介護問題はお金の問題
介護という言葉と、お金という言葉の関連性を考えたことはありますか?
介護というと身体介護や生活支援などの、排せつなどのオムツ交換や入浴をイメージします。
十分なお金や資産をお持ちの人は、何も心配することはありません。
なぜなら、介護に関するほとんどの問題は、お金で解決することができるからです。
問題なのは、お金や資産が無い人たちです。
お金が無いために解決策が無いということは、殺伐とした現実が待っています。
下落する最高額の資産
老人ホームへ入居を決断する理由は、さまざまですが、あなたはこのようなケースを想定したことは、あるでしょうか?
独居老人を最近見かけなくなったと思っていたら、自宅で亡くなっていた。
しかも1ヵ月も前に…
高齢者が孤独死をし、その発見に時間を要した場合、ご遺体は腐敗をして後始末に多大な時間と費用が発生します。
このような事故が起きた不動産を売却したり、リフォームして貸し出したりする場合は、何が起こったかを説明しなければいけません。
黙っていれば分からないと思いますが、不動産取引には重要な事項について告知義務があります。
事件が起きて解決するまでの間、警察が出入りをし、必要があれば聞き込みもするので、隣近所の住人には、周知の事実となります。
さらに、世の中には新聞記事で死亡事件などを見つけ、その詳細をレポートするために現地に足を運び、写真付きで事件が発生した家の概要を、ネットで発表している事業者も存在しています。
つまり、事件の事実を隠して不動産を処分することは、不可能だと考えたほうがよいということになります。
孤独死を防止するという行為は、所有している不動産の価格を棄損させない行為です。
多くの人にとって一番高額な資産の価値を市場価格よりも、著しく棄損させる行為は、資産の劣化というレベルの話ではなく死活問題のはずです。
そのためにも、独居老人の高齢者の場合は、早めに老人ホームなどに住み替えることが重要です。
介護ニーズのパラドックス
東京のある老人ホームで、多くの入居者が日常的にベッドに縛られて、生活しているというニュースがありました。
100人近くの認知症入居者が、徘徊をして危ないという理由で、職員が手薄な時間帯を中心にベッドに縛りつけていたのです。
多くの入居者は都営住宅の住人で、老々世帯でもありました。
テレビの取材を受けていた入居者のご主人は、その老人ホームに対し感謝の言葉しか出ていませんでした。
奥さんが縛られていることは承知していて、問題の老人ホームが無ければ、二人で自殺をしていたはずだと話していました。
区の介護保険担当者がテレビの取材に応じ、入居者の家族からホームに対する苦情はなく、ホームが廃止になってしまったら、どうすればよいのかという心配をしている。
…という事実を公表しました。
運営事業者は、その地域の経済的事情、介護事情に見合ったホームを運営します。
この地域には低所得者が多く存在し、低価格なニーズがあると考え、一番費用のかかる人件費を抑制することは、当然の成り行きです。
身体拘束をしなければいけなかったのは、職員が少なかったからなのです。
社会通念上は、いかがなものか?…と言われることであっても、そのサービスに感謝して現実に助かっている人がいるという事実があります。
取材に応じた高齢者もあと少し、費用を捻出することができれば一般的な老人ホームに入居することができたはずなのです。
介護は、やはりお金の問題なのです。
介護ビジネスのタコ足食い
中途半端な年金や資産があるような場合、老後の生活は健康でいられなくなったら終わりです。
しかし、お金がまったくなければ、生活保護という選択肢があります。
生活保護は国民の権利です。
受給をすることにためらう必要はありません。
老人ホームの中には、要介護認定さえ受けていれば、生活保護受給の高齢者を積極的に受け入れているところもあります。
多くの老人ホームは、社会福祉の観点からコストを企業努力で減らし、困っている貧困高齢者を対象に運営を行なっています。
中には貧困ビジネスと言われるように、要介護の生活保護受給対象高齢者であれば、文句を言う家族もいないし、適当に介護支援サービスをやっているふりをして、介護報酬を受け取り莫大な収益を上げている悪質な老人ホームもあるようです。
しかし生活保護の原資は税金であり、一人ひとりの国民が働いて稼ぎ出す所得の一部です。
多くの高齢者が生活保護で暮らした場合、保護費の予算が枯渇してしまいます。
いずれにしても高齢者介護ビジネスは、公的資金によって維持され、介護サービスが必要な高齢者が増えるにしたがい、介護報酬も増え続け、結果、税金の負担も多くなるという構図があります。
政府発信で「健康寿命」というキーワードが出ています。
これは、「国民の老後は、もう国が丸抱えで面倒を見ることはできなくなりますので、死ぬまで働くなどして、自己責任で頑張ってください。」という意味なのでしょうか?
介護の質はお金で買うもの
介護保険制度とは、生きていくための必要最低限の保証です。
それ以上のサービスを望む人は、事業者と別途契約をし、自己負担をしてくださいということなのです。
介護保険制度が決めた人員配置で、老人ホームの運営を行なっている場合、外出や病院受診は家族が対応するのが普通です。
外出も病院受診も入居者の自由ですが、その対応はホームの介護職員にはできませんので、自己負担で外部の支援業者に頼むことになります。
それは老人ホーム内で入居者に対し、必要最低限の介護サービスを提供することを介護保険は目指しているからです。
介護保険制度は、総費用の1〜2割の自己負担でサービスの提供を受けることが可能ですが、そのサービスに対する利用者側の過度な期待が介護職員を追いつめています。
枠内で運営している以上、できることとできないことがあるのです。
介護職員が多く配置されていれば、痒いところに手が届く介護サービスの提供が可能となりますが、それなりの金銭負担が必要になります。
看護師や理学療法士の配置を手厚くして、他のホームとの差別化を訴えている老人ホームも多くなってきました。
専門的な教育を受けてきた看護士や理学療法士が配置されているということは、入居者に安心をもたらし、質の高いサービスの提供を可能にします。
しかし、その分の追加費用は入居者が負担しなければいけないので、支払いができない高齢者はサービスの恩恵を受けることはできません。
最低でいくらかかるのか?
有料老人ホームの収入は、月額利用料金、介護保険報酬、自費サービス費用から成り立っています。
月額利用料とは、老人ホームの家賃、管理費、食費などで、入居者は全額を自己負担することになります。
介護保険報酬は、要介護度に応じて設定されています。
自費サービス費とは、老人ホームが用意しているプラスαのサービスで、入居者が買い物に行くときの付き添いなどの、いわゆるオプションというものです。
老人ホームにより、月額利用料金の中に含有している場合もあり、取り扱いは老人ホームによってまちまちです。
月額20万円の老人ホームに入居した場合、どれだけの費用がかかるのでしょうか?
まず医療費がかかります。
疾患によってまちまちですが、最低でも月額1万5,000円は見ておく必要があります。
次に衛生費、オムツ代などがかかります。
これも、利用頻度や利用方法によって違いはありますが、月額1万5,000円程度はかかります。
さらに、介護保険報酬の自己負担分があります。
老人ホームが月額20万円、1割負担の入居者であれば2万円、2割負担であれば4万円必要です。
その他に、タバコや飲酒の嗜好品、外食やホーム企画のレクリエーションへの参加費、洋服や布団の新調などもあります。
月額、最低でも25〜27万円は必要であり、余裕をみて30万円はほしいところです。
単純に計算しても年間360万円、仮に10年生きるとなれば3,600万円です。
半分を年金で賄うとしても1,800万円の余剰金は必要です。