を開いた上で、きちんと交通整理して家族や友人を導く方が、誰にとっても得策だと思います。

必ず隠したいモノだけ特定の端末に隔離して、その端末だけはロック状態にしておくという方法もありますが、この作戦もメインの端末がスムーズにアクセスできてこそ意味をなします。

伝わらないと家族が困るモノ

お金が絡むモノ

家族が困るモノの典型例は、お金関連です。

ネット銀行やネット証券の口座等は、放置しておくと多大なストレスを生みますし、証拠金取引の資産は負債にも転じますから、必ず伝わるようにしておきましょう。

仮想通貨の口座を持っている場合も同様です。

月額や年額で利用している有料サービスも、その中身は別にして契約は伝わるようにしておく必要があります。

放置していても引き落とし口座が凍結されれば、支払いが続くことはありませんが、未払い分の請求が家族に届くといったリスクを生みます。

遺族視点では、全てを突き止めるのが困難なため、できれば対応したいモノとしていますが、全てを把握しているあなたは、必ず対応したいモノとして、漏れなく対応する意識が大切です。

通信契約や仕事に関するモノ

スマートフォンの通信契約やインターネット回線の契約も契約書類等が、しっかり伝わるように整えておきましょう。

定額サービスの一種とも言えますが、特にインターネット回線契約は、家族と使っている場合、放置していて突然解除になってしまうと、家族の生活に直接的な迷惑をかけてしまうので、共有物としてとらえる視点も欠かせません。

共有物という意味では、進行中の仕事のファイル等を持っている場合は、万一の際のことを常に考えなければいけません。

あなたが管理人となっているクラウドツールで共有している場合、副管理人等にいつでも権限を渡せるようにしておくことも生前準備と言えるでしょう。

情報端末に取引先とのメールなどが残っている場合は、私物であっても職場で共有されることも想定して準備を進めておくべきです。

人との繋がりに関わるモノ

SNSやブログを特に隠し立てなく利用しているなら、その情報も家族や友人に伝わるようにした方がいいですし、オフラインで保存している家族写真や思い出のファイルなども対応を考えます。

人と人の繋がりに関する資産は、シチュエーションによって「必ず伝えたい」と「できれば伝えたい」の線引きが変わってくるでしょう。

いずれにしろ、あなたの手が離れても価値を共有してくれる人が、存在するデータを処理する際は、その人のことをイメージすると正解に近づけます。

伝わるとあなたが嫌なモノ

秘密にしておきたい写真や動画、メールやチャットのやり取り、理解されにくい趣味のコレクション、普段のあなたとは全く別人を装って公開しているオンラインコンテンツなど…

誰にも知られたくないモノや、家族や友人に見られたら恥ずかしいと感じるモノは、多かれ少なかれ誰にでもあります。

それらを所持していることも、隠れるように対処することも、何ら後ろめたいことではありません。

家族や友人に迷惑をかけるモノ

家族や友人に実害を与えるリスクがあるモノは、あなたの気持ちより周囲を優先してください。

例えば、アダルトコンテンツの月額定額プランに加入している場合、そのプランを家族に知られるのは恥ずかしいかもしれませんが、内緒にしておくと、家族は不審な引き落としや未払い金の請求に悩まされるかもしれません。

内緒の相手とやり取りしているメールが残っているからといって、メールソフト全般にアクセスできないようにしたら、同僚たちとチームを組んで進行していた仕事に支障を与えてしまうかもしれません。

