相続をサクッと解説
相続とは、死者が生前に持っていた財産上の権利や義務を、一定の遺族が受け継ぐことです。
また、受け継がれる財産などを相続財産と呼びます。
相続財産は、遺産とも呼ばれ、土地や家屋、金銭といった財産に限らず、借金などの義務も含まれます。
相続は、使われる用語が特殊なため、一つ一つの言葉の意味を、曖昧にしたまま知識を得ようとしても、なかなか理解できません。
そのように、難解な印象が強い相続を、サクッと解説します。
目次
相続とは
相続とは人が死亡した場合に、被相続人の財産上の法律関係が、一定の身分関係にある者に包括的に承継されることをいいます。
つまり、人が亡くなったときに始まり、亡くなった人が生前に持っていた財産を遺族が受け継ぐことです。
その死亡には、失踪宣告による死亡みなしも含みます。
そして包括承継といわれるのが、相続における承継形態です。
売買や贈与で財産権が移転する承継形態のことを特定承継といい、包括承継と特定承継は、承継形態としては種類の違うものです。
相続回復請求
相続人が、相続人らしき者が財産を持っていってしまった時に、取り返すという権利です。
相続の対象となる財産
相続人は、相続開始時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するのが原則です。
ただし、被相続人の一身専属権、例えば終活カウンセラーの資格なども含めて、その人限りの権利は、相続の対象にはなりません。
- 死亡保険金は相続財産に含まれませんので、相続対策で生命保険が使えます。
- 身元保証は特別の事由がない限り、身元保証人の死亡によって消滅します。
身元保証というのは、その保証される人の信用など、広いものを保証するということで、保証人の責任が相当重いので、相続はされません。
しかし、身元保証人が死亡する前に既に発生していた損害賠償債務など、債務が発生していて定まっているのであれば相続の対象となります。 - 定期贈与の当事者の地位は、一方の当事者の死亡によって効力は消滅します。
使用貸借の借主の地位、委任契約の当事者の地位は、当事者が亡くなることによって消滅します。 - 被相続人が土地賃借人であった場合、その相続人は賃借人の死亡によって占有権を相続します。
- 不法行為の被害者が亡くなったときに、生前に請求の意思を表明していなくても、慰謝料は相続されます。
- 既に具体的な金銭債権として発生している扶養料請求権は相続の対象となります。
扶養を受けられる権利自体は一身専属的なものですが、その権利が抽象的なレベルから具体的な金銭債権になっているのであれば、相続財産になるということです。
相続分の修正
特別受益と寄与分、いずれも趣旨は共同相続人、複数の相続人の間のバランス、そして被相続人との調整を図るということです。
特別受益
共同相続人の中で被相続人から遺贈を受け、又は婚姻及び養子縁組のため、もしくは生計の資本として贈与を受けた者を特別受益者といいます。
そして、相続開始時の財産の価額に、その贈与の価額を加えたものを相続財産とみなします。
つまり、相続開始前に相続分をある程度先取りで、貰ったということです。
相続開始の時点において、生前に貰っていた分を相続財産の中に一度組み込んで、元に戻す形をとって分けるということです。
そして、相続人が受けた贈与の総額の中には、遺贈は入っていません。
遺贈というのは、相続財産の一部を構成するものですが、ここで問題とする相続財産の中に持ち戻すべき財産は、相続開始前に外に出ていってしまい、本来であれば相続財産としてカウントすべき贈与の対象財産ということになります。
寄与分
被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護、その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について、特別の寄与をした共同相続人があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなします。
例えば、長男がお父さんの会社で、お父さんの財産の増加にものすごく貢献した。
だから兄貴の分は「プラスα」するべきだ。
そのプラス分を兄貴のために取り分けて、それ以外の財産を兄弟で分ける。
そして取り分けておいた「プラスα」を兄貴の財産に加えていいよ。
…というものです。
特別受益はプラスするのに対して、寄与分は、相続開始時の財産の価額からマイナスします。
これは、共同相続人になることが前提ですから、内縁の妻なり、長男のお嫁さんなどは、相続人ではないため含まれません。
また、相続人の地位を失った者も、当然含まれません。
相続分の譲渡
相続人の地位を第三者に譲り渡すことです。
他の共同相続人が、それは困るというときには、譲り渡しの時から1カ月以内であれば、その相続分を譲り受けることができます。
熟慮期間
あなたは相続することを認めるか?
あるいは相続自体を否定するのか?
…を判断する熟慮期間が設けられています。
それは相続の開始があったことを知った時から3ヵ月です。
その3ヵ月以内に相続をするのか?しないのか?の判断をしなければ、単純相続みなしということになります。
相続人の立場で、引き継ぐことを認めたと扱われます。
それで問題ないならよいのですが、例えば、お父さんが借金まみれなどの場合、相続放棄を検討することがあります。
そのような検討をするにあたって、許された期間が3ヵ月です。
その3ヵ月の数え始めは、被相続人の死亡というその事実を知って、あなたが相続人となったことを知った時からです。
承認及び放棄の撤回、取消しの可否
なお、相続の承認及び放棄は、撤回することはできません。
しかし制限行為能力者、詐欺又は強迫などの場合は取消しができますが、これも時間的な制限があります。
単純承認
これは普通の相続のことです。
そして法定単純承認というものがあり、相続をどうしようかと迷っている間に、相続財産の全部又は一部を処分した場合、それは相続人になることを前提にしているということで、単純承認とみなされます。
それから、熟慮期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったときです。
つまり3ヵ月間、ほったらかしにしたときです。
そして、相続財産全部又は一部を隠匿、あるいはひそかに消費、悪意で相続財産目録に記載をしなかった。
要するに、悪さをした場合です。
限定承認
限定承認とは、相続によって得た財産の範囲内でのみ相続債務及び遺贈を弁済し、相続人の固有財産による責任を負わないことです。
つまり相続財産のプラス財産の限りで、弁済をするなどの対応をします。
つまり、相続人自身のふところを痛めることまでは、しないということです。
そしてこの限定承認は、共同相続の場合は、共同相続人全員でしなければいけません。
相続放棄
相続を拒否する単独行為です。
限定承認もそうですが、相続放棄も家庭裁判所に対してその旨を申述しなければいけません。
しかし、相続放棄をあらかじめ行うことできません。
遺留分の放棄とは扱いが違います。
共同相続の場合でも、各相続人は単独で相続放棄することができます。
相続放棄をした者は、その相続に関し、始めから相続人とならなかった者とみなされます。
そして相続放棄は、代襲相続の原因にはなりません。
相続人の不存在
相続人が相続放棄を順番にしていって、結局、誰もいなくなり、相続人不存在の場合は、相続財産管理人というものが立ちます。
相続財産が法人化されて、暫定的な人格をつくるというただそれだけのことです。
相続財産管理人が家庭裁判所に選ばれて、財産を管理し、処分します。
また相続人がいない場合、被相続人のために生前いろいろ尽力したという人には、相続財産がその人のものになる、特別縁故者に対する財産分与というものがあります。
例えば、内縁の妻などがあたる可能性がありますが、ケースバイケースです。
また、相続人がいない時、その相続財産が共有持分のときには、その持分が他の共有者に弾力的に帰属しますが、特別縁故者がいる場合、どちらが優先されるのでしょうか?
判例では、特別縁故者を優先するとなっています。