身元保証等高齢者サポート事業が安心できない理由

住まいを借りるとき、入院するとき…

人生の大事な場面で、保証人を要求されるのが、日本の世の中です。

結婚し、家族がいるのがあたり前の時代が終わろうとして、頼りにできる身内がいないからこそ有料老人ホームに入居を決めたのに…

そこでまた保証人が必要なんて…

そんな切実なニーズを受けて、増えているのが、身元保証に生活の支援、死後の葬式をまとめてサービス提供する代行業者です。

それが今、社会問題になっているのです。

10万円のお葬式

10万円ホーム

「家族の代わり」で消費者被害

インターネットで「高齢者 身元保証」で検索すると、身元保証、暮らしの支援、万一の支援、葬儀・納骨支援を請け負う団体やNPOが数多く出てきます。

「利用者の方を生涯に渡ってサポート」「家族のような立場で暮らしを支援」「安心できるシングルライフのために」「ひとりぼっちにさせません」など、うさんくさいコピーがならんでいます。

おひとりさまの人生に伴走する究極の保険外サービスは、全国で100社ほどにのぼるとみられています。

ただし、今のところ、全容は不明です。

もちろん良心的に取り組む事業者もあり、一方で、最近急速に増えているのが、弁護士や司法書士、税理士などの専門家が運営する事業者です。

提供するサービスは、身元保証や日常生活支援、死後事務とほぼ共通しています。

加えて、金銭管理や遺言作成、任意後見を引き受けて、全国展開するところも多く、事業者の形態も一般社団法人、NPO法人、株式会社、社会福祉関係者などさまざまです。

時代のニーズに併せて、入居や入院時の身元保証、安否確認など、死亡前支援にまでを生前契約という形で、有償で行っています。

介護保険が始まり、家族の役割を他人に託すことへのハードルが下がり、社会の情勢に合わせて拡大しています。

2035年には3人に1人が高齢者になり、都市部ではそのうち4割以上が一人暮らしという、脱「家族社会」をどう目指すかが問われる中、指導監督する官庁もなく、リスクもあり契約には注意が必要です。

公益法人の乱脈経営

身元保証サービスの問題を明らかにするきっかけとなったのが、公益財団法人日本ライフ協会の経営破たん事件でした。

国が関与する公益法人なら安心と考えた利用者を裏切ることとなりました。

この事件がきっかけで、身元保証や死後事務に関するトラブルが明るみに出たのです。

監督省庁がないまま実態だけが先行し、急速に広がりましたが、以前からこうしたサービスは提供されており、高齢化が進む中、今後も一定程度求められることは間違いありません。

そして、行政だけが事業を担うのも限界があり、安心して利用できる仕組みづくりが急務なのです。

あなたが死んだ後に、契約したサービスが本当に提供されるのかは、どんなに頑張っても自分で確かめることはできません。

これを契約でどう担保するのか?

…ということが、事業者選択の大きなポイントになります。

かかる費用については、あらかじめ支払っておき、サービス提供時までは「預託金」として手をつけない扱いとするのが建前ですが、この事件では直接同協会が管理をしていたのです。

ただし、お金にあなたの名前をつけることはできませんので、常に流用の危険はあるのです。

この事件は、代表理事をはじめ、役員幹部の知識や倫理観が欠如していたがために、起きてしまったともいえますが、公益法人の監査は毎年行われているわけではなく、チェックの問題もありそうです。

