遺産整理は自分でできる!
遺産が確定し相続が決まれば、実際に遺産を相続するために名義変更や解約の手続きを行います。
遺産を受け取るだけでなく、名義変更をしたり、相続税を申告して納税をするのも残された人のつとめです。
相続や遺産整理の手続きは、プロに任せなければならない訳ではありません。
法定相続人の一人が相続人代表として、預貯金口座の解約払戻手続きや有価証券の名義変更、不動産の相続登記、自動車の名義変更などをすることは可能です。
目次
遺産整理の流れ
Step1:手続きが必要な財産を把握する
財産の相続や名義変更を行うにあたって大切なことは、手続きの優先順位をつけておくということです。
どのような順番で財産の整理を行い、相続や名義変更の手続きをするのが適切なのかは、相続財産の内容によって変わってきます。
預金であれば残高証明書、不動産であれば登記簿謄本など、まずは財産の詳細が把握できる関係書類を取得して、手続きが必要な財産を把握しておきます。
お忙しい方や手続きが複雑、期限のあるモノもありますので、専門家に依頼をするにせよ、早めの準備が肝心です。
Step2:必要書類を準備する
相続の手続きでは、戸籍謄本や印鑑証明書、死亡診断書など、提出する書類が共通しています。
それぞれの手続きについて、必要枚数を把握して準備をしてください。
手続きによっては原本を提出し、手続き後に返却されるモノや、コピーの提出でたりる手続きなどもあります。
事前に必要書類を確認して、必要枚数を取得しておきます。
Step3:処分・名義変更の手続き
関係書類が揃ったら、手続きをしていきます。
期限のあるモノや時間がかかりそうな手続きから優先して進めていきましょう。
金融機関への相続手続き
お亡くなりになった方の口座は、金融機関によって凍結されるため、遺族は葬儀費用や生活費など一定の仮払い以外の現金は、出し入れができなくなります。
現金を引き出すためには、故人の口座を解約し、相続人の口座に払い戻しをする必要があります。
遺言書がない場合には、まず誰がいくら相続するのかを決めなければいけません。
遺産分割協議書を作成し、金融機関所定の相続届とともに、金融機関で相続の手続きを行います。
通帳がなくて預金残高が分からない時には、金融機関に残高証明書を発行してもらいます。
相続届に相続人全員の実印がもらえれば、遺産分割協議が成立する前に、代表者の口座に全額払い戻しを受けることもできます。
金融機関の窓口では、1〜2時間待たされることもありますがので、時間に余裕をもって行くことをお勧めします。
また金融機関によっては、払い戻し用の口座の開設を勧めることもありますが、任意ですので従う必要はありません。
金融機関の相続届には、相続関係者の署名と押印欄があります。
銀行の担当者によっては、相続人全員の署名と押印が必要だと説明されることがありますが、実は、遺産分割協議書があれば、代表者1人の署名と押印で相続手続きはできるのです。
知らないと、署名と押印をもらうために無駄な労力を費やすことになります。
自動車の相続手続き
必要なモノ
- 移転登録申請書(OCRシート第1号様式)
- 車検証
- 戸籍謄本
- 遺産分割協議書
- 相続人の印鑑証明書
- 車庫証明(保管場所の変更がない場合は不要)
- 登録手数料 500円
- 自動車取得税
- ナンバープレート交付手数料(自動車登録番号の変更を伴う場合) 約2,000円
自動車は、売却するにしても廃車するにしても、故人の名義のままでは手続きができません。
相続人が住んでいる市区町村を管轄する運輸支局、または検査登録事務所に移転登録申請書を提出し、相続する方の名義に変える必要があります。
故人が住んでいた市区町村と管轄が異なる時には、ナンバープレートが変わるため、申請先に自動車を持ち込む必要があります。
移転登録申請書は、運輸支局や自動車検査登録事務所でもらえる他、国土交通省のホームページからダウンロードすることもできます。
管轄の運輸支局や検査登録事務所は、国土交通省のホームページで確認することができます。
相続手続きを後回しにしていると、駐車場代が何十万円になることもあり、意外と費用がかかりますので注意が必要です。
これは、相続人が負担することになりますので、手放すことを決めているのであれば、できるだけ早く手続きをしてください。
不動産の相続手続き
土地や建物などの不動産を相続することが決まったら、所有権を故人から相続人に移す登記を行います。
すぐに売却するつもりでいても、一旦、所有権を移転する必要があります。
相続する不動産の所在地を管轄する法務局に所有権移転の登記申請書を提出します。
登記申請では、戸籍謄本も合わせて提出しますが、遺産分割協議で決まった相続関係説明図を添付すると戸籍謄本を返してもらえます。
戸籍謄本は、他の手続きでも必要になりますので、返してもらうと便利です。
