死後ケアの令和スタンダード

亡くなられた患者さんのご家族は、臨終直後の対応に関する情報がほとんどありません。

死亡宣告をされた人の代理をする、家族のサポーターである私たちは、必要なことをわかりやすく説明し、その上でご家族に、どうしてほしいのか?…を、考えます。

声かけや説明の言葉に、私たちのスタンスや配慮が反映されますので、私たちケアする側の考え方をしっかりと理解することで、ご家族のさまざまな疑問点に、答えることができるのです。

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ご家族の心身負担

病人の世話をし、看取り、おくる。

それらを行う、ご家族の心身負担を考える際には、次のような現代の傾向を加味する必要があります。

負担を分担する家族人数が少ない

家族の人数が少ないので、労力や金銭などを多人数で分担できず、1人当たりの負担が大きくなります。

当人と別に、場合によっては遠距離に住んでいる

遠距離に住んでいると、面会するにしても大仕事になります。

重体のときに駆けつけるのも、臨終のあとのご遺体の搬送なども、さまざまな負担が大きくなります。

経験がない、助言者が少ない

核家族化で近親者を看取り、送るのが、初めての経験であることが多くなりました。

地域の共同体の消失によって、近所のご意見番のような存在がいなくなり「こうするものだ」という助言や「それでいい」と断言してくれる人もいません。

また、かつては地域の共同体が、通夜や告別式の準備や進行を担ってくれましたが、それが無くなったため、ご家族が、葬儀業者のサービスを受けながら進めるようになりました。

葬儀業者からサービスの案内を詳細に受けたとしても、その選択に不安と迷いが伴うことになります。

本人に代わって難しい判断をする

存命中でも、本人が判断できない状態になると、

手術をするかしないか?

在宅か入院か?

延命はどうするか?

臓器提供はどうするか?

…などなど、本人に代わって家族が、悩みながら難しい判断をすることになります。

それは後々「あれでよかったのだろうか?」という疑問や不安を残す場合があります。

このような状況から、臨終を迎えたときには、心身を消耗し尽して、ヘトヘトというご家族もいらっしゃいます。

とはいえ、大家族と地域の共同体が機能していたころの方が、楽だったのかといえば、そうとは一概に言えないでしょう。

大変さの質が変わっただけで、昔はさまざまな、わずらわしさがあったことは想像できます。

ただ、今よりも、看取り、送る実務への不安は、少なかったのは確かでしょう。

令和の死後ケアの役割

時代の変化で直送サービスを、選ぶご家族も増えているようです。

要因は、価値観の多様化や不況などが、関係しているとされています。

直葬とは、葬式をしない葬儀のことで、通夜や告別式を省略し、火葬のみを行う形です。

直葬の是非はさておき、死後ケアを考える上で注目したいのは、通夜・告別式を行うときと比べて、直送は圧倒的にご遺体と接する時間と機会が少なくなることです。

通夜や告別式を営む時間の中で、ご家族は顔を見ながら身内で話したり、場合によっては化粧を直したり、冷たくなった肌に触れたり、手の位置を直したり、何かを話しかけたり、遺影と最期の顔を見比べたり…など、悲嘆を表出する機会やきっかけを、得た人もいたのではないでしょうか?

直葬のような動きが増えていることは、死後ケアの有り様を検討することも大切なのかもしれません。

死後ケア時に行うべき対策とは

死後ケア時に行いたい臭気対策は、口腔と目です。

これまでの口や鼻への綿つめは、身体内の腐敗臭の拡散を防ぐ目的で、行っていた部分もあるようです。

しかし帰宅後、早い段階で問題になるのは、身体内の腐敗臭ではなく、口内や眼内の汚れがもとになる臭気です。

死後ケア時に行う歯磨きは、できる範囲で、口腔内の汚れを取る対応でよいでしょう。

また眼内の汚れも、臭気の元になることがありますので、綿棒で目元を拭うか、水で眼脂を洗い流すのがよいでしょう。

死後ケア時に冷却を行っても、帰宅後時間が経つと、残念ながら身体内からの腐敗臭が、生じることがあります。

その臭気については、葬儀関係業者に対応を任せます。

葬儀関係者は、強く硬直が生じていても、ご遺体の手足や口元を動かす技術と経験を持っています。

帰宅後に、衣服を宗派に合わせた着方に替えたり、湯かんサービスを行うなど、死後ケア時に整えたご遺体を葬儀関係者が整えなおすケースが少なくないようですが、硬直があっても対応できるそうです。

