デジタル遺品整理スタートアップガイド

デジタル機器とインターネットの普及で、世の中はどんどん便利になっていますが、利用者が亡くなった後のことは、上場企業や国際的な大企業が提供するサービスであっても、放置されることになります。

そこにあるデータ、いわゆるデジタル遺品には、どんなリスクがあるのでしょうか?

あなたは遺族として対峙したときに、何をすべきでしょうか?

また、何ができるのでしょうか?

そして本人としては、どんな準備ができるのでしょうか?

10万円のお葬式

10万円ホーム

デジタル遺品の正体

故人が残した持ち物のうち、デジタルの環境を通してしか、実態がつかめないものをデジタル遺品と考えます。

例えば、

  • デジタルデータをつくって保管するもの
    スマートフォンや携帯電話、パソコンといった情報端末やその中に保存されている写真や書類など
  • デジタルデータそのもの
    インターネット上のマイページのアカウントと書き込んだ投稿など
  • インターネットを介して、使える状態になっているもの
    ネット口座の預金など

…の、3つが考えられます。

しかし、デジタルの写真とプリントされた写真の思い出は、どちらも同じです。

また便箋に綴られた文章には筆跡が遺りますが、言い回しや考え方、思いやりなどは電子メールでも変わりません。

また、ネット銀行の口座残高も紙の預金通帳の残高も同じ法定通貨です。

つまりデジタル遺品とは、単に情報が電子化されたモノなのです。

デジタル遺品は見えにくい

スマートフォンは、設定を調整したり、アプリを追加して、コンテンツを保存して、あなた用に最適化していきます。

逆に家族には、分かりにくくなっています。

家族のスマートフォンの全容を知るために、操作をマスターし、インストールされたアプリの使いこなし具合により、どのアプリをどれくらいの深さで調べていいのか?

答えは、なかなか見つかりません。

紙の手帳であれば、ページをめくれば全体像をつかむことはできますが、デジタルの世界は、それを使いこなすことができなければ、俯瞰の視点に立つことはできません。

あなたが家族に託す場合も、手取り足取り教える必要があります。

家族が何のヒントもなく調べることは、徳川の埋蔵金を探すようなものです。

さらに、パスワードを入力しない限り、ロックがかかった入口にも入れないのです。

いくつかの抜け道があるのは事実ですが、100%解決できるとは限りません。

過去が消えにくい

デジタルは存在し続ける限り、作成された時のままであり続け、プリントした写真のように、黄ばんだり退色したりすることはありません。

写真をSNSに添付すれば同じ写真がコピーされ、クラウドサービス上に知らないうちに複製がつくられたりもします。

便利な反面、完全に消去するには、一筋縄ではいかない面倒さも併せ持っているのです。

また、SNSやチャットサービスなどで「愛してる♥」「今日のランチ!」といったやり取りが残ります。

声に出した言葉は、その場で消えていきますが、デジタルを通すことで、その人が亡くなった後も多くの足跡が遺ることになります。

デジタル環境では、過去を消えにくい形で遺していくことになるのです。

情報端末の劣化は早い

テレビや冷蔵庫が使っているうちに、調子が悪くなっていくように、情報端末も劣化していくことは避けられません。

スマートフォンのバッテリーの減りが早くなったり、パソコンであればハードディスクの経年劣化による故障で、アクセスできなくなったりします。

テレビや冷蔵庫の買い換え時期は、7〜10年と言われていますが、パソコンは長くて5〜6年、スマートフォンは長くて2〜3年と言います。

情報端末の劣化は、現行製品のフル性能を基準に考えると、劣化のスピードは紙や家電よりも早いのです。

モノとしての経年劣化は、丁寧に使って保管すれば、ある程度は遅らせることができますが、それ以上に現状維持が難しいのが、実用性とメンテナンス性です。

情報端末はインターネット経由でアップデートし、セキュリティーの不備を修正するプログラムが、追加されたりといったサポートが継続的にされています。

とても便利なのですが、メンテナンスが受けられなくなった時は、使い物にならなくなるのです。

10年前に買ったパソコンを、今でも使うことはできますが、OSのバージョンが古く、サポートが終了していたり、ソフトウェアの開発元が撤退していた場合、環境に見合ったアップデートができなくなり、モノが壊れていなくても不具合が生じてしまいます。

情報端末は日進月歩で進化し、さまざまなサービスも同じペースで進化していきます。

新しいものが古くなって行くことで、サポートには、技術的、時間的な限界があるということです。

サポートは、いつかは切れるということを見越して、データは長持ちするモノに移し替えたり、コピーをつくったりするのが良さそうです。

データを移し替えた時点で、古い端末のパスワードは必要なくなり、移し替えた端末のパスワードの管理だけでOKです。

逆に、消去したいデータがある場合、情報端末が経年劣化しても、消滅するわけではありませんので、意識的に削除処理をしましょう。

なお、パスワードの管理は、あなたのケアにかかっていますので、意識することで現状維持は可能です。

パスワードの忘却と散逸

時間とともに劣化していく要素は、ハードウェア自体と、メーカーメンテナンス、そして所有者の環境があります。

所有者の環境の劣化とは、情報端末や周辺サービスにアクセスするためのIDとパスワードが、時間とともに見つけにくくなることです。

故人のスマートフォンを思い出として保管している場合、ロックのパスワードは、家族が管理していくことになります。

しかし、滅多に開かないパスワードの管理は、意外と難儀です。

頭で覚えるのは忘却リスクが高く、紙に書く場合、紙の管理をしっかりする必要があります。

そして、インストールされているアプリのIDや端末のサポートIDまで覚えるのは相当大変です。

そのような情報は、スマートフォン購入時の箱と一緒に保管されている書類、メールのやり取りなどに残されていることもありますが、亡くなってから時間が経つほど、探しづらくなっていきます。

