遺産分割協議は最大の難関

遺産の内容と全ての相続人が分かったら、遺産の分け方を決めます。

これを遺産分割協議といいます。

法律で相続人の遺産の割合は定められていますが、その通りに分けられない場合がほとんどで、遺産分割協議を行う場合には相続人全員が参加する必要があります。

遺産分割協議で遺産の分け方が決まったら、その内容を遺産分割協議書にまとめます。

未成年や認知症の方などが相続人になる場合には、代理人や後見人を選ぶ必要があります。

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遺産の分け方を決める

相続人が確定し、故人の相続財産を相続すると決めた場合には、相続財産を相続人で分割します。

相続財産の分け方には優先順位があり、遺言書があるのであれば、遺言書の通りに財産を分割します。

遺言書がなければ、相続人で遺産分割協議を行なって、話し合いを行います。

なお、相続放棄をした人は、相続人ではないとみなされますので、加わることはできません。

相続分を決めるためには、

  • 誰が
  • どの遺産を
  • どのくらい

…相続するのかを協議して決めます。

協議のルールは、相続人全員が参加することです。

1人でも欠けたら無効です。

そして分割方法は、

  • 現物分割
    家は母、現金は長男、残りの遺産は次男というように、遺産をそのままの形で分ける方法。
  • 代償分割
    一部の相続人が遺産を多く相続したことで、不公平が生じた場合、その相続人が他の相続人にお金を支払うことで調整する方法。
  • 共有分割
    遺産を相続人同士で、持ち分を決めて共有する方法。
    例えば、マンションを母が1/3、長男が1/3、次男が1/3と分けて相続する。
  • 換価分割
    遺産を換金して、得た現金を相続人同士で分ける方法。

…と、複数あります。

遺言書の内容を実行する

検認済み、もしくは公正証書として残されている遺言書がある場合には、その遺言書が有効であることを確認した上で、遺言書に書かれた通りに財産を分割します。

なお、有効な遺言書が2通以上あり、それぞれの遺言書に書かれている内容が矛盾している場合には、故人の死亡日に一番近い時期に作成された遺言書が有効になります。

遺産分割協議

遺言書が存在していない場合には、相続人で遺産分割協議を行い、相続財産の分け方について話し合います。

遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があり、未成年者や認知症の方などが相続人である場合、親権者や成年後見人、特別代理人などが相続人の代わりに遺産分割協議に参加します。

相続人全員が関与しなければ、遺産分割協議は無効になるのです。

未成年や認知症の相続人

相続に対する十分な判断力を持っていない、未成年者や認知症の方が相続人になった場合、遺産分割協議をはじめとした、さまざまな相続の手続きは代理人が行います。

成年後見人になった場合、自分の都合で後見人を辞任することは難しく、選任には注意が必要です。

成年後見人を辞任するためには、家庭裁判所から正当な理由があると、許可を受けなければいけません。

未成年者が相続人の場合

未成年者が相続人の場合、原則は、未成年者の法定代理人である親権者が協議に参加します。

ただし、親権者が相続人になっている場合には、親権者と未成年者の相続人は、利益が相反することになるため、親権者の代わりに特別代理人を選任します。

そして、選任された特別代理人が、未成年者の相続人の代わりに、遺産分割協議に参加します。

特別代理人には、資格は必要ありません。

通常は未成年者との関係や、利害関係の有無などを考慮して選びます。

特別代理人選任の申し立てができるのは、親権者、利害関係のある親族などで、一般的には未成年の子どもの叔父や叔母といった相続権のない親族、または弁護士や司法書士などが選任されます。

特別代理人は、どのような遺産分割協議をしてもいいということではなく、未成年の法定相続分以上の利益が確保される範囲内で、家庭裁判所の承認のもとで、遺産分割協議を行うことができます。