そうした迷惑をかけない範囲で隠す計画を立てれば、家族や友人の調査の先鋭化も抑えられ、結果的に隠したい多くのモノを、隠し通せる見込みが高まります。

性質上、オフラインデータが多くなるでしょうが、匿名で公開しているSNSやブログなど、オンライン上のデータもコンセプトは共通です。

対応したいデジタル資産リスト

前提 情報端末のパスワード スマートフォンパソコンなど
伝わらないと
家族や友人が困るモノ
必ず伝えたい 対外 預金や金融資産 ネット銀行の口座
FXなどの証拠金取引
株などの金融資産
仮想通貨など
定額有料サービス 動画サイトの見放題プラン
オンラインゲームの参加権
有料オンラインストレージ
定期購読の電子書籍
レンタルサーバー
その他、有料サービスとアプリなど
通信契約 スマートフォンやSIMカード
自宅で使っているインターネット回線など
SNS Facebook
Instagram
Twitterなど
ホームページやブログ プロバイダーアカウント
無料ブログサービス
無料ホームページサービスなど
身内 進行中の共有物 進行中の仕事のデータ
やり取り
オークションサイトの未処理の売買など
遺族の想い 家族で撮った思い出の写真や動画
遺言データなど
できれば伝えたい 仕事や趣味の成果物 仕事などの関連ファイル
誰かに託したいデータなど
遺族の想い 家族で撮った思い出の写真や動画
家族や友人にとって重要なメールなど
伝わると嫌なモノ

必ず隠したい

できれば隠したい

対外 SNS 秘密のSNSアカウント
ホームページやブログ 秘密の無料ブログサービス
秘密の無料ホームページサービスなど
身内 プライベート 知られたくない趣味のデータ
知られたくない購入物
知られたくない人間関係のやり取りなど

 

遺族は、最悪を避けるため…

あなたは、最良の結果に誘導するために作業をします。

必要な情報が伝わるリストをつくる

伝えたいモノと隠したいモノの整理できたら、家族や友人を伝えたいモノに導く道筋をつくります。

道筋といっても、厳密に整備されたモノは不要です。

生きている間に持ち物は変わりますし、遺族や友人が求めるモノも状況によります。

最低限の鍵と道標だけで十分です。

必要なモノをリストアップして、書き出すか印刷して紙の書類として扱えるようにしてください。

それを預金通帳やパスポートなどと、一緒に保管することで、道筋の6割は完成したといっていいでしょう。

  • メインで使っている情報端末の型番とパスワード
  • 総合アカウントの情報
  • 口座のあるネット銀行やネット証券会社などのID
  • 定額契約中のオンラインサービス名とID
  • SNSやブログ、ホームページのIDやパスワード
  • 仕事の詳細を知る同僚や知人の連絡先

