入居型老人ホームの種類と特徴
ある日突然やって来る…
介護の問題。
親の在宅介護に、限界を感じ始めた。
周りに頼れる人がいないため、将来に不安を感じ始めた。
こうしたときに、老人ホームへの入居を考える人が、多いのではないでしょうか?
しかし、介護制度は複雑で老人ホームには、さまざまな種類と特徴があるのです。
いざというときに、悩まないためにも、高齢者向けの住宅の種類と特徴、その違いをしっかりと整理して、介護施設の基礎知識を押さえましょう。
目次
入居型老人ホームの種類と特徴
入居型の介護・高齢者施設は、「公共型」と「民間型」に分けられます。
公共型の代表格が「特別養護老人ホーム(特養)」です。
介護体制は、しっかりしている一方で、月額の費用は安いのが特徴ですが、対象は原則、要介護3以上、地域によっては、待機者が大勢いることがデメリットの一つです。
「介護老人保険施設(老健)」は、病院から退院後に在宅復帰を目指し、リハビリなどを行う施設で、原則3〜6ヵ月程度しか入所できません。
しかし入居期限が来ると、別の施設に住み替えたり、一時的に入院したりするなどして、老健に長期間入所している人もいるのが実態です。
「介護医療院」は、介護療養型医療施設として、2018年に創設され、長期的な医療と介護の両方を必要とする人を対象とする、医療ケアに手厚い施設です。
いずれも、介護保険で介護が必要と認定された、要介護者でなければ入所できません。
特に特養は、要介護4、5の介護度が高い人が優先される傾向があります。
民間型で代表的なのが「介護付き有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」です。
有料老人ホームは、月々の支払いに加え、ホームによっては、数千万円の入居一時金を支払う必要があります。
初期費用0円を売りにしているホームも増えていますが、公共型の特養などに比べれば相場は高めです。
特養と合わせ、この四つを覚えておけば、おおむねホーム選びには問題はありません。
有料老人ホームの違いは介護サービスの違い
介護付きは「特定施設入居者生活介護」と呼ばれ、入居するホームが介護サービスを提供する形態です。
介護職員の配置基準などが定められているため、手厚いケアをしてもらえます。
住宅型は、介護が必要になったら外部のサービスを利用する仕組みです。
ニーズに応じて、必要な介護サービスを選択することができるという特徴がありますが、多くの場合同じ敷地内にある系列の事業者を利用することになります。
職員配置などには基準がありませんので、ホームごとに体制のばらつきがある点に注意が必要です。
サ高住は、介護サービスの外部利用という点では、住宅型の有料老人ホームと同じですが、賃貸住宅という位置付けになります。
一時金は敷金のみで、有料老人ホームより入りやすく、退去もしやすいのが特徴です。
定められたサービスは、安否確認と生活相談サービスのみなので、サービスやホームの質は様々です。
サ高住と住宅型は、提供サービスに違いがあります。
特に、介護体制についてはしっかり把握しないと、思わぬ落とし穴にはまることになります。
サ高住と住宅型有料老人ホームは、近年急増中ですがが、看取りや認知症には対応していないところが多いのです。
サ高住でも「特定施設」の指定を受けているホームがありますので、その場合は介護付きホームと介護水準は変わらず安心といえるでしょう。
しかし、自由に外出できないなど、制約が付くことも多いので、自立者には注意が必要です。
支払い方式は選択できる
入居一時金方式は2000年に介護保険制度が導入される前から、料老人ホームの一般的な支払い方法として定着していました。
今でも、身の回りのことを自分でできる人が対象で、入居期間が長い自立型のホームは、入居一時金方式が大半です。
一定期間分の家賃の前払いとして、数百万〜数千万円以上のお金を入居時に支払うことで、月々の支払いを安くします。