インターネットサービスのQ&Aページに「パスワードを忘れた場合」という項目が必ず用意されているのは、生きている本人であっても忘れてしまうからなのです。

オフラインデータ

情報端末内のデータは、オフラインデータと呼ばれ、保存先である情報端末と運命共同体です。

内蔵されているハードディスクなどが壊れたらアクセスできなくなるということです。

そうなると、データ復旧の専門サービスに依頼しても100%の復活は望めません。

また、ソフトウェアに不具合が生じたり、使用期限が過ぎてしまったり、基本ソフトの設定が変わって急に使えなくなることもあります。

一方で、デジタルデータは簡単にコピーがつくられるといった特性があり、よくアクセスするデータは取り扱いの過程で、さまざまなコピーがつくられます。

例えばパソコンでファイルAというデータを開き、少し手を加えて上書き保存すると、次回、素早く起動できるように、一時ファイルというコピーが水面下でつくられます。

また、パソコン全体でバックアップ機能が働いている場合は、バックアップ領域に旧ファイルAと新ファイルAが残ったりします。

さらに、ファイルAをメールに添付して送信すると、メールソフトにもコピーがつくられ、送信先のパソコンやインターネットの先にある、メールアドレスのサーバーにもコピーがつくられます。

ファイルAをインターネット上にアップロードした場合も、さまざまなコピーが生まれます。

スマートフォンも自動バックアップ機能が有効になっていたりして、マイクロSDカードやインターネット上のバックアップ領域、セットで使っているパソコンのソフトウェア内などにコピーがつくられます。

オフラインデータには、保全と拡散管理の2面の意識が必要になるのです。

オンラインデータ

オンラインデータは、パソコンやスマートフォンなどの情報端末からアクセスすることが多いのですが、オフラインデータとは全く別のインターネット上にあります。

基本的にはサービスを利用する契約があり、そのサービス内にデータが残っているのです。

例えば、故人がFacebookに日記を書いていたとします。

日記が遺品であることは間違いありませんが、日記を掲載しているページ、そのページを利用するアカウントも遺品ということになります。

そのアカウントは、原則的に契約者の生死とは連動しません。

サービスを提供する運営側は、

利用者が健在なのか?

亡くなっているのか?

…を、知る方法がなく、調査することも普通はありません。

Facebookのアカウントを取得する際は、名前やメールアドレス、携帯電話番号が必要になります。

別人を装ったり、なりすましをするのはルール違反ですが、免許証や戸籍謄本といった身分証明書の提供を求められることはありません。

現実に生活している本人と、アカウントを取得した契約者の同一性を裏付ける情報がないため、ページの持ち主が亡くなったとしても、個別の情報を手探りで照らし合わせていくことになります。

20億人以上の利用者、一人ひとりの生死を調べるために、運営元が莫大なコストをかけるわけがありません。

例外は、金融機関のオンライン遺品です。

ネット銀行やオンライン証券の口座を開くには、一般の金融機関と同じように、公的な身分証明書が必要になります。

そのため、契約者の生死と連動することは比較的容易ですが、それでも契約者が亡くなったといって、自動的に口座が凍結されるということはありません。

オンラインのデジタル遺品は、遺族がアクションしないと、その人が生きていた時と、何ら変わらずに存在し続けるのです。

オンラインの世界は無法地帯

放置されたオンラインのデジタル遺品には、サービスを提供する側も能動的には動きませんので、基本的には何も起きません。

ただし一定期間、使用料を支払う定額サービスの場合は、引き落とし口座やクレジットカードが凍結されると、保留期間を経て契約終了となります。

月額契約の動画配信サービスやレンタルサーバーなどは、人知れず消滅するのですが、無料で契約が維持できるサービスは、ストップがかかることはありません。

サービスが提供され続けている限り存続し続け、放置されているホームページやブログは珍しくありません。

問題なのは、誰も管理していない状態だということです。

ブログやSNSページでは、コメント欄に広告まがいの妙な書き込みがついて荒らされたり、アカウントを乗っ取られて悪用されたりする被害が起きています。

ネット口座の預金も、気づかれなければ休眠口座となり、ネット証券にある金融商品もそのままとなります。

しかしFXや先物取引などで負債が発生すると、契約者に支払いの通達が行き、やがて遺族に届くことになります。

デジタル遺品整理のゴールデンルール

デジタル遺品整理パーフェクトガイド

相続サポート

空地・空家の資産化・収益化

生前・遺品整理

デジタルエンディングノート