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火葬の文化的背景と法的制約

火葬の文化的背景と法的制約

死という現実は、避けられないものです。

死後の遺体処理は、公衆衛生上の観点と肉親者の畏敬の念がからみ合う特殊な課題です。

法律で規制される遺体処理は、「墓地、埋葬等に関する法律」により管理されています。

この法律は、国民の宗教的感情と公衆衛生・公共の福祉を両立させることを目指しており、遺体処理において宗教的な要素と公衆衛生上の配慮を共通の基盤としています。

日本ではほぼ全数が火葬に付され、その後に埋葬されることが一般的であり、法律では火葬に関する厳格な規制が定められています。

火葬場の設置や運営に関しては、都道府県知事や市長が行政許可を与える必要があり、これにより公共の安全や宗教的感情に対する敬意が確保されています。

明治時代の火葬禁止令

明治6年(1873)、日本では火葬が全面禁止となりました。

この決定は、明治新政府の神道国教化政策に基づくものであり、政府の神祇官僚たちが、仏教を圧迫する手段として火葬を問題視した結果です。

仏教を廃仏毀釈とともに排除する動きの一環として、火葬は当時国教的な扱いを受けていました。

特に東京府(当時)では、江戸の府内にある既存の墓地での埋葬を禁じ、9ヵ所の墓地を指定してそこに埋葬するように求める「墓地取扱規則」が制定され、墓地の整備が進められました。

この一連の政策が、明治時代の火葬における歴史的な変遷を象徴しています。

明治時代の火葬再開

明治8年(1875)、全国的な埋葬地の不足や混乱から、一度は全て土葬に切り替えられた状況でしたが、火葬禁止が解除されました。

この布告により、火葬禁止以前に火葬業を営んでいた者たちを中心に、火葬再開の願いが相次いで寄せられました。

その後、全国各地からの火葬再開に関する問い合わせに対し、6月24日に各府県に対して火葬場の取り扱いについて通達を行いました。

東京府下では朱引外、他の地域では市街や村落から遠く離れた場所を指定し、土地に課される税金が安く、土地の利用価値が低い地域に火葬場を設置するよう指導されました。

これは火葬場を取り締りの対象とし、墓地不足もあり都市化の進展に伴って、火葬が必要な事態を認識せざるを得ないという背景がありました。

火葬場の建設や運営に関しては、人民の自弁とされ、遺骨をその場に埋めることは禁じられました。

この政策により、東京では火葬場は寺院の運営から離れ、独立採算となり民営化への道を歩むことになりました。

同時に火葬場は墓地と分離され、今後の火葬場の立地にも大きな影響を与えることとなりました。

明治時代の火葬取締りの歴史

明治8年(1875)に再開された火葬は、当初から公衆衛生上の課題となり、その取締りが強化されました。

通達により火葬場の設置は制限を受けましたが、取締りの内容は厳しくなかったため、問題が生じていました。

例えば、臭気が住民に不快感を与え、コレラの媒介との噂も広がりました。

この状況を受けて、明治10年(1877)に火葬場の調査が行われ、臭気問題は改善が必要とされました。

明治12年(1879)にはコレラの流行を受け、「虎列刺病豫防假規則」が制定され、伝染病による死亡者の火葬が義務付けられました。

同年、「府縣(ふけん)衛生課事務事項」が定められ、墓地や火葬場の位置、境界、埋葬、火葬の手続きが規定されました。

埋葬が盛んであった地域にも伝染病対策のための火葬場が設置され、制度が整備されました。

明治17年(1884)には「墓地及埋葬取締規則」が交付され、墓地と火葬場は許可制となりました。

この規則は火葬場の位置基準や煙突の設置、臭煙を防ぐ装置の設置、周囲に塀を設けるといった内容で、全国一律に通達され、都道府県毎の許可基準となりました。

この時の制度整備が、現在も火葬に関する規制の基盤となっています。

墓地・埋葬等に関する法律

昭和23年(1948)に制定された「墓地、埋葬等に関する法律」は、墓地や埋葬に関する従前の規則を踏襲しつつ、国民の宗教的感情や公衆衛生、公共の福祉の見地から詳細な規定を設けました。

この法律は、火葬にも関する具体的な規制を含んでおり、以下はその一部です。

① 火葬は死体を葬るために焼く行為であると定義されています。

② 火葬場は都道府県知事の許可を受けた施設であり、経営や施設の変更・廃止には都道府県知事の許可が必要です。

③ 火葬は火葬場以外の施設で行ってはならず、都道府県知事の許可基準は地域ごとに異なります。

この法律の制定により、火葬に関する取り締まりが一層強化され、公共の安全や宗教的感情への配慮が盛り込まれました。

また、火葬場の計画・運営においては地方公共団体が望ましいとされ、宗教法人や公益法人も検討されました。

一方で、現行の制度にそぐわない場合や市区町村に許認可の権限が移譲されたり、規制の緩和が行われたりするなど、時代と共に変遷する火葬に関する規制の様相が垣間見られます。

