死後ケアの限られた時間内に、必要な点をご家族に伝えるのは、口頭では限界があります。
また、たとえ声かけや説明ができても、喪失の直後の平静ではないご家族の耳に届いていない場合もあります。
そこで、文章の活用をお勧めします。
どのご家族にもお伝えしておきたい最低限のことなどを文書にしてお渡しすれば、ご家族の想いなどお話を聞く時間がとれます。
また、看取りの経験が乏しいご家族には、知らないがゆえの不安があり、それがストレスになる場合もありますが、文章を受け取ることで安心するなど、ご家族とのコミュニケーションの充実につながります。
なお、ご利用の際には次の点に留意をお願いします。
・病院からの死亡退院という設定で作成しています。
福祉施設などから退所や在宅の場合は、「退院後」を「今後」に置き換えるなどしてください。
・臨終直後の死後ケアの説明では、「腐敗」はご家族にとってつらい言葉としてなるべく避けていますが、文章を読むのはそのあとであること、「腐敗」という言葉を使わないと伝わりにくいことなどから、文章では「腐敗」と表記しています。
・連絡先には、病院・施設名、部署名、電話番号を入れていただきたいと思います。
・文章の余白に、個別的な身体変化や対応法などの追記をお勧めします。
目次
ここからテンプレート(Word版)をダウンロードして、ご利用ください。
退院時の文章の例
ご家族さまへ
ご家族のみなさまのご心痛をお察しいたします。
ご退院後の患者様の身体の変化などについてまとめましたので、ご参照ください。
患者様の身体にあらわれる主な変化と対処法
今後、患者様のお身体は、時間の経過とともにいろいろな変化があらわれます。
変化の出方には個人差がありますが、いずれの変化も異常事態ではなく自然現象です。
以下、主な変化の種類と対処法です。
肌の乾燥
全身の肌、特にお顔、なかでもくちびるは乾燥しやすくなります。
顔・首・耳にはクリームやクリームファンデーション、くちびるにはリップクリームや口紅が乾燥対策になりますから、適宜お使いください。
また、エアコンの風などが顔にあたらないよう注意しましょう。
肌が弱くなる
弾力などが失われ、肌が弱くなるので、圧迫したり強くこすったりはできるだけ避けましょう。
血色が失われる
あらかじめ血色を補う化粧を行っていても、その後さらに血色が失われますので、気になった際は、耳、目蓋、頬などにチークなどを重ねてつけてください。
黄疸がある方の肌色の変化
黄疸の関係で、時間とともに肌の色がくすむように変化します。
眉の部分や口まわりなどのみ強くくすむ場合もあります。
化粧をしていてもくすみが目立ってきた場合は、ファンデーションでカバーしてください。
身体が硬くなり、やがて緩む
時間とともに、顎のあたりから全身が徐々に硬くなり、さらに時間が経つと緩んできます。
そのために、時間が経ってからお口が開いてしまうこともあり、その場合には丸めたタオルなどを顎の下にあてるなどして閉じてください。
なお、亡くなった人専用の入れ歯も商品になっていますので、必要であれば葬儀関係者にお尋ねください。
出血/体液の流出
鼻や耳からの出血、口や鼻から体液の流出が起きる場合があります。
血液など体液は、吸収力のあるパッドなどを当てて吸収してください。
必ず止まりますので、あわてないで大丈夫です。
血液を含む体液の対応をするときは、ゴム手袋をつけて行い、吸収したパッドやティッシュ手袋はビニール袋に入れて処理してください。
においの発生/腹部が膨らむ
体温が下がらないと、お腹の中からはじまり、胸、全身へと広がる腐敗現象が進みやすくなりますので、室温は低く保ち、夏は特に冷房を強くし、布団のかかっているお腹や胸のあたりが温かくなっていないか確認したほうがよいでしょう。
また、冷却がなされてもにおいの発生や腹部が膨らむ場合がありますので、葬儀サービスを受ける場合はその担当者にご相談ください。
儀式にむけた患者様の身支度などについて
私どもでは、ご退院のための身支度をさせていただきました。
お通夜や告別式などの儀式に向けた身支度については、葬儀社の方と相談なさってください。
価値観の多様化に伴い葬儀関係のサービスの種類が増えました。
サービスの内容をよく聞いたうえで、どれを選択するか、あるいはそのサービスを受けるか受けないかをお決めになることをおすすめします。
届け出について
各種届け出は早くとも7日以内ですから、あわてなくて大丈夫ですが、参考までに届出期限が14日以内のものを記します。
※手続きの内容、届け先、期限の順に記す。
- 死亡届―市区町村役場―7日以内(必要書類は、死亡診断書あるいは死体検案書。届出人は親族などで死亡届に署名・押印する人。窓口提出は葬儀社など代理人でも可。死亡届をすると埋火葬許可証が発行される。)
- 年金受給停止手続きー市区町村役場または社会保険事務所―10日以内
- 国民健康保険資格喪失届―市区町村役場―14日以内
- 介護保険の資格喪失届―市区町村役場―14日以内
- 世帯主の変更届――市区町村役場―14日以内
連絡先
患者様のことでご不明な点、お困りのことなどありましたら、遠慮なくご相談ください。
連絡先
ご退院時の担当ナース