気付いてもらう

残された家族や友人の立場からすれば、最も恐ろしいのは重大な資産に気付けないことです。

故人のデジタル資産の全体像がある程度分かれば、その中から優先度の高いモノから対処していくでしょう。

手続きが煩雑で相当な労力を要するモノであっても、必要に迫られていれば、可能な範囲でやり遂げるものです。

しかし、存在に気付けなければ、何もできません。

リストには、先に挙げた情報端末のパスワードと、家族に寝耳に水のショックを与えかねないオンライン資産、その他「必ず伝えたい」に該当するモノをまとめていきます。

また、職場やプロジェクトを共にしている同僚の連絡先を添えておくのも有効です。

あなたに万一のことがあった場合、その報せを最初に受ける確率が高いのは家族です。

家族があなたの仕事について、詳しく知らないのなら、仕事のフィールドでキーマンになる人に繋がる仕組みをつくっておいた方が、何かとスムーズにいくでしょう。

日付を記入して、定期的に見直す

特に重要なのが、日付を記入しておくことです。

デジタル資産は、とにかく流動的です。

スマートフォンは1〜2年で買い換えることが多いですし、オンラインサービスの盛衰は1年先でも読めないところがあります。

せっかくつくったリストですが、2〜3年もすれば半分以上が、無意味なモノになっていると思ってください。

日付を記入するとともに、1年に1回くらいのペースで更新するのが理想です。

誕生日や大晦日など、あなたなりにタイミングを決めて、更新の習慣化を意識付けてください。

習慣化したらプラス2割。

合計8割の準備が完了です。

デジタル資産メモの記入例

デジタル資産メモ 記入日:2020年00月00日
機器やサービス IDやパスワード 備考
スマートフォン iPhone SE 123456 Apple IDはGmailと同じ
部屋のパソコン xxxx0000 Microsoftアカウント
モバイルノートVAIO xxxx0000 Microsoftアカウント
VVVネット銀行 A0000000 普通口座 0000000
XXX証券 B1111111 普通口座 0000000
Evernote xxxx@yyy.com プレミアムプラン 年額
YYY動画 xxxx@yyy.com スタータープラン 月額
Dropbox xxxx@yyy.com ベーシックプラン 無料
Facebook xxxx@yyy.co.jp 本名
Twitter xxxx@yyy.co.jp sakozo
アメブロ xxxx@yyy.co.jp タイトル「output-gym」
※◯◯◯◯さん △△出版社 090-0000-0000

 

家族にきちんと伝わるか?

…を指標に、できる限り簡潔にまとめます。

IDとパスワードを併記する手もありますが、セキュリティ面から生前のリスクを犠牲にするのは避けるように、総合的に判断して書き進めてください。

伝えたいモノと隠したいモノは交差しない

デジタル資産リストを頼りに遺族が訪れるのは、あなたが残していった情報端末です。

内部に保存した大切なデータをバックアップしたり、インターネットブラウザやメールアプリなどから、外部にある重要な資産の情報を集めたりするでしょう。

この作業がやりやすいように、情報端末内に道標を付けて交通整理をすれば、生前準備はプラス1割。

合計9割が完成です。

たった1割分と思うかもしれませんが、この作業は隠したいデータから、家族の目を逸らすという裏の目的もあります。

伝えたいモノに家族を導く道筋をつくり、そこから隠したいモノを遠ざける。

これがデジタル資産の生前準備の極意です。

具体的な方法は、隠したい内容によって変わってきますが、共通して言えるのは、隠したいモノは一覧性を抑えて、なるべく目立たなくすると言うことです。

インターネットの閲覧履歴やメール履歴、よく使うファイルの履歴など、隠したい箇所が家族の目に触れるのを避けるように可能な範囲で意識しましょう。

汎用的なテクニックは、次の節でいくつか紹介していきます。

なお、生前準備が完了する残り1割ですが、これは何をやっても埋まりません。

デジタルに限ったことではありませんが、時間が動いている以上、完璧な生前準備は存在しません。

常に穴があり、その穴を埋めながら最善策を更新していくのが、最も完成度の高い生前準備なのです。

情報端末を整える

家族があなたの情報端末を調べる時に、どう振る舞うのか?

制御はできませんが、想像して誘導することはできます。

その上で隠したいデータをどこまで隠せるのかを見ていきましょう。

スマートフォンの内部を整える

スマートフォンやタブレットは、一般的にアプリやデータの一覧性が高いので、家族はページに並ぶアプリや一覧ページのアプリを、つぶさにチェックしていく可能性があります。

中でもインターネットブラウザやメールソフト、LINEや金融機関のアプリは、優先的に見られると考えておいた方がよいでしょう。

特定のファイルなどを非表示に

その中で、特定のファイルや連絡先だけを隠すのには、限界がありますが、打つ手がないわけではありません。

iOS系端末は写真や動画をファイル単位で、非表示設定にする機能を備えています。

Android系端末は機種によりますが、ファイルマネージャー関連アプリによって画像やその他のコンテンツがファイル単位で、非表示指定できる場合が多いです。

さらに、富士通「arrows」シリーズの一部機種のように、連絡先やアプリ自体を意のままに非表示化する機能を備えた機種もあります。

また、別途秘匿性の高いアプリをインストールする方法もあります。

例えば、特定の相手の連絡先は標準以外のコミュニケーションアプリに登録して、アプリ自体を目立たせなくするといった具合です。

ただし、秘匿性を優先すると利便性が落ちます。

1カ月ほど試してみて、習慣化できなければ、別の方法を考えた方がいいでしょう。

パソコンの内部を整える

たいていのパソコンは、起動するとデスクトップ画面から始まります。

そこに並ぶフォルダやファイルは、ほぼ確実に家族の目に触れるでしょう。

また、タスクバーやドックに並ぶアプリのうち、インターネットブラウザやメールアプリ、LINEなどのコミュニケーションアプリがあればチェックされるモノと考えるべきです。

