相続トラブルの法則
相続争いは、お金持ちの話し。
実は遺産が少ない場合に、起こりやすいのが争族です。
遺産争いで裁判になるケースは、5,000万円以下が全体の75%、4分の3を占めています。
両親亡き後、遺族間でもめ事が発生するケースは後を絶ちません。
円満に相続を終えるには、親子や兄弟姉妹の間で信頼関係を保つことと、前提として、こうしたトラブルの火種を把握しておかなければいけません。
相続のトラブルは、ある程度の傾向や法則があるのです。
目次
相続手続きのスケジュール
相続は原則として、親の死とともに始まります。
- →死亡届の提出
- →葬儀・告別式・火葬・埋葬
- → 各種契約・保険等の解除や請求
- → 遺言書の確認
- → 相続人の範囲を調査
- → 遺産の中身の洗い出し
- → 遺産の評価額を計算
- → 相続するか否かを決断
- → 遺産を分ける
- → 相続税の申告・納付
- → 相続財産の名義変更・相続税の還付請求・税務調査
これが相続に関する手続きの一般的な流れです。
そして親の死後、親が残された遺言書を確認するところから、相続が本格化します。
なぜなら遺言書は、絶対的な力を持つからです。
それ故、遺言書の有無と内容が、その後の相続の流れを大きく変えることになります。
遺言書が見つからない場合は…
- 故人が生前付き合いのあった税理士や弁護士に尋ねる
- 最寄りの公証役場に問い合わせる
- 故人の自宅内を探す
- 故人が使用していた銀行の貸し金庫を調べる
…といった順番で当たる方法があります。
遺言書探しと並行して調べる必要があるのが、相続人の範囲です。
誰がどれだけ財産を受け継ぐことになるかは、相続人の範囲が大きく関わります。
そして遺産の中を精査し、相続人同士で遺産を分けます。
いわゆる遺産分割協議です。
無事に遺産分割が済めば、あとは相続税の申告と納税を終えて、相続の一連の手続きが終了となります。
ここまでわずか10ヵ月です。
意外とタイムリミットは短いので要注意です。
相続最大のヤマ場
遺言書が残されていて、無事に家族の手に渡り、そして法的にも内容的にも遺言書に問題がなければ、その遺言書通りに遺産分割を行うことができます。
しかし、遺言書がなければ、法定相続人同士による遺産分割の話し合いが必要になり、これを遺産分割協議と呼びます。
法律によって、定められている法定相続分通りに分割ができればスムーズにいきますが、単純に分割できない種類の遺産もあれば、個々の希望や思惑も異なるのです。
そのため、法定相続分通りに分割できない事態が起こり、話し合いが必要になります。
法定相続人同士が、遺産分割協議で妥協ラインを探るのです。
そして相続が、争族となる可能性が、最も高いフェーズと化します。
この家族会議で全員の同意を得られれば、遺産分割協議書を作成して、内容を確認した上で実印を押し、晴れて協議成立となります。
しかし、問題は相続人全員の同意が必要となることです。
一人でも異を唱えると、協議が不成立に終わり、相続が争族になってしまい、協議自体が棚上げとなるか、家庭裁判所に遺産分割調停の申し立てをすることとなります。
そのため、いかに遺産分割協議で相続人全員の同意を得られる分け方を模索するかが、一連の相続手続きを終えるカギとなるのです。
そして合意内容に基づいて、最後は遺産分割協議書を作成しなければいけません。
作成自体は、自筆証書遺言と違って、手書きでもワープロでもOKです。
故人の本籍と最後の住所、氏名、死亡年月日、遺産分割協議で合意された遺産分割の結果を記載します。
相続人全員の住所、氏名そして続柄、それぞれの実印を押して完成です。
相続人全員の数だけ原本を作成し、各相続人がそれぞれ保管するとよいでしょう。
遺産分割協議の分け方は4つ
遺産分割の方法は、4つに大別できます。
現物分割
遺産をそのままの形で分配する方法です。
例えば、妻には自宅と預貯金、長女には駐車場、次男には株式といった具合です。
ただし、このやり方はどちらかといえば資産家向きで、自宅しか財産がないような、ほとんどの人には当てはまりません。
代償分割