登記が終わると1〜2週間ほどで、法務局から新しい所有者である相続人に不動産の権利証が発行されます。
不動産の相続は、不動産の調査から登記まで、かなり手間がかかりますので、司法書士にお願いすると良いでしょう。
その場合、登録免許税とは別に、報酬として、5万円以上の必要がかかります。
有価証券の相続手続き
証券会社が管理している有価証券
確認先 | 証券会社 |
手続き方法 | 株式名義書換請求書を含む必要な書類を提出 |
個人で管理していた有価証券
確認先 | 有価証券を発行している会社に連絡 |
手続き方法 | 有価証券元の会社に相続の手続きを確認 |
自社株
確認先 | 故人の勤め先 |
手続き方法 | 故人の勤め先に相続の手続き方法を確認 |
必要な書類
- 戸籍謄本
- 遺産分割協議書
- 株式名義書換請求書
- 印鑑証明など
故人が持っていた株式などの有価証券を相続する時には、故人から相続人に名義を変更する必要があります。
売却や解約も、一旦、故人から相続人に名義を変更してからになります。
相続することが決まったら、管理している証券会社に連絡して、名義の書き換えを行います。
手続きは、証券会社から渡される所定の株式名義書換請求書とともに必要書類を提出します。
修理後、故人の有価証券の口座が相続人の口座に移し替えられます。
この時、相続人の口座が同じ証券会社にあれば、そこに移し替えますが、口座がない場合は、受け取りのために相続人名義の口座を新規に開設しなければいけないこともあります。
また、証券会社が管理している株式は、株式を発行している会社に連絡する必要はありませんが、証券会社が管理していない株式の場合は、株式を発行している会社に連絡して、故人から相続人へ名義の書き換えをします。
IC乗車券、クレジットカードの手続き
IC乗車券の解約
必要な書類等を鉄道会社に提出し、解約手続きを行います。
必要なモノ
- IC乗車券
- 解約届
- 認印
- 相続関係がわかる書類
- 払戻請求書
IC乗車券は、保証金を払って鉄道会社から借りているモノです。
そのまま引き継いで使うこともできますし、窓口で払い戻し手続きをすれば、チャージされている残金と保証金が戻ってきます。
一方、記名式のIC乗車券は、本人以外は使えませんので、窓口で払い戻しをします。
その際、戸籍謄本など相続を証明できる書類を求められることもあります。
楽天Eddy、nanaco、WAONなどは、デポジットはなく、残高の返金もありませんので、カードを相続人が引き継ぎます。
クレジットカードの解約
クレジット会社に必要な書類等を提出し、解約手続きを行う。
必要なモノ
- 故人のクレジットカード
- 死亡の事実がわかる書類
- 届出用紙
クレジットカードは相続することはできません。
名義人がお亡くなりになったら、クレジットカード会社に連絡して、解約手続きをする必要があります。
しかし、債務は相続されるため、支払いが残っている場合は、残高を相続人が支払わなければいけません。
額によっては、相続放棄を検討した方が良い場合もあります。
準確定申告
上記のチェック項目に1つでも当てはまる場合、故人の確定申告が必要です。
それを「準確定申告」と呼びます。
準確定申告は故人がお亡くなりになった後、4ヵ月以内に行います。
準確定申告の還付金は相続財産の対象になりますので、なるべく早く申告するのがよいでしょう。
ここで手間取ると、遺産分割協議や相続税の申告に影響します。
通常の確定申告と同じですが、1月1日から故人がお亡くなりになった日までの所得を計算して、申告と納税をします。
さらに相続人や遺言書によって遺産を譲り受けた包括受遺者の名前と相続分などを書く「確定申告書付表」の提出が必要です。
事業を引き継ぐ方法
所得税の青色申告承認申請書の期限
その年の1月1日~8月31日にお亡くなりになった場合
- お亡くなりになった日から4ヵ月以内
その年の9月1日~10月31日にお亡くなりになった場合
- 12月31日
その年の11月1日~12月31日にお亡くなりになった場合
- 翌年の2月15日
故人の事業を引き継ぐ場合、個人事業者の死亡届出書や個人事業の開業・廃業届出書などの手続きをしなければいけませんが、特に注意したいのが、所得税の青色申告承認申請書の提出です。
所得税の申告には、青色申告と白色申告がありますが、青色申告をすれば所得税の控除など、さまざまな特典が受けられます。
この青色申告をするための承認申請が、所得税の青色申告承認申請書になり、受理されれば確定申告時に青色申告が可能になりますが、故人の青色申告を引き継げるわけではなく、再度承認の申請が必要になります。
書類の提出期限は、故人がお亡くなりになった日によって変わります。
なお、手続きを代行してもらう場合は、従業員の多い税理士事務所を選んでください。
規模が大きいところほど、事業継承対策が得意な傾向にあります。