統一感のあるファイルの整理法

WindowsもMacもフォルダを自由につくって階層化できるので、隠したいファイルがあれば、デスクトップから遠い階層の片隅に置くことも容易にできます。

スマートフォンやタブレットと比べて、ストレージ容量が大きいこともあり、家族であっても全ファイルを全てチェックするのは至難の業です。

それゆえに、導線づくりは重要です。

しっかり階層化してファイルを管理していると、家族は思い出の写真や仕事のファイルなどがありそうな筋を探そうとするはずです。

乱雑にファイルやフォルダを並べていると、他人の目では配置を把握するのが困難なので、仕方なくしらみつぶしにフォルダを開いていくか、ファイルの検索機能を使っての調査に切り替えるかもしれません。

行動を誘導しやすいのは、やはり前者だと思います。

日頃から統一感のあるファイルの整理法を意識した方が良さそうです。

その上で、MacのFileVaultやWindowsのBitLocker、その他ツールを使って隠したいフォルダを個別に暗号化したりすれば、より効果的でしょう。

クイックアクセスなどを無効にする

よく使うファイルを目立たせる機能は要注意です。

標準設定では、アクセス頻度の高いファイルは、保存場所に関わらずスタートメニューやエクスプローラー、あるいはマイファイルなどで、リストアップされる仕組みになっています。

せっかく保存位置を工夫しても、このままでは無意味になりますので、あまり必要と感じていないなら、機能を無効化したりした方がいいでしょう。

ベーシックな部分で、そうしたカスタマイズができるのも、パソコンの有利なところです。

インターネットブラウザを整える

メインのインターネットブラウザは、情報端末からインターネットを通した外部と繋がる重要な窓口とみなされるため、家族の目を避けるのは難しいでしょう。

知られたくないアクセス先がある場合、閲覧履歴とブックマークは一通り見られることを前提に、対策を練るのがいいでしょう。

広く使える対策として、シークレットモードやプライバシーモードと呼ばれるログ(記録)を残さないアクセス方法を習慣的に使いこなすことです。

主要なインターネットブラウザには、たいてい搭載されていますので、パソコンだったらショートカットで呼び出す習慣を身につけると便利です。

スマートフォンやタブレットでも、設定メニューからすぐ呼び出せますので、これも慣れれば無理なく使えます。

なお、複数の端末で設定を同期している場合は、標準のままでは閲覧履歴も共有されることがよくあります。

閲覧の同期だけ実施しないように調整すれば、端末単位でアクセス先の痕跡を制御することもできます。

ブックマークに関しては、個別にシークレット化する機能は持たないことが多く、通常のブックマークは諦めて、シークレットモードで使えるオンライン上のブックマークを使ったり、リンク集を自作してオンライン上にアップロードしたりと工夫が必要になります。

ここも習慣化できるか否かで、導入を決めるのがいいと思います。

シークレットモードを起動するショートカット(Windows)

インターネットブラウザ名 ログを記録しないモード パソコンのショートカット
Google Chrom シークレットモード Ctrl+Shift+n
Internet Explorer InPrivateブラウズ Ctrl+Shift+p
Microsoft Edge InPrivateブラウズ Ctrl+Shift+p
Mozilla Firefox プライベートブラウジング Ctrl+Shift+p
Opera プライベートブラウジング Ctrl+Shift+n
Safari プライベートブラウズ 初期設定なし

 

