訪問介護の真実
ヘルパーさんは、何でもやってくれると思い込んでいませんか?
介護保険の訪問介護を難しくしている要因の一つに、まだまだヘルパーさんを「家政婦」「お手伝いさん」というイメージで捉えている人が多いこともあります。
多数回の生活援助は事前の届け出が義務づけられ、根拠のない生活援助には自立支援・重度化防止の観点から厳しい目が向けられるようになりました。
「お手伝いではない」専門性、訪問介護のルールをご紹介します。
目次
訪問介護は家事代行サービスではない
身体に直接触れて行う介助のほかに、調理や掃除も自立支援・日常生活動作を目的としたもの、また専門的な支援であれば、身体介護になります。
触るか触らないかだけでなく、そのケアが自立支援や重度化防止、また日常生活動作・手段的日常生活動作・生活の質や意欲の向上につながっているか、専門性があるかといった観点も判断基準ということです。
「調理」は基本的には生活援助ですが、手助けをしてもらいながらつくれば、身体介護になります。
しかし一緒にやれば身体介護になるのではなく、触るか触らないかと同様、一緒にやるかやらないかで、一律身体介護になるわけではありません。
一緒に家事を行う場合でも、利用者が調理を、ヘルパーが掃除をするような場合は、生活援助です。
利用者の能力に見合わない見守り的援助は、身体介護にはなりません。
入浴介助のうち全身浴は、声かけ・説明から、湯はり、ヘルパー自身の身支度、洗体・すすぎ、汚れた衣服の処理、浴槽の後始末を含めて、一つの行為と定義されています。
汚れた衣服の処理やお風呂掃除だから生活援助ではなく、身体介護を、
- 動作介助(体位変換、移動介助等)
- 身の回り介助(排泄介助、部分清拭等)
- 生活介護(食事介助、全身浴等)
…に分類して、「2.3.」に関連して、若干の生活援助を行う場合は身体介護、生活援助に伴って「1.」を若干行う場合は生活援助となり、部屋の掃除で介助してもらい移動した場合は、生活援助となります。
身体介護の定義
身体介護とは、
- 利用者の身体に直接接触して行う介助サービス。
そのために必要となる準備、後かたづけ等の一連の行為を含む。 - 利用者の日常生活動作・手段的日常生活動作・生活の質や意欲の向上のために利用者と共に行う自立支援・重度化防止のためのサービス。
- その他専門的知識・技術(介護を要する状態となった要因である心身の障害や疾病等に伴って必要となる特段の専門的配慮)をもって行う利用者の日常生活上・社会生活上のためのサービスをいう。
仮に、介護等を要する状態が解消されたならば不要となる行為であるということができる。
具体例として、
- 排せつ介助
- 入浴の介助
- 食事の介助
- 起床・就寝の介助
- 着替えの介助や体位変換
- 身だしなみの整容・洗面
- 移動などの生活動作の介助
- 服薬の介助
- 通院・外出等の介助
- 自立生活援助のための見守り的援助など
外出については、通所介護事業所や介護保険施設の見学や生活必需品の買い物などは認められますが、日常生活の範囲を超え、趣味嗜好に係る外出、カラオケ、パチンコ、お墓詣り、冠婚葬祭などは認められません。
自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助
- ベッド上からポータブルトイレ等(いす)へ利用者が移乗する際に、転倒等の防止のため付き添い、必要に応じて介助を行う。
- 認知症等の高齢者が、リハビリパンツやパット交換を見守り・声かけを行うことにより、一人でできるだけ交換し後始末ができるように支援する。
- 認知症等の高齢者に対して、ヘルパーが声かけと誘導で食事・水分摂取を支援する。
- 入浴、更衣等の見守り(必要に応じて行う介護、転倒予防のための声かけ、気分の確認などを含む)。
- 移動時、転倒しないように側について歩く(介護は必要時だけで、事故がないように常に見守る)。
- ベッドの出入り時など、自立を促すための声かけ(声かけや見守り中心で必要な時だけ介助)。