まとまった預金があり、月々の支払いを年金で済ませたい人などには、好都合な支払い方法です。
月払い方式は、入居一時金を支払わず、月ごとに家賃や管理費、光熱費などを支払うので、月々の支払いが高くなってしまいます。
よほど裕福な人を除いて、高額な入居一時金には、自宅等を処分した資金や預貯金を充てています。
このため、そのホームが嫌でも途中で退去するのが難しくなります。
しかし、入居一時金がゼロの月払い方式ならば、気軽に退去できるというメリットがありま。
介護保険制度導入前は、入居一時金ゼロという月払い方式のホームは、ほとんどありませんでした。
大手チェーンが、公的施設の特別養護老人ホーム並みに、20万円前後の月額利用料を打ち出したことで、争原理が働き、介護型の有料老人ホームで月払い方式が増えたという経緯があるのでる。
それに加え、高額な入居一時金に関するトラブルが頻発したため、自治体の指導などもあり、最近は入居一時金方式と月払い方式のいずれかを選択できるホームがほとんどになっています。
入居一時金は経営者が使い込みやすい
入居一時金は、ホーム側にとって預かり金であり、入居者への返済義務がある負債です。
しかし、経営者がそれを新しいホームの開発費用や遊興費に流用していても、入居者は会計処理や経営状態をチェックすることはできません。
それが分かるのは、ホームが破綻したときなのです。
破綻すれば、入居一時金は返済債務ではなくなってしまいます。
入居一時金は、老人福祉法で500万円の保全義務がありますが、銀行による保証や信託による保全は、金融機関との取引実績によりコストが変わります。
中小零細が多いホーム運営会社は、コストの安い有料老人ホーム協会の保全方法を取っています。
500万円までの保全が20万円の拠出で済むからです。
しかし、協会の保全は老人ホームが破綻し、入居者全員が追い出されて初めて、保証金が出る仕組みになっているのです。
重要事項説明書を見れば、入居一時金の保全方法が書いてありますので、銀行保証や信託などによる保全となっていれば、より安全といえます。
入居一時金が消えるのを防ぐためには…
入居一時金方式と月払い方式から選択できるホームがほとんどです。
まずは、月払い方式を選択しましょう。
特養の入居待ち、あるいは不謹慎な話ですが、入居者の余命が短そうな場合には、月払い方式の方が明らかに良いので、悩む必要はありません。
しかし、5〜7年以上は長生きする自信がある。
あるいは元気なうちに、自立型のホームに入りたいというような場合は、入居一時金方式が得なことが多いのです。
居住権を民法が保障しない
有料老人ホームの入居者には、民法上の居住権はありません。
有料老人ホームの入居者の多くは、終の棲家となることを想定して入居するために、自宅を処分するなどして、財産の大部分を入居一時金の支払いに充てるのです。
しかし、入居者の法的な立場は脆弱で、たとえ数千万円の入居一時金を払っても、居住権は確立されていないのです。
徘徊がひどくなったりして、ホームでの生活が困難になれば、退去を迫られることもあります。
賃貸借契約で、民法上の居住権が守られている、サービス付き高齢者向け住宅とはそこが違うのです。
法的な位置付けがあいまいなだけではなく、会計法上のルールもハッキリしていない、有料老人ホームの入居一時金は、その返還を巡って、以前から多くのトラブルを生んできました。
入居一時金が消えるのを防ぐためには、月払い方式を選ぶことです。
入居一時金方式を選ぶのなら、大手、上場会社、金融機関等の子会社が運営する施設を選び、有料老人ホーム協会による保全ではなく、銀行保証、信託による保全なら、さらに安心だということです。
月々の支払いとしては、家賃相当分、管理費、食費、光熱費などの基本的な費用と、介護保険の自己負担分、食費は食べれば請求され、光熱費は定額制と実費分、ホームによって異なります。
介護保険適用外の介護サービス、個別に行われる買い物や旅行などの外出介助や標準的な回数を超えた入浴介助などは別料金として請求されます。