不動産の相続手続き
家や土地などの不動産を保有している人が亡くなって不動産を相続する場合には、登記の手続きが必要です。
不動産を売却して換価する場合であっても、一旦不動産の名義を相続人に変更してから行います。
名義変更をするには、不動産を管轄する法務局に、必要書類と登記申請書を提出します。
不動産の相続は、不動産の調査から登記までかなり手間がかかりますので、プロである司法書士にお願いするのが良いかもしれません。
その場合、登録免許税とは別に、報酬として5万円〜の費用がかかります。
不動産の相続方法の決定
まず、不動産の名義を誰にするのかを決めます。
故人が遺言書を残していた場合には、原則、その内容に従います。
遺言書がない場合は、遺産分割協議を行い、不動産を引き継ぐ人が決まったら、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議がなかなか決着しない場合は、法定相続分による相続人全員の共有財産として登記することもできます。
不動産の登記申請
相続の方針が決まったら、必要な書類を揃えて、不動産の所在地を管轄する法務局に所有権移転の登記申請書を提出します。
登記の申請書は所定の用紙がないため、記入ルールに従ってA4の紙に自分で作成します。
法務局のホームページに掲載されているひな型を使って、パソコンなどで作成することも可能です。
期限 | 期限はないが速やかに |
手続き先 | 不動産の所在地を管轄する法務局 |
手続きする人 | 不動産を相続する人 |
必要なモノ |
|
費用 | 登録免許税(不動産の評価額の0.4%) |
不動産を法定相続分を超えて取得した場合
法定相続分を超える相続は不動産ごとに登記が必要です。
遺言や遺産分割協議などで、法定相続分より多い割合の遺産を取得した場合、その遺産ごとに登記の手続きが必要です。
遺言で不動産を100%取得した相続人Aさんがいた場合、Aさんが登記を行う前に、事情を知らない第三者Bさんが他の相続人Cさんから遺産の法定相続分を譲り受けて、先に登記をしたとします。
この場合、先に登記をしたBさんの権利が優先されます。
Aさんは、法定相続分を超えて遺産を取得したことをBさんに対して主張できなくなります。
ただし、Aさんが遺産を取得して登記を行っていれば、このような問題は起こりません。
遺産を取得していない他の相続人が、事情を知らない第三者Bさんに、その遺産の法定相続分を譲渡した場合でも、Aさんが登記を済ませていれば、法定相続分を超えて遺産を取得したことを主張することができます。
登記を怠って、遺言執行者がいることを知らない第三者が権利を取得してしまった場合、遺言執行者には損害賠償責任が発生することもあります。
ちなみに、預金口座などの債権を単独で承継した場合も金融機関などの債務者へ遺産分割協議書や遺言書を明示した上で、承継の手続きが必要です。
不動産を換価する場合
相続人の全員が取得を希望しない不動産がある場合などは、まず代表者一人の単独名義で相続登記を行い、その後で不動産を売却し、換金して現金として分ける換価分割を行います。
不動産を換価分割する場合には、遺産分割協議書に代表相続人が相続登記をし、その後で換価分割するという旨を明記する必要があります。
この記載が無かった場合、換金後に他の相続人に現金を分ける行為が遺産相続と認められないこともあります。
遺産相続として認められない場合、現金を分ける行為が贈与と判断されて、贈与税が課税されるため注意が必要です。
登記の期限
相続登記には期限はありませんが、相続した不動産の名義を故人の名義のままにしておくと、事実上その不動産は相続人全員の共有物とみなされます。
共有している相続人が一人でも亡くなると、相続権が新しい相続人に承継されることになりますが、その場合、権利関係が非常に複雑になり、不動産を処分する場合などに、全員の同意を得ることが難しくなるといったトラブルが生じます。
不動産を相続した場合には、名義変更は必ず早い段階で行うようにしましょう。
登記が完了すると、所有者となる人に対して、登記識別情報通知が発行されます。
登記識別情報通知を受け取ったら、名義変更は完了です。