そもそも弱みに付け込んだサービスであり、サギのネタは尽きません。

複雑なサービス内容

具体的に提供されるサービスの例としては、

・身元保証では、病院や施設に入る際の入院費や施設利用料の保証、賃貸住宅に入る際の賃料の保証、入院・入所する際の手続きの手伝いなど。

・日常生活支援は、緊急時の親族への連絡、買物の手伝い、病院や施設に行くときの送迎や付き添いなど。

・死後事務は、病院や施設等で亡くなった後の費用精算代行、遺体の確認・引き取り、今まで住んでいた部屋の原状復帰、葬儀や納骨、法要の支援などです。

定額で提供されるのが、身元保証、日常生活支援、死後事務の3サービス。

家の片づけや法要の支援などがオプションです。

定額部分は、入会金や会費、事務管理費用等のほか、死後処理費用分の預託金となっています。

パッケージ式は便利ですが、サービスの内容が多岐に渡り、契約はかなり複雑になります。

ある事業者では契約にあたって5つの契約書と公正証書が必要になり、真面目に契約しようという事業者ほど煩わしいということになり、そこにも落とし穴がありそうです。

日本ライフ協会のサービスは、パッケージ型の身元保証サービスでした。

入会時に終身会員か月額会員かを選び、終身の場合は一括で身元保証料を払います。

死亡前の支援、死後の葬儀については、契約時点では、サービスが発生していないため、預託金として預けておく仕組みです。

一括払いの総額は約165万円。

うち預託金は57万円。

預託金を流用し、不良債権化したことで経営破綻しました。

事業者選びのチェックポイント

何を安心の材料にすればいいのか、消費者には見極めが難しい状況と言えるのでしょうか?

しかし、選ぶ側も「目」を鍛える必要がありそうです。

そこで現時点で、身元保証等サービス事業を利用する際の注意を3つほど、ご紹介します。

まず契約する際に、契約内容をしっかり確認しなければいけません。

例えば、解約する際にはいくら返金されるのかを確認します。

また、多くのサービスを一度に契約することが多いので、このサービスの価格はいくらなのかなど、サービスと費用の関係をきっちり把握することです。

どんぶり勘定にせずに、納得できるまで聞いてください。

2つ目が、預託金について…

死後事務サービスを受ける際は、預託金という形であらかじめ、事業者に何十万というお金を預けることになります。

預託金は第三者に預けるなど、きちんと保全措置がとられているか確認することが重要で。

そして3つ目が、サービスを契約した後に、契約通りにサービスが提供されているか?

第三者がチェックする仕組みになっているかどうか?

…という部分です。

こうしたサービスは、元気なうちに契約することが多いのですが、判断能力が衰えても契約どおり提供されるのか?

あなたが死んだ後、希望した葬儀が行われるのか?

チェックの仕組みがなければ、確認のしようがありません。

だからこそ、事前に確認しておくことが重要なのです。

ようやくたどりついた最後の安心の梯子を、外されることがないように…

身元保証人はいらない?

身元保証人は本当に必要なのでしょうか?

2013年の調査によれば、身元保証を求めているのは介護施設で91.3%、病院は95.3%に上るといいます。

最も多い理由が緊急の連絡先で、次が費用の支払いの確保、ケアプランや入院計画書の同意、遺体・遺品の引き取りです。

しかし、身元保証人等がいないことは、入院・入所を拒否する理由にならないのです。

医師法第19条では「医師は診察治療の求めがあった場合は、正当な理由がないと拒んではならない」とされており、保証人がいないことは、これに該当しないというのがその理由です。

同じく施設については、各介護保険施設の基準省令で、正当な理由なくサービスの提供を拒んではならないとされています。

民法には「契約自由の原則」というものがあり、当事者間で自由に定めてよいということになっています。

そして、契約するにあたって、保証人を設定するか否かも当事者間で自由に決めてよいのです。

しかし、医療機関や福祉サービス事業所における契約にまで、この契約自由の原則を貫いた場合には、必要な医療や福祉サービスが提供されないおそれも出てきてしまいます。

患者や福祉サービス利用者は弱い立場なので、資力があるにもかかわらず、保証人がいないことを理由に契約を断られたとしても、訴えることはできず、泣寝入りのように、保証人をつけざるを得ないのが一般的です。

病院や施設側が「保証人がいなくてもOK」という対応をすれば、問題はないのです。

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