Macの場合はCtrl+⌘となります。

Safariのプライベートブラウズは、ユーザーがキーを割り当てることでショートカットがつくれます。

オンラインの持ち物を整える

生前準備に利用できる機能を備えたサービスも増えています。

それらを活用するとともに、個別の対策も考えていきましょう。

Googleアカウント無効化設定

オンラインサービスの多くは、利用者の死後の導線づくりにあまり積極的ではないため、あなた自身による準備や遺族による手探りの作業によって解決の道筋をつけるのが一般的です。

しかし、万一の際に実働するサポート機能を提供するサービスもいくつかあります。

その代表例と言えるのが、Googleの「アカウント無効化管理ツール」です。

Googleアカウントは、Android端末の設定からメールサービスのGmail、オンラインストレージのGoogleドライブなど、同社が提供する多彩なサービスを一元管理する総合アカウントです。

取得してしまえば、運営側から抹消されることはまずありません。

逆に言えば、何もしなければ、いつまでも存在が残り続けます。

しかし、アカウント無効化ツールを設定すれば、3カ月以上ログイン期間が空いた後に、アカウントを抹消したり、メールデータなどを特定の誰かに託したりできるのです。

生前準備専用の機能ではありませんが、あなたの死後にGoogleアカウントにひも付けられた全てを墓の中に持って行くというなら、力強い味方になるでしょう。

利用は無料です。

さらに魅力的なのは、設定が発動する段階で誰かに自由文を発信する設定まで選べることです。

発動まで最短で半年となるので、何かあった直後に生きるモノではないかもしれませんが、デジタル資産の目録をここに記載して漏れをフォローしたり、タイミングを問わず大切な人に何かしらの気持ちを伝えたりするのに使えそうです。

ただし、あなたの死後に必ず発動する保証はありません。

世界的な大企業が提供する機能といっても、デジタルの世界は5年後に何が起きているか予測できません。

Googleの各種サービスは健在でも、この機能の提供が終了している可能性はあります。

また、登録した連絡先のメールアドレスが、発信する前に使えなくなっていることもあるでしょう。

未来の不確実性は、ゼロにはなりません。

Googleアカウント無効化管理ツール

https://my account.google.com/inactive

設定するGoogleアカウントにログインした端末なら、パソコンでもスマートフォンでも同じ手順です。

Googleアカウントページの「アカウント情報」画面を開き、「個人情報とプライバシー」→「コンテンツの管理」→「アカウント無効化管理ツール」へと進みます。

  • アラート設定
    アカウントに関する通知(アラート)を受け取るための携帯電話番号を登録します。
    SMSに届く確認コードの入力が必要です。
    手元に通信端末の用意が必須です。
    予備として、Gmailとは別のメールアドレスも追加できます。
  • タイムアウト期間
    設定が発動するまでのブランク期限を決めます。
    3カ月から18カ月の間で90日刻みで6段階の設定が可能です。
  • 連絡先に通知してデータを共有
    タイムアウト期間を過ぎた時に、データを託したり、メッセージを送ったりする相手と、その文面を設定できます。
    Googleアカウントのデータを託す場合は、送り先の登録にも確認コードを使った認証が必要になります。
    文面のみの設定なら、先方の確認はいりません。
    「信頼できる連絡先を追加」をクリックして、メールアドレスを登録します。
    託すデータがある場合は、「この連絡先とデータを共有する」にチェックを入れます。
    データを託す場合は、託すデータにチェックを入れて、送り先の電話番号を入力します。
    先方が確認コードを入力することで、設定が有効になります。
    文面だけならこのプロセスはスキップします。
    文面を自由に設定して、「保存」をクリックして、セット完了です。

FacebookとInstagramは人に託す

FacebookとInstagramも生前準備向け機能を業界に先行して実装しています。

両サービスでは追悼アカウントという亡くなった利用者のページを保護する機能を備えていますが、その追悼アカウントの管理人を生前に指名できる機能も備えているのです。

あなたが準備をしていない追悼アカウントには管理人がいないので、保護モードになった後に訃報や葬儀のお知らせなどを誰かがアップすることはできません。

しかし、あらかじめ追悼アカウント管理人を友人や家族に頼んでおいたら、追悼アカウントモードになった後でも、葬儀や納骨、一周忌などの記事をアップしたり、カバーやアイコン写真を差し替えたりできます。