認知症などで判断力を欠いた相続人の場合

相続人の中で認知症などになり、判断力を欠いた相続人がいる場合には、成年後見人を選任する必要があります。

家庭裁判所へ申し立てを行い、裁判所に成年後見人を選任してもらいます。

通常、申し立てには、誰が最も成年後見人にふさわしいのか、候補を書く欄があります。

身内を記載することが多いのですが、相続の場合は財産が絡んでくることもあり、場合によっては身内が成年後見人になることを認めないというケースもあります。

そのような場合には、利害関係のない弁護士や司法書士、社会福祉士などの第三者の成年後見人が選出されます。

人選が適切かどうかの判断は、裁判所が行います。

特別代理人や成年後見人などが行う遺産分割協議では、その未成年者や判断力を欠いた相続人に対して、法定相続分以下の遺産の分割を行った場合、一般的に裁判所は、その遺産分割を認めない傾向があります。

仮に故人が遺言書を残し、成年後見人のついた相続人に遺産は相続させないと意志を表明していたとしても、成年後見人は遺留分の請求は最低限行います。

故人の意志を反映させるのであれば、成年後見人などがついた相続人に対して、一定の配慮をした遺言を残さなければいけません。

まとまらない場合

遺産分割協議は相続人全員の合意がなければ成立しません。

仮に一人でも納得できなければ、改めて話し合います。

それでも話がまとまらない場合には、家庭裁判所で調停を申し立て、遺産分割調停を行うことも可能です。

調停を申し立てても、まとまらない場合には、裁判官が相続財産の分割に対して審判を行います。

上手くいけば、遺産を増やせるかもしれませんが、相手との関係は険悪になり、遺産の10%程度の費用がかかります。

タイムリミット

遺産分割協議には、期限が定められていません。

そのため一度揉めてしまうと、長期化してしまうケースもあります。

一方で、相続税の申告と納税の期限は10ヵ月以内と決まっています。

期限内に相続税の申告が難しい場合は、特例などの税制上の優遇措置を使うことも難しくなります。

遺産分割協議は、デリケートな内容のため、相続人だけで話し合いをすると感情的になってしまい、協議が成立しないケースも多々あります。

困った時には、弁護士、司法書士、行政書士などの第三者の専門家に相談した方が良いでしょう。

相続手続きの専門家に依頼をする場合、法務、税務、ファイナンシャルプランニングなど、多角的な面から検証するノウハウを持つ専門家に依頼することで、自身やご家族にとってベストな選択ができます。

遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議を行った結果、相続人全員が協議の結果に合意できたら、遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議書は、不動産の登記や名義変更、銀行預金の払い戻しの手続きなどでも必要な書類です。

また、合意したはずの分割内容について争うことを防ぐという役割も果たします。

協議で合意した内容を明確にするという意味でも、必ず作成すべきモノです。

作成のポイント

遺産分割協議書に書式などはありませんが、具体的に書くということが重要です。

あいまいに書くことで、トラブルの元になってしまうこともあるからです。

協議の中で話し合った内容と、誰が、何を、どのくらい相続するのかを、明確に書きます。

ポイントとしては、協議後に発見された相続財産を、どのように処理するのかを記載しておくことです。

遺産分割協議書の作成は、自力で作成することもできますが、不備があると新しくつくり直す必要があります。

また、作成した書類への相続人の実印や署名を集めるのは、手間がかかります。

遺産分割協議書は、各相続人分作成して、相続人全員の署名と実印の捺印を行い、相続人全員の印鑑証明書を添付したモノを、各相続人が1通ずつ保管するのが一般的です。

遺産分割協議書の作成で困った場合には、専門家に依頼する方法もあります。

書類の作成は士業に任せるのが現実的で、依頼料は遺産額の0.5〜1%ほどが目安です。

書類の作成なら行政書士、不動産が絡むなら司法書士、相続人の間でトラブルが生じた場合は、弁護士に依頼してください。

遺産分割協議書の記載例

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