国の地域主権改革と火葬取り締まり

平成23年に公布された「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」に基づき、都道府県の事務が市区町村へ移譲されることとなりました。

この改革において、火葬に関する取り締まりも変遷を遂げました。

1.墓地、納骨堂、火葬場の経営許可などの市への移譲

都道府県知事と指定都市・中核市の長が処理していた墓地、納骨堂、火葬場に関する経営許可、施設の変更、廃止などの許可権限は、全ての市へ移譲されました。

2.立入検査や報告の要求、施設の整備改善などの市への移譲

都道府県知事と指定都市・中核市・保健所設置市の長が処理していた火葬場に関する立入検査、報告の要求、施設の整備改善、使用制限、禁止命令などの権限も、全ての市へ移譲されました。

この変更により、火葬に関する取り締まりが都から市区町村へと権限が委譲され、地域ごとのニーズや事情に柔軟に対応できる仕組みが整備されました。

地域主権改革がもたらす火葬における取り締まりの変遷が、公共の安全や地域社会におけるニーズをより適切に反映する形となりました。

現行の法規と火葬場

現在の火葬場の位置に関する法規は、建築基準法と都市計画法に基づいています。

これらの法令は火葬場の建設や位置の決定に関する手続きを規定しています。

1.建築基準法

特殊建築物として火葬場が位置づけられており、都市計画区域内で新築や増築を行う場合は、都市計画においてその敷地の位置が決定されているものでなければなりません。

特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経てその敷地の位置が都市計画上支障がないと認めて許可した場合、あるいは政令で定める規模の範囲内において新築・増築する場合は除外されています。

2.都市計画法

都市施設として都市計画区域において火葬場が位置づけられています。

火葬場は市場やと畜場などと同じく、都市計画において必要なものとされています。

都市計画事業として実施される場合は都市計画法が優先され、墓埋法においても都市計画法に基づく都市計画決定が優先されます。

現在、大気汚染防止法の対象施設には含まれていませんが、各地方公共団体は同法やその他の関連法規に基づき、規制基準値を目標値として火葬場の建設や運営に関する規制を行っています。

火葬場の用地選定においては、「計画標準(案)」が参考とされていますが、これは昭和35年に建設省が策定したものであり、現代の建設事情に合致しない場合も多いため、柔軟な判断が求められています。

都道府県によっては基準の緩和が進んでいる場合もあります。

火葬場での葬送行為の流れと役割

火葬場は、その歴史的な経緯から公衆衛生の面での役割に加え、弔いの場としても機能しています。

焼却場としての初期のイメージから転換し、告別、炉前確認、待合、拾骨などの儀式を提供することが一般的です。

1.火葬場での葬送行為の流れ

葬送行為は、火葬場において一般的に以下の流れで進行します。

【到着】

霊柩車と葬列車両をエントランスで迎える。

【告別】

最後の別れを告げる場所である告別室などで行われる。

【見送り】

火葬炉に遺体が収められるのを確認する場所で、炉前ホールが用意されています。

【火葬】

火葬炉設備を使用して遺体を燃やし、焼骨にします。

【待合】

火葬が終了するまでの時間を過ごす場所として待合室が提供されています。

【拾骨】

遺骨と対面し、拾骨を執り行う場所として拾骨室が利用されます。

【退場】

焼骨とともに火葬場を後にします。

火葬場内で焼骨を拾う行為は「拾骨」または「収骨」と表現されることがあります。

日本では、通常は職員ではなく遺族が焼骨を拾い、骨壷に収めることが行われるため、「拾骨」の表現が使用されます。

一部の地域では、柩を火葬炉に収めると全員が帰宅することもあり、「骨葬」と呼ばれる、焼骨での葬儀告別式が行われることもあります。

また、通夜から葬儀・告別式が行える場合、併設の葬儀式場が存在することもあります。

2.火葬場の役割と機能

火葬場は主に以下の2つの形態で存在します。

民営の火葬場と公営の火葬場

【民営の火葬場】

一部の私営業者が運営し、設備やサービスが多様です。

【公営の火葬場】

市区町村が単独で設置するか、事務組合を通じて広域に建設・運営されています。

国からの補助制度はなく、単独事業とされています。

まとめ

死体処理に関する法律が、公衆衛生と宗教的感情の調和を求める中で、火葬が主要な選択となります。

この過程で、遺体処理における公共の安全や個々の信仰、畏敬の念が大切にされています。

我が国の伝統や法的な規定は、死後の処遇において社会全体の価値観と調和するように構築されています。

遺体処理は、私たちが死者に対して捧げる最後の敬意の一環であり、そのプロセスが公衆衛生と調和し、また宗教的信条に添うことが求められています。

これによって、死はただの物理的な終焉だけでなく、文化や信仰、畏敬の念に満ちた尊重すべき瞬間へと昇華されるのです。

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