ただし、ダイレクトメッセージを読んだり、過去のタイムラインでシェアした投稿を削除したりはできません。

あなたの代わりではなく、あくまでも追悼アカウントの管理人として、制限が設けられた範囲内で動いてもらうことになります。

死後に荒らされたり、晒されたりするのは防ぎたいけれど、状況に応じて追悼の場として整えてほしい。

そんな思いがあるなら、「セキュリティ」メニューからこの機能の設定項目に進みましょう。

なお、他の利用者から追悼アカウント化の要請があった際、アカウントの抹消を希望する設定を選ぶこともできます。

遺族の立場では膨大な手間と確認が必要なアカウントの抹消ですが、あなたの意思があれば、現実的な手段として検討できるようになるわけです。

追悼アカウントの設定(Facebook)

ユーザーページの「セキュリティ設定」メニューから「追悼アカウント管理人」を選びます。

管理人を選択する画面に進み、繋がっている家族や友人のアカウントを検索します。

登録できるのは1名です。

追悼アカウントモードにはせずに、アカウント抹消を希望する場合は、ここで意思表明を残せます。

管理人をお願いしたい人に、その旨を伝えるメッセージを送信します。

自由に編集ができ、別のタイミングで送信することもできます。

相手から承諾を得たら、管理人設定は完了です。

削除して別の人を選び直す場合も、この画面で行います。

データアーカイブを許可すると、管理人が過去の投稿や基本データなどをバックアップできるようになります。

隠すモノは切り離す

その他、特定のサービスに頼らない汎用的な戦略も考えておきましょう。

オンラインに存在する持ち物は、多くの場合、外の世界と価値を共有している資産です。

お金関連や共有物などは、残された家族や友人と外部の世界に摩擦を生みかねないので、できる限り効率的に伝わることを意識しましょう。

問題は、隠したい、隠すことが許される資産です。

現実のあなたとは、切り離した秘密のSNSやブログ、あるいは内緒にしておきたいショッピングサイトのアカウントなどを持っている場合は、徹底的に現実のあなたと切り離して、死後もひも付けられないようにします。

それらのページにアクセスする際は、シークレットモードを使うのを徹底するのはもちろん、購入履歴や会員登録メールも削除するか目立たないメールフォルダに移しておきましょう。

引き落とし口座やクレジットカードに残った購入履歴は、消しようがないので諦めるしかありません。

可能なら、会員登録メールアドレスも普段は使っていないモノにした方が安心です。

発信している情報も、日頃から切り離しを意識するに越したことはありません。自部屋での写真撮影の際に映り込みに気を付けるのは初歩で、何気ないつぶやきも、居場所が絞り込まれるリスクになります。

デジタル資産は、存在する限り、検索性が衰えないということは念頭において運営すべきです。

死後事務委任契約

あなたの死後、遺産の整理や葬儀、埋葬などの事務処理を代理人に委任する契約を死後事務委任契約と言います。

弁護士や税理士、司法書士、行政書士などの士業事務所で対応しているところが多いですが、デジタル遺品の処理も相談に乗ってくれるところが増えています。

オンラインアカウントの抹消手続きからSNSでの訃報アップ、定額サービスの解約など、請け負ってくれる範囲は、それぞれ異なるので利用する際は、打ち合わせを重ねながら詳細を詰めていくのがよいでしょう。

プロに後処理を委ねることで、より確実に希望する形で処理できるようになりますが、「家族に内緒でハードディスクを壊したい。」といった望みは、残念ながら受け入れられないのが普通です。

遺族とトラブルになりそうな要素を含むと、契約全体の遂行に支障を来たしかねません。

そんな危なっかしい約束をするプロは、そうそういないというわけです。

死後削除アプリ(Windows)