遺体の変化を実感しにくい時代

現在は一般に、死後の身体変化を目の当たりにする機会がとても少なく、それを実感しづらい状況です。

理由としては、次の点が上げられるでしょう。

  1. 隣組など近所の助け合いシステム(地域の共同体)の消失
    近所同士の協力システムがあったころには、そのうちの誰かが亡くなったら、皆で集まって通夜や告別式の準備・運営・片付けなどを手伝ったため、ご遺体に接する機会が多少はありました。
    しかし現在はそのシステムのほとんどが失われ、遺体に接するのは、家族の死がはじめてというケースが多いのです。
  2. 核家族化
    核家族化により、祖父母の死に際して、遺体に接する機会が少なくなりました。
    また、近所の助け合いシステムの経験を持つ、高齢者が同居しておらず、遺体が変化しても「そういうものだ」と教えてくれる人がいません。
  3. 目にふれないように配慮される
    現在は遺体の変化が、なるべく人の目にふれないように配慮されています。
    例えば、告別式の最後に行われる「お別れの儀」では、参列者が会うのはきれいに整えた顔のみです。
    顔はきれいに整えられていても、着物や花でカバーされている身体には、皮膚の変色などが起こっています。
    しかしそれは、目にふれないよう配慮がされているので、変化を実感しにくいのです。
    腐敗によって生じた水分やガスによって、体腔内圧が高まるため、棺の蓋にふれるほどの腹部膨満が生じるケースもあります。

以上の理由で知識としては、遺体が変化することを知っていても、実際に亡くなった家族の体の変化に接すると、驚いたり不安になったりするのです。

喪失の直後で、平静ではないことも加わって、困惑・混乱してしまいがちです。

ご遺体は自然にさまざまに、変化するものであることを伝える役割を、今後はケアする立場の人がしっかりと担っていく必要があります。

人工肛門・胃ろう・ペースメーカーをどうするか?

腸管内の腐敗とは違い、人工肛門の排泄孔の表在部分やその付近では、好気性細菌が関与して、比較的早くから腐敗・変色が起きます。

それによって水分が生じるため、まず表在部分とその周辺の清拭・消毒をし、次に蛋白質固定効果のある薬剤やホルマリン固定液やグルタルアルデヒドなどの製品を、表在部分に塗布したのち、縫合することを遺体管理の専門家は勧めています。

人工肛門

縫合を行うかどうかも含めて、医師の責任の範囲として、医師が直接ご家族の意向を聞いて、対応を決定するのがよいでしょう。

ただし選択肢は、

  1. バッグをこれまでどおりに装着したままにする
    排泄孔を消毒・清拭したのち、新しいバッグを装着し、その後も必要に応じてバッグ交換を行っていただく説明をします。
  2. ⒝バッグはつけない
    消毒・清拭の後、縫合し、その上にドレッシング材を貼って密閉します。
    縫合をしない場合は、消毒・清拭後にドレッシング材で密閉するという対応でよいのではないかと思います。
    なお、ドレッシング材は、その後の腸内のガスの増加によって剥がれてしまわないように、できるだけ広い面積に貼付したほうがよいようです。なお、人工肛門のバッグは火葬に問題ありません。

胃ろう

器具を取り去るのかどうかなど、対応の基本姿勢を医師とあらかじめ決めておき、医師がご家族の意向を聞いた上で対応してください。

胃ろうは、排泄のための人工肛門と違い、食事を入れていた部分なので、ご家族にさまざまな思いがあることを留意して、意向を伺う必要があると思います。

なお、胃ろうに使用する器具は、火葬に問題ありません。

ペースメーカー

ペースメーカーについては、これまでは担当医が切開して、取り去っていたところが多いようです。

しかし最近では亡くなってまで、身体を切りたくないと希望されるケースが出てきており、そのご希望に沿う場合もあるそうです。

ペースメーカーは火葬の際に、熱によって破裂しますが、ご家族がご覧になる前に、火葬場の担当の方が破片を取り去ってくれるそうです。

地域によっては、ペースメーカーは、病院で取っておいてほしいとする火葬場もあるようですから、あらかじめ火葬場あるいは葬儀社の方などから情報を得ておく必要があります。

以上についての医師による確認のタイミングは、死亡宣告の直後ではなく、お別れの時間が終わったあとから保清ケアに入る前あたりがよいでしょう。

死後ケアのシナリオ

死後ケアとは保清や身だしなみを整えることですが、声かけや説明の言葉に、私たちのスタンスや配慮が反映され、ケアする側の考え方をしっかりと理解する必要があります。臨終直後の情報のないご家族に、わかりやすく説明し、その上でご家族にどうしてほしいのか?…を考え、ご家族のさまざまな疑問点に答えることが大切です。「死後ケアのシナリオ【令和版】」は、死後ケアの流れや配慮すべき点を、声かけと説明例でご紹介します。

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