デジタル遺品整理のゴールデンルール

デジタル遺品に対峙するために、集めた断片から故人がどんなデジタル遺品を持っているかを調べていくことになりますが、確認しておきたいことが2つあります。

そして作業を進める上で重要な、デジタル遺品の優先順位、対応したいデジタル遺品リスト、デジタル遺品の種類と処理、個別の処理方法、その中でも、最優先で処理しなければいけないモノは何か?

デジタル遺品を整理する前に知っておくべきゴールデンルールをご紹介します。

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不正アクセス禁止法

ンターネットなどの通信を使う際のルール違反を防ぐための法律を「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」といいます。

1999年につくられて、現行は2013年改正版です。

故人が契約したサービスに、故人のパスワードを使い、故人になりすましてアクセスするのは、たとえ遺族であっても同法に抵触する怖れがあるのです。

しかし、通信上の行為に関する法律なので、オフラインであれば関係ありません。

故人が設定したパスワードを入力して、スマートフォンを開くことは問題ありません。

また、ダウンロード済みのメールやメッセージを、閲覧したりするのも構いません。

そして、遺族による緊急措置の範囲内であれば、故人のアカウントでログインする行為を黙認するサービスは多く、家族でアカウントを共有できるサービスは全く問題がありません。

また生前に故人から、アクセスすることを承諾する意思表示が、何らかの形で残っていれば、同法違反にあたらないという解釈もあります。

従って不正アクセス禁止法により、デジタル遺品処理ができないということはありません。

しかし常識から考えれば、故人のアカウントのまま、ログインし続けるという行為はいけません。

全て家族の責任

遺族がデジタル遺品に触れるのは、問題はありません。

しかしデジタル機器を扱うのが不得手という場合に、親戚や知人にお願いすることもあるでしょう。

その場合は、作業する人に与える負担と遺族が抱えるリスクを念頭に置く必要があります。

そのデータは、どれくらい重要なのか?

作業する人は、デジタル機器の操作に長けていても、遺族にとって、どのデータがどれくらい重要なのかは分かりません。

故人と遺族の関係性を詳しく知らない場合、見つけた遺品の中で、そっとしておいた方がよいモノと、そうでないモノの区別が難しいのです。

例えば、趣味でアニメのキャラクターのコスプレをしている写真が出てきたとき、家族公認なのか?

秘密の趣味なのか?

…などを、前知識なしに判断するのは至難の技です。

デジタル遺品は、デリケートで繊細です。

処理の全てを任せてしまうと、気遣いのできる人ほど心労がかかり、大雑把な人だと意にそぐわない処理を、勝手にしてしまうということも起こり得ます。

また、作業の過程でデジタル機器が壊れてしまったり、大事なデータが誤って消去されてしまうこともよくあります。

そのような時に、責任の所在が曖昧な場合、人間関係に傷がついてしまうこともあります。

トラブルを避けるために、遺族が脇について細目にやり取りしたり、作業を任せる場合は、最悪のケースを想定して、機器を託すといった姿勢が重要になります。

有料ですが、デジタル遺品対応の専門サービスに頼むこともできます。

優先順位をつける

この世に残っている全てのデジタルの痕跡を保管したり、消去したりするのは、労力的にも技術的にも不可能です。

ピンポイントで重要なモノや、重要そうなモノをピックアップして、必ず対応したいモノとできれば対応したいモノの2種類を対象にします。

必ず対応したいモノ

金融資産

必ず対応したいモノの典型例は、ネット銀行の口座や株などの金融資産です。

遺族にとっては見つけにくい存在ですが、法的には一般的な預金口座や金融資産と、何ら違いがありません。

存在に気づかないままにしていると、そのまま放置されることもありますし、遺産分割協議が完了した後に気づき、相続をやり直すということも考えられます。

また、FXや先物取引などの証拠金取引は、負債にもなり得ますので、注意深く調べなければいけません。

進行中の共有物

仕事の取引やプロジェクトの途中で亡くなった場合、個人持ちのデジタル機器に進行中の重要データが残っている可能性があります。

葬儀の際などに、仕事仲間に話を聞くことは欠かせません。

対外的なリスクに加え、身内や周囲に迷惑が及ぶモノの処理も必須です。

通信契約

家族で共有しているインターネット回線の契約者が故人の場合は、引き落とし口座やクレジットカードの凍結の後に、回線が使えなくなります。

遺族の想い

故人のデジタル機器に保存されている、家族の思い出の写真や動画は、心情的に必ず取り出したいモノでしょうし、遺言メッセージが残されている可能性があれば、確認せずにはいられないはずです。

そうした後悔をしそうなモノに対しては、最大限の手を尽くすべきです。

できれば対応したいモノ

定額有料サービス

月額や年額で登録した口座やクレジットカードなどから自動引き落としするもので、ゲームや動画などの趣味性の高いサービスから、新聞やメルマガ、オンラインストレージや表計算や文章作成といった、ツールの詰まったオフィスソフトまで多彩にあります。

口座やクレジットカードが凍結されると、支払いが止まるため、問題になることは稀ですが、口座凍結による契約不履行で、請求が届く可能性もあります。

なお、ダウンロードするときに料金が発生する電子書籍や動画アプリなどは、追加料金はかかりません。

ブログやSNS

ブログやSNSは、放置しておくと荒らされるリスクがあります。

また、そのページだけで交流している友人は、更新がなぜ止まったのか?

状況を察知できません。

日記投稿やコメント書き込みなどで、訃報を掲載したりページの閉鎖をすることで、心配の種を潰します。

そして故人のメールやメッセージなども、とりあえず残しておきたいモノのカテゴリーに含めます。

ひとまず保管しておきたいモノ

ロックの解除方法がわからない情報端末など、どうにも中身に触れられずに処理が進まないモノも出てきます。

そうした謎のままのデジタル遺品は、諦めて廃棄せずに、ひとまず保管しておくことをお勧めします。

何が入っているのか?

全く検討がつかないという場合は、時が解決方法を見つけてくれるまで待つのです。

デジタル機器のセキュリティーは非常に堅牢ですが、数年スパンでみると、新たな解決手段が見つかり、すんなり開けられるようになるといったことも珍しくありません。

セキュリティー技術は、裏をかこうとする悪意や未知の不備と戦いながら、日進月歩で進化を遂げています。

裏を返せば過去の堅牢性は、未来からのアクセスに対応しきれない宿命にあるわけです。

デジタル遺品リストのまとめ

必ず対応したい! 対外 預金や金融資産 ネット銀行の口座
FXなどの証拠金取引
株などの金融資産
仮想通貨など
通信契約 スマートフォンやSIMカード

自宅で使っていたインターネット回線など

身内 進行中の共有物 進行中の仕事のデータのやり取り

オークションサイトの未処理の売買など

遺族の想い 家族で撮った思い出の写真や動画

やりとりしたメール、LINE、遺言データなど

できれば対応したい! 対外 定額有料サービス 動画サイトの見放題プラン
オンラインゲームの参加者
有料オンラインストレージ
定期購読の電子書籍
レンタルサーバー
その他、有料サービスなど
SNS Facebook
Instagram
LINE
Twitterなど
ブログやホームページ プロバイダーアカウント

無料ブログサービス

無料ホームページサービスなど

身内 仕事や趣味の成果物 仕事などの関連ファイル

故人が意向を示したデータなど

遺族の想い 家族で撮った思い出の写真や動画

やり取りしたメール、LINE

遺言データなど

ひとまず保管しておきたい 混在 解析できなかったモノ ロックのかかったスマートフォン

ロックのかかったパソコン

パスワードがかかったフォルダなど

 

「遺族の想い」が典型例ですが、身内側の要素は感情や仕事の状況によってランクが変動します。

一方、対外的な要素は誰であっても同じ優先順位となり、主観と客観をミックスして、現実的なラインを引きます。

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