Windows限定となりますが、あらかじめ登録しておいたファイルやフォルダを、あなたの死後に削除するアプリもあります。

中でも昔から有名なのは「僕が死んだら…」。

お別れのメッセージを表示させる裏で、指定したファイルを削除するという、家族にスイッチを押してもらうことで発動するタイプのアプリです。

メッセージや削除ファイルの登録の準備が済むと、デスクトップにその名の通りの「僕が死んだら…」というアイコンが生成されるので、後は万一の時に、家族の目に止まるように配置し続ければ済みます。

設定によっては復旧ツールでも復元できないレベルで削除できるところも頼もしいです。

もうひとつ、「死後の世界」も定番と言えます。

こちらはデスクトップに常駐するタイプのアプリで、家族からのアクションは特に求めません。

削除するファイルやフォルダ、望む場合は削除した際に表示するメッセージもセットし、発動条件を指定します。

何月日を指定する固定方式と、最終起動から◯日後に発動といった方式が選べます。

普段から使っているパソコンなら後者が便利ですし、あまり頻繁には触らないパソコンなら、前者の設定にして、指定日が近づいたら1年後などに、調整し直すといった付き合い方がいいかもしれません。

いずれも便利なアプリですが、きちんとセットしなければ意味をなしません。

削除するファイルやフォルダには、バックアップ先も指定しなければ隙が生じますし、家族が該当のアイコンをクリックしたり、パソコンを開いて起動したりしなければ、不発に終わってしまいます。

僕が死んだら…

無料 https://www.c-lis.co.jp/our_services/when_i_die

インストールしたら、画面の指示に従って削除装置を作成していきます。

削除したいファイルやフォルダを指定した後、お別れのメッセージを登録して完成です。

家族が「僕が死んだら…」アイコンをクリックしたら、「暗号化されたメッセージがあります。」とメッセージが表示されます。

「同意して表示」をクリックすると、間もなく表示され、その裏で削除処理が走ります。

死後の世界

無料 http://www.yukibow.com/

タスクトレイに常駐アイコンを右クリックして設定画面を表示します。

ここで削除ファイルやフォルダ、削除条件などをまとめて指定します。

削除後に表示するメッセージの入力枠「拡張設定」ボタンを押すことで現れます。

削除処理が済んだ後、メッセージを登録していなければ、表向きは何も表示されず、人知れず事が済む流れになります。

プロファイリング規制

SNSやブログ、ショッピングサイトの会員ページや動画サイトのマイページなどを、持っている人は多いでしょう。

これらの無料ページには、使われなくなったモノが大量にあります。

これらの人間関係、ネットでの購入履歴やアクセスしている時間帯、総時間量などをAIが解析し、その人の傾向や信頼性などを図る、ネット与信サービスを提供する企業があります。

あなたが遠い過去に使っていたサービスやページはAIによって、メールアドレスやハンドルネーム、発言や発信している内容の整合性とリンクの繋がりなどから掘り起こされ、与信の材料になります。

そうしたAIを使ったプロファイリングは、個人のプライバシーを丸裸にする恐れがあると言うことで、プロファイリング規制の動きも活発化しています。

持ち主が、大昔に書いたブログを放置して、自分が死んだ後に家族の住所を特定する材料として悪用されるリスクを無視するわけにはいかなくなります。

オンライン資産の処遇は、サービス提供元の利用規約によって大きく変わります。

インターネットサービス全体の常識に動きが出たら、規約に影響が出ることは必至です。

すると、現在のオンライン資産の対策は、通用しなくなる恐れがあります。

デジタル資産に関する法律づくりが、世界で活発化する中で、これらの法律が世界中の主要サービスの利用規約に影響を与えていくこともあるでしょう。

いずれにしろ、オンラインの資産や対応策は、ダイナミックに変わっていくと、とらえておいた方がよさそうです。

デジタル遺品整理パーフェクトガイド