- 本人が自ら適切な服薬ができるよう、服薬時において、直接介助は行わずに、側で見守り、服薬を促す。
- 利用者と一緒に、手助けや声かけ及び見守りしながら行う掃除、整理整頓(安全確認の声かけ、疲労の確認を含む)。
- ゴミの分別が分からない利用者と一緒に分別をして、ゴミ出しのルールを理解してもらう又は思い出してもらうよう援助する。
- 認知症の高齢者の方と一緒に、冷蔵庫のなかの整理等を行うことにより、生活歴の喚起を促す。
- 洗濯物を一緒に、干したりたたんだりすることにより、自立支援を促すとともに、転倒予防等のための見守り・声かけを行う。
- 利用者と一緒に、手助けや声かけ及び見守りしながら行う、ベッドでのシーツ交換、布団カバーの交換等。
- 利用者と一緒に、手助けや声かけ及び見守りしながら行う衣類の整理・被服の補修。
- 利用者と一緒に、手助けや声かけ及び見守りしながら行う調理、配膳、後片付け(安全確認の声かけ、疲労の確認を含む)。
- 車イス等での移動介助を行なって店に行き、本人が自ら品物を選べるよう援助。
- 上記のほか、安全を確保しつつ常時介助できる状態で行うもの等であって、利用者と訪問介護員等が、ともに日常生活に関する動作を行うことが、日常生活動作・手段的日常生活動作・生活の質向上の観点から、利用者の自立支援・重度化防止に資するものとしてケアプランに位置づけられたもの。
サービス提供責任者の役割
サービス提供責任者に求められる役割は、大きく二つあります。
まず、利用者の服薬状況や口腔機能などについて、ケアマネージャーへ情報提供することです。
「薬が大量に余っている、または複数回分の薬を一度に服用している」「口臭や口腔内出血がある」「体重の増減や見た目の変化がある」「食事料や回数に変化がある」などのヘルパーの気づきを、サービス提供責任者がケアマネージャーにしっかり伝えなければいけません。
もう一つは、ケアマネージャーや利用者に対して、必要のないサービスまで使うよう求めるなど、不当な働きかけの禁止です。
サービス提供責任者がサービス提供時間を記録し、プランに示された時間と、実際に提供された時間が著しくかけ離れている場合は、ケアマネージャーにプランの見直しを求めます。
生活援助のみを担うヘルパーを導入
訪問介護事業所の人材を確保し、介護福祉士が身体介護に専念できるようにすることが目的です。
背景には、ヘルパーの人材不足や高齢化があります。
2014年の介護労働実態調査で、60歳以上のヘルパーが3割以上いることが分かりました。
体力的な都合で身体介護は難しいが、生活援助ならできるという人もいます。
国が担い手として想定しているのは地域住民で、高齢者支援のボランティア活動をした経験のある中高年や専業主婦、若者、障害者などです。
人材のすそ野を広げ、本人の能力や役割分担に応じたキャリアパスを構築することで、人材の定着を図ることも目的です。
生活援助の多数回利用は事前届出制
通常よりも飛びぬけて生活援助を位置づけているケアプランは、ケアマネージャーが市町村に届け出ることが、運営基準で定められています。
一定の期間を空ければ、1日に複数回算定可能な報酬体系は、必要以上のサービス提供を招きやすく、全国平均回数より2標準偏差上回る回数を位置づけている場合は、ケアマネージャーはケアプランを保険者に届け出て、市町村の地域ケア会議等で多職種の関係者により、自立支援・重度化防止・地域資源の活用等の観点から、検証を受けることになります。
回数は「厚生労働大臣が定める回数及び訪問介護」の中で示されています。
具体的には、要介護1が27回、2が34回、3が43回、4が38回、5が31回。
おおむね、毎日1回は生活援助を利用している計算です。
カウントするのは、純粋に生活援助だけで入っている回数のみとなり、身体1生活1など身体介護に引き続き、生活援助が中心となるものは対象外です。
しかし厚労省は、訪問回数の多い利用者については、認知症退院時、独居・高齢者世帯などさまざまな事情を抱える場合もあり、必ずしも不適切なケースであるとは限らないとしており、根拠をしっかり説明できるようにすることを求めています。