不動産などの分割しにくい遺産を、現金などを代わりに用いるやり方です。
例えば、特定の相続人が自宅など高額だが、簡単に分けられない財産を相続したことで不公平が生じた場合、その相続人が他の相続人に、手持ちのお金を支払うことで調整を図ります。
代償を支払う相続人に、手持ちの預貯金がなければ、分割払いにすることもできます。
換価分割
4つの中で最もシンプル分け方です。
自宅など遺産を売却し、現金に換えて分配することです。
しかし自宅の場合、その家に母親が住んでいるなど、売るに売れないことも多く、分かりやすいとはいえ、このやり方のハードルは高いものです。
また売却した際には、所得税や住民税などの譲渡税がかかるため、財産を目減りさせてしまうリスクもあります。
共有分割
遺産を複数の相続人で共有する方法です。
例えば、自宅兼店舗などの不動産を、配偶者と長男、次男でそれぞれ1/3ずつなど持ち分を決めて共有するのです。
分かりやすい上に、平等かつ譲渡税もかからないため、よく選ばれる方法ですが、この方法もデメリットがあります。
不動産などの場合、相続人の一人がしばらくして売却したくても、共有する相続人の反対で売るに売れないといった、後々の争族を招きやすいのです。
遺産や負債の詳細が分からない場合の対処法
まずは遺品から、財産や負債の状況を探っていきます。
通帳やカード、郵便物などから取引のありそうな金融機関や負債の痕跡を探します。
自宅周辺の金融機関や大手の銀行を、当たるという手もあります。
相続人は、通帳などがなくても取引の有無を調べ、残高証明書や取引履歴を取得することができます。
通帳や取引履歴から株の配当や賃料などの収入、固定資産税や借金の返済などの支出をチェックして、金融資産や不動産などの財産と負債を探すことができます。
不動産は自治体で「名寄せ帳」を取得することで、その自治体内にある所有不動産を確認できます。
負債は、信用情報機関に照会することで、ある程度調査することもできます。
なお、負債が資産を上回る、あるいはその可能性がある場合は、相続放棄の検討も…
相続放棄は、原則として相続発生の事実を知ってから、3ヵ月以内に家庭裁判所で行う必要があります。
3ヵ月以内に、放棄するか否か決め切れない場合は、期間の延長を申し立てることも可能です。
兄弟が父の預金を使い込んだ!
1,000万円あった亡父の預金を、亡くなる直前に姉が勝手に200万円引き出して使い込んだ場合、基本的にはお姉さんだけ取り得にはなりません。
お父さんに無断で200万円を引き出しているので、生前お父さんはお姉さんに対して、不当利得返還請求権を持っていたことになります。
預金残高800万円と不当利得返還請求200万円分で、相続財産は総額1,000万円となり、あなた取り分はその半分の500万円、お姉さんは残りの300万円という計算になります。
同性カップル相続の実態
日本ではまだ同性同士の結婚が法律で認められていないため、結婚している男女カップルのように配偶者として互いの相続人にはなれません。
パートナーに全財産を遺贈するとの遺言を書いて備える方法はありますが、
また兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分という一定の割合の相続財産を確保する権利により、遺留分を侵害した分を請求される可能性もあります。
また結婚して配偶者になることができないことで生じる相続問題を回避するために、養子縁組という方法もあります。
この方法で法的に親子となれば、相続人になることができますが、他の相続人から、養子縁組は親子になる意思の下に結ぶもので、財産を得る目的で行った養子縁組は無効だと主張されるリスクもあります。
そして同性婚が認められるようになった際に、養子縁組で親子関係になったことが結婚できない理由となる恐れも指摘されています。
さらに、同性パートナーは法律上の配偶者ではないので、配偶者控除など配偶者ならではの税額軽減措置が使えないどころか、被相続人の配偶者でも1新等の親族でもないため、相続税が2割加算になってしまうのです。
同性カップルは、相続の場面で極めて不